2013年7月31日水曜日

<降圧剤データ>慈恵医大、元社員に丸投げ「大きな間違い」

<降圧剤データ>慈恵医大、元社員に丸投げ「大きな間違い」

毎日新聞 7月30日(火)21時54分配信 

 累計1兆円を超す売り上げを誇る大ヒット薬を支えた科学的根拠が崩れ去った。降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験で論文不正を認めた東京 慈恵会医大の調査結果は、製薬会社ノバルティスファーマの元社員による改ざんの疑いを強く示唆した。一方、医師が製薬企業に過度に依存した試験だったこと も浮き彫りとなり、医薬業界への不信感は極まっている。

 「遺憾ながら、何者かによってデータが人為的に操作されていると考えられる」。東京都港区の慈恵医大で記者会見した橋本和弘調査委員長は、終始硬い表情を崩さなかった。

 調査報告書は「データ操作は統計解析段階でなされた」と推認し、元社員の不正への関与を強く示唆した。一方、今月27日に大学の聞き取りに応じた元社員 は、データ操作への関与を否定したばかりか、統計解析を行ったことも否定したという。しかし、責任者の望月正武元教授ら大学側の研究者十数人は「統計解析 をしたのは元社員だ」と証言。このため調査委は「元社員の供述は虚偽で信用できない」と判断した。

 元社員が試験に参加することになったのは、望月元教授がノ社の営業社員に統計の専門家の紹介を依頼したことがきっかけだった。この時、元社員は当時非常 勤講師を務めていた大阪市立大など4種類の名刺を持っていたという。だが「試験の最終段階では、ほとんどの研究者がノ社の社員と分かっていた」(橋本委員 長)とした。

 今回の調査で、資金提供元の製薬会社元社員に、事務局機能から統計解析という研究の根幹まで丸投げするという研究者側の無責任さも明らかになった。

 橋本委員長は「研究者側にとって(元社員は)非常に便利で、信頼して任せてしまった。研究チームの大きな間違いで深くおわびしたい」と陳謝。再発防止策として大学内に「臨床研究センター」を設置する方針などを示した。【八田浩輔、河内敏康、須田桃子】

 ◇強制力なき調査に限界

 バルサルタンの臨床試験論文を巡る東京慈恵会医大、京都府立医大、ノバルティスファーマの調査結果が出そろった。慈恵医大は協力を断られた府立医大と異 なり、試験に関与したノ社元社員からも聴取。その結果、不正操作は元社員が行ったと推認したが、「消去法」で導いたものでしかなく、元社員は関与を否定し ている。強制力をもたない当事者による調査の限界といえる

 府立医大の調査では、データとカルテを突き合わせ、他の薬を服用した患者に起きていない虚偽の脳卒中の記述があるなど、バルサルタンの効果を際立たせる 大胆な不正操作があった。一方、慈恵医大ではこうした症例に食い違いは無かったが、結論を導く前提となる血圧値が操作されていた。科学的な再検証で「証 拠」は見つかったが、誰がなぜ操作を行ったのか特定できないのは、誰かがうそをついているか、真実を知る人間が調査対象から漏れているからだ。

 国は、新薬を承認するための治験と異なり、市販後の臨床試験が適正に行われているかをチェックする有効な手立てを講じてこなかった。このことが今回の疑 惑を許した側面がある。厚生労働省は有識者検討会で調査を始める。国民が納得できる結論を導き出す責任がある。【八田浩輔】
 
 
2013.7.30


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この問題は刑事告発し警察などが捜査する必要があります。また、今後同様の問題が生じないように強制調査権を持ち、公正、積極的に調査を行う学術警察を常設する必要があります。

降圧剤データ:慈恵医大も操作認める 論文撤回へ

降圧剤データ:慈恵医大も操作認める 論文撤回へ

毎日新聞 2013年07月30日 21時48分(最終更新 07月30日 22時25分)


降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)に血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、東京慈恵会医大の調査委員会(橋本和弘委員長)は 30日記者会見し、「論文のデータが人為的に操作されており、論文の撤回(取り消し)を決めた」とする中間報告を発表した。販売元の製薬会社ノバルティス ファーマの社員(5月に退職)が統計解析を行っていたと認定したうえで、「元社員がデータ操作をしたと強く疑われる」と指摘した。ノ社は、慈恵医大と既に データ操作が判明した京都府立医大の論文(既に撤回)を使って大々的に薬を宣伝してきたが、その科学的な根拠は事実上消滅した。
 日本の医薬研究史上、類を見ない不祥事となった。橋本委員長は「論文から元社員の関与が伏せられ、データ操作もされ、信頼性を欠く。患者や研究者に迷惑をかけた」と陳謝した。
 バルサルタンの臨床試験は、慈恵医大、府立医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大の5大学が実施した。中でも慈恵医大と府立医大の論文は、試験の規模が大きい上、バルサルタンに種々の効果があると認める内容で、宣伝に使われた。
 論文の責任者は望月正武教授(71)=2007年に退職。研究チームは、バルサルタンの発売後、慈恵医 大病院とその関連病院などで臨床試験を実施した。高血圧患者約3000人を、バルサルタン服用の約1500人と別の降圧剤服用の約1500人とに分けて、 経過を比較。「バルサルタンには他の降圧剤と比べ脳卒中を40%、狭心症を65%減らす効果があった」などと結論付け、07年に一流英医学誌ランセットで 発表した。
 調査委が調べると、論文に使われた解析用データの血圧値と、実際のカルテの記載とが異なるケースが多数見つかった。また、残っていた約3000人分のデータを再解析したところ、患者群の血圧の変化が論文と異なり、「論文は人為的に操作された」と認定した。
 その結果、論文が脳卒中や狭心症などの予防に効果があるとした結論については、「論文に欠陥があり、正しかったかは判断できない」と指摘した。
 研究に参加した医師らは「元社員がデータ解析をした。自分たちはデータ解析の知識も能力もなく、解析を したことはない」などと口をそろえており、元社員による不正を推測した。一方、元社員は調査委に対して「思い当たらない。自分は関係していない」と関与を 否定しているという。

写し関連
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本当に悪質だと思います。

2013年7月30日火曜日

【論文の不正】荒療治もやむを得ない

【論文の不正】荒療治もやむを得ない
2013年07月28日08時06分
 東京大学で長年にわたって、多数の論文に改ざんや捏造(ねつぞう)が行われ、大学側が「撤回が妥当」とする予備調査報告書をまとめた。
 国内では近年、研究者の論文改ざんが発覚するケースが相次いでいる。日本の学術研究への信頼も揺るがしかねない重大な問題だ。実態を解明し、各大学や研究機関に共通する再発防止のルールづくりを急ぐべきだ。
 東大の論文の不正は分子生物学の第一人者とされる教授が関わった研究で、教授は昨年3月に大学を辞職している。過去16年間の論文165本を調 べたところ、同一画像の使い回しが多数見つかったほか、画像に反転などの加工をした上で、別の画像として使っていたケースもあった。
 元教授は直接改ざん・捏造に関わっていないというが、なぜこんな単純な不正を見抜けなかったのか。研究室や研究グループでの議論は十分だったのかなど、チェック機能のずさんさが疑われる。
 元教授は多額の公的助成を受けた研究も多かった。不正に関係した研究への税金投入は許されず、返還するのが当然だ。
 それ以上に論文不正が罪作りなのは、今後の同種の研究に誤った結果を伝えかねないことだ。特に医療研究の分野は、患者らの生命に関わるかもしれず、厳しいチェックが必要だ。
 実際、京都府立医大の臨床研究で、データの操作が明るみに出たばかりだ。誤った情報で高血圧患者に薬が処方された可能性がある。
 東大の報告書が「撤回が妥当」とした論文は、計43本にも上る。研究を率いた元教授だけでなく、実際に改ざんに手を染めた若い研究者たちはどんな思いでいただろう。彼らの将来にも計り知れない悪影響を及ぼす。
 論文の不正は学問の自殺行為にほかならない。少しぐらい手を加えてもいいだろうという意識が広がっているのなら、少々の荒療治もやむを得ないだろう。
 専門家の間には、公的な監視機関の必要性とともに、法整備による罰則の強化を主張する声もある。研究者の倫理性が疑われる以上、外からのチェックの目を利かせ、厳しく対処する必要がある。
 研究費をめぐる、業界と研究者らの不透明な関係の問題もある。研究室はもはや「聖域」ではあり得ない。

高知新聞 社説 写し
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不正をきちんと取り締まっていただきたい。

2013年7月29日月曜日

降圧剤データ操作疑惑

2013年07月28日

真相解明し臨床研究改革を

 大手製薬会社ノバルティスファーマの高血圧症治療薬(降圧剤)ディオバン(一般名バルサルタン)に関し、京都府立医大は2003~07年に実施した臨床研究で、データが人為的に操作され、間違った結論が導かれていた可能性が高いことを、調査によって明らかにした。

 臨床研究の総括責任者だった松原弘明・元京都府立医大教授は操作を否定。解析にはノバルティスの元社員が関わっていた。この元社員が自社に有利な結果を 導き出したのではないかとも疑われているが、ノバルティスは「データ操作や改ざんに関与したことを示す事実はない」と否定している。

 真相がまったく分からない。これで幕引きをすることは許されない。

■奨学寄付金を見直せ■

 この臨床研究は「ほかの降圧剤と比較して、ディオバンは脳卒中や狭心症などのリスクを半減させた」と結論づけていた。府立医大には臨床研究対象になった 患者のカルテが残っており、データを操作した跡をたどることができた。ノバルティスは元社員に事情聴取し、疑惑に応える責任がある。

 ディオバンの販売額は年間1千億円以上に上り、100万人以上に処方されていた。数多い降圧剤の中で、この薬が選択された理由に府立医大の臨床研究結果があったことは否めない。

 府立医大とノバルティスには、社会に対し説明責任がある。互いに協力して調査を深め、松原元教授や元社員も調査に応じ、真相の解明に貢献すべきだろう。両者の事実上の引責辞職でお茶を濁すわけにはいかない。

 松原元教授には、ノバルティスから長年、計1億円以上の奨学寄付金が提供されていた。お礼とも取られかねない。製薬会社から有力な教授への奨学寄付金は、日本の貧困な臨床研究費を補完するあしき慣習だが、癒着を招く温床になり、基本的にやめるべきだ。

■公正でない社員関与■

 薬の臨床研究データ解析に当該の製薬会社の社員が関わるのも好ましくない。今回は、ノバルティスの社員である事実を伏せたままだった形式が問題となっているが、そもそも、利害関係がある会社の社員の関与は臨床研究の公正さを損なう。

 同様のディオバンの臨床研究は他の複数の大学でも実施されていた。大学は調査して、結果を公表すべきだ。

 こうした医師主導臨床研究は、製薬会社が薬の承認を受けるために有効性や安全性を確認する臨床試験とは異なる。その分、監査が弱かった。データを解析できる第三者の生物統計専門家の参加を義務づけるなどルールを厳しくすべきだろう。

 安倍政権は医療の技術革新を重視しており、臨床研究の活性化が欠かせない。今回の疑惑を教訓に、臨床研究を改革し、強化するよう研究者らに求めたい。

宮崎日日新聞 社説 写し
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不正をきちんと取り締まってほしいと思います。

2013年7月28日日曜日

「国立がん研究センター」研究費プール問題の深淵

「国立がん研究センター」研究費プール問題の深淵

 厚生労働省はなぜか「第三者機関」を設置しなかった。二・二六事件から77年が経過した2月26日。厚労省仕切りの記者会見で国立がん研究センターは発表した。

情報公開に後ろ向きな掘田氏

 「中央病院の牧本敦・小児腫瘍科長が国の研究費、約2570万円を不正にプールしていた。一部を家電製品の購入などに私的流用した。牧本氏を懲戒解雇とする」
  報道によれば、牧本氏は2007年度から08年度にかけて、厚労省から合わせて約2億2000万円の研究費を受け取っている。物品納入業者に架空発注し、 代金を過大に払う→その分を不正にプールする手法で「裏金」を作ったといわれる。09年1月~11年5月の間、私物であるテレビやエアコンなど62品目の 代金に578万円を充てていた。
 この会見に本誌は出席していない。堀田知光理事長への「政権交代」以降、国がんの情報公開への姿勢は一変。前任 者である嘉山孝正前理事長時代であれば、普通に送られてきた会見開催のプレスリリースの送信がばったり途絶えた。特に厚労省や文部科学省が関与している会 見はその傾向が顕著。記者クラブ系メディアにのみ門戸を開いている。
 牧本氏を引き上げたのは高上洋一氏(現聖路加国際病院教育・研究センター研究管理部部長)だといわれている。高上氏は徳島大学医学部の医局で牧本氏の先輩に当たる。この高上氏を抜擢したのが総長として国がんに君臨した垣添忠生氏だ。
  「『倫理』以前の問題として、研究者は生き残りのために民間からのキャッシュフローに転換していかざるを得ない。大学の寄付講座でも立ち上げ当初は科研費 に頼ったとしても、いずれは減らしていく。パイ全体が急速に収縮している環境なら当然です。ところが、その点で科研費が恒常的につく国がんは異常。牧本氏 の最大の特徴は業績がゼロに近いこと。10年間で一流誌への論文掲載は皆無。にもかかわらず、億単位の公的研究費を得ている。これは『大教授』級のランク です」(国がんで勤務経験のある医師)
 問われるのは「出していた側」の見識である。厚労省と審査の担当者は牧本氏のどこに可能性を見いだし、血税から億単位の出費を恒常的に認めてきたのか。
 厚労省による科研費の恣意的な分配。この弊害は本誌でも指摘してきたし、半ば公然の秘密といえる。
 一例を挙げる。05年度「第3次対がん総合戦略研究事業」で厚労省はは総計39課題を採択。22億3000万円を交付している。驚くべきことに、このうち18課題で国がん関係者が主任研究者の任にある。76%に当たる17億1000万円が交付された。
  国がんは10年、独立行政法人化。理事長に廣橋説雄総長は就任できず、山形大学医学部長だった嘉山氏が任命されている。嘉山氏の手腕に期待が寄せられた。 だが、科研費運用は厚労省マターとあって、岩盤の固さが尋常ではない。10年度の同事業は63課題を採択。国がん関係者が主任研究員を務めたのはこのうち 29課題。全体の6割を占める19億7000万円が築地と松戸に下りている。
 問題の根幹はどこにあるのか。
 「国がんの看板である『政策医療』にその一端がある。医師不足をはじめ、医療問題が世間の注目を浴びれば、厚労省は動かざるを得ない。手っ取り早い『対策』は予算をつけ、研究班を立ち上げることです。班長は厚労省の息がかかった施設から選任されることになる」(同前)
 「厚労省と一体」(公的病院幹部)である国がんはその施設の最右翼。理事長は厚労省の意向に唯々諾々と従うだけ。「置き物」である。例えば、堀田氏は2月、政府の健康・医療戦略参与に任命されている。これはまさに厚労推薦枠そのものだ。
 そもそもこれらの政策課題が浮上した背景には厚労省の推進した政策の失敗がある。ひとまず世論に迎合し、対策を取った形を装うことで厚労官僚の責任はうやむやにできる。厚労省は科研費運用で幾多の「弾よけ」を量産しているにすぎない。
 「この事件ではすでに警察が動いている。贈収賄での立件を視野に入れています」(国がん関係者)
 事は牧野氏に限った問題ではない。国がん病院幹部を経て関西地区の大学に転じたある医師の事例。
 「とにかくよくたかってくるんです。海外出張の際は女性同伴が当たり前。当人は『妻だ』と説明しますが、そんなもの確認のしようがありません。しかも、『同伴の事実は国がんには届けるな』と厳命してくる」(国内大手製薬企業関係者)


患者への説明は後回し


実績に乏しい牧野氏が研究費に事欠かなかったのは、「政治的」な後見役、しかも相当に有力な人物を抱えていたからだ。垣添氏である。
 09年の政権交代直後、仙谷由人・行政刷新担当相は自らのライフワークと思い定めるナショナルセンター改革に乗り出す。国がんはまさに頂門の一針。嘉山氏の人事もその一環だった。仙谷氏は垣添・廣橋両氏をはじめ、歴代総長が温存してきた風土や文化の一掃を企図する。
 「牧本氏の師である高上氏は依願退職しました。垣添氏に抜擢された『経歴』が問題視された。垣添色の排除が狙いです」(国がん関係者)
 牧本氏は10年以降、科研費を獲得できていない。仙谷氏と嘉山氏の手による改革の進展で垣添氏の影響力が著しく低下した時期に重なる。
 救急医療が地域で完結せざるを得ないのとは対照的に、がん医療には比較的時間に余裕がある。それは「雑念」や「夾雑物」が入り込む素地でもある。今回の事件は厚労省が「(統制が利きにくい)関東軍」と呼ぶ国がんだからこそ起こり得た。
  「ナショナルセンター間の勢力図は長く1強5弱の常態。政治権力とつながりやすいのが力の源泉です。政治家は国がんを支援者に紹介できれば点数稼ぎにな る。国がん側は厚労省と対抗する上での後ろ盾として政治家を活用する。官僚にとっては間接的な情報提供はありがたい。ずぶずぶの関係です」(同前)
 垣添氏の栄華も例外ではない。
 「彼は泌尿器科医。50歳以上で発症することが多く、治癒率も高い前立腺がんの治療を通じて要人と接点を持つ機会が多かった。国がん内で権力が失墜しても、読売新聞の一面に連載コラムを持つことで影響力を何とか維持できました」(同前)
 最大の問題は患者が不安に駆られていることだ。例えば、牧本氏の更迭後も診療は継続されるのか。国がんからはまともな説明すらない。
 厚労官僚の恣意的な運用。従順な子分だけを優遇。世論による批判逃れの意図。見せ掛けの「実績」を作る──。今回の事件が浮上した土壌は「医療版事故調査委員会」をはじめ、厚労省の本質にも通じる。
 やはり、厚労省はお得意の第三者機関設置を急ぐべきではないか。

 月刊「集中」 2013.4.1、写し

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この問題は第三者機関を作って調査すべきだと思いますが、厚労省は身内に甘い印象を受けます。不公正な態度は必ず改善する必要があります。

東大教授 詐欺容疑で逮捕 後絶たぬ学・業癒着

東大教授 詐欺容疑で逮捕 後絶たぬ学・業癒着

産経新聞 7月26日(金)7時55分配信

 研究者と取引業者の癒着をめぐっては、昨年も京都大学の元教授が逮捕されるなど相次いで表面化。架空取引で捻出した資金を業者側に管理させる「預け金」などの不正経理も絶えない。うまみを吸いたい「学」と教授に食い込みたい「業」が欲で結びつく構図が浮かぶ。

 「発注権限を持つ教授を1人囲い込むだけで、簡単に億単位の受注を生む。教授にどれだけ近づけるかは死活問題となる」。ある教育関係者は指摘する。

 こうした癒着は昨年もあぶり出されていた。東京地検特捜部は昨年7月、収賄容疑で、京都大学大学院薬学研究科元教授、辻本豪三被告(60)=公判中=を 逮捕。辻本被告は、物品納入に便宜を図った謝礼と知りながら、平成19~23年、飲食代金や海外旅行の費用計約643万円を業者側に負担させたとされる。

 辻本被告はゲノム(全遺伝情報)創薬科学の第一人者。贈賄側の業者は、辻本被告の京大への転籍に合わせて、京都事務所を立ち上げるなど、長年近い関係に あった。「接待攻勢は日常茶飯事。自社のクレジットカードを渡して『自由に使ってくれ』ということも多い」(製薬業界関係者)

 こうした癒着は全国の研究機関に存在しており、文部科学省が今年4月に発表した調査によると、科学研究費補助金(科研費)など公的資金の不正使用は、46機関で計約3億6100万円に達していた。計139人が関与しており、多くは預け金を取引業者に管理させていた。

 文科省は不正防止のガイドラインを作成しているが、機能しているかは疑問符が付く。捜査関係者は「国や自治体に比べて、研究機関と業者の癒着は度が過ぎており、自浄作用がないとしか言いようがない」と指摘している。

2013.7.26 写し
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「国や自治体に比べて、研究機関と業者の癒着は度が過ぎており、自浄作用がないとしか言いようがない」

研究機関が好き勝手やってきた悪い体質がこの言葉によく表されていると思います。必ず改善しなければなりません。

2013年7月27日土曜日

論文改ざん―社会への背信行為だ

論文改ざん―社会への背信行為だ


 東京大学で、長年にわたって研究論文のデータ改ざんなどの不正が続いていた。
 科学研究の信頼性を根幹から揺るがす不祥事である。真相を明らかにし、早急に再発防止策を講じるべきだ。
 東京大の調査委員会が、分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授のグループが発表した論文を、過去16年さかのぼって調べた結果、不正が分かった。
 165本の論文のうち43本に、実験結果を示す画像などの改ざんや捏造(ねつぞう)、その疑いのあるものが見つかり、論文撤回が妥当と判断された。
 多くの研究者がかかわった共同研究で、なぜ不正が繰り返され、見逃されてきたのか。解明が求められる。
 近年、日本の研究者による論文の不正が相次いでいる。つい先日も、京都府立医大などで実施された高血圧治療薬の臨床研究で、論文データの改ざんが発覚したばかりだ。
 こうした不正は、治療や後続の研究を誤らせかねない。研究によっては多額の税金が投入されている。社会全体に対する背信として、厳しく対処しなければならない。
 背景には、不正を犯す誘惑が強まっているなか、それを防ぐ仕組みが伴っていないという事情がある。
 例えば、若手研究者はまず期限のある研究職に就き、任期中にあげた業績によって次の職場を探すことが一般的だ。
 一流誌に論文を発表することは、安定した職と多額の研究費を得ることにつながる。
 成果を求める教授や研究リーダーのプレッシャーも大きい。
 一方、論文は通常、身内の研究グループ内部と学術誌側でチェックされるだけだ。「研究者は不正はしない」という前提から、日本は欧米と違って研究倫理に関する教育も貧弱だ。
 こうした性善説ではもはや立ち行かないことは明らかだ。
 米国では90年代に政府に研究公正局をつくり、不正行為を調査、公表している。日本でもこうした機関の設置や、不正を告発できる仕組みの導入を検討すべきではないか。
 不正にかかわった本人だけでなく、研究の中核となった教授や所属研究機関の責任も厳しく問わねばなるまい。
 とりわけ医療研究における不正行為は、被験者や患者の生命を脅かしかねない。不正をした医師の免許停止など、より厳しい制裁も考えるべきだ。
 文部科学省が中心になり、再発防止に本気で取り組まねばならない。

朝日新聞 社説 2013.7.26 写し

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朝日新聞も研究公正局の設置を提言しました。性善説を前提に研究者の行為に対処するのは間違いだということは明白に立証されました。第三者の学術警察が積極的に研究不正を取り締まる必要があります。

2013年7月26日金曜日

東大論文不正:元教授、研究者同士競わせる

東大論文不正:元教授、研究者同士競わせる

毎日新聞 2013年07月26日 00時20分(最終更新 07月26日 00時28分)

 東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(昨年3月に辞職)のグループによる大量の論文不正が25 日、発覚した。大学の調査委員会が「撤回が妥当」と判断した論文は16年間で計43本と、加藤氏が在職中に発表した全論文の4分の1に上る。加藤氏自身は 不正の指示や関与を否定しているが、世界的研究者の前代未聞の不正を生んだ背景には、メンバーを複数の小グループに分け、有名科学誌への発表成果を競わせ る研究室の運営手法があったとみられる。
 加藤氏によると、研究室には最大50人以上のメンバーが所属し、年間の研究費は約2億円あった。この分 野では国内有数の規模だ。加藤氏は「研究費に見合う、世界で通用する成果を出さないとダメだ」と圧力をかけ、メンバーを3〜5の小グループに分けて競い合 わせた。実験は各自の得意分野を生かし、分業体制で進めたという。
 研究者は論文の質や量で評価され、研究費やポストの獲得に直結する。英国の「ネイチャー」や米国の「サイエンス」「セル」など有名科学誌は世界の研究者の注目度が高く、加藤氏も「(研究者としての)世界が変わる」とメンバーに投稿を強く勧めた。
 ただし、有名科学誌のハードルは高く、あいまいさのない「きれいなデータ」が求められる。判明した不正 の大部分は、データを示した画像を改ざんしたり、別の実験データを使い回したりしたものだ。成果が出ないメンバーを「(研究をやめて)臨床に戻れ」と叱責 し、その後に「あまりにもきれいなデータが出てきたこともあった」という。加藤氏自身は画像の改変にタッチせず、実験結果に助言したり、論文を修正する役 割だった。
 加藤氏は「僕の要求が厳しかったので、メンバーがついてこられなかったのかもしれない。“性善説”の研究室だったので、互いにチェックすることがなかった。自分は管理者として失格だった」と肩を落とした。
 こうした研究室運営について、研究不正に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「生命科学は最近、研究者の 数や大型の研究資金が増え、特に競争が激しくなった分野。成果を求めるプレッシャーが高まれば、不正を生む要因になり得る。最初はデータをきれいに整える ために画像を操作する程度だったのが、徐々にエスカレートしていった可能性がある」と指摘する。【藤野基文、西川拓】

 ◇「性善説で実験信用」

加藤氏が毎日新聞の取材に応じた一問一答は次の通り。



−−不正が起きた原因をどう考えるか。
 研究室は3〜5のグループに分かれ、良い意味の競争があった一方で、他グループよりも成果を出さなければいけないという焦りもあったのではないか。
 −−論文はどのように仕上げたのか。
 筆頭著者が何を解明したいかを考え、そのために必要な実験は複数に割り振った。論文の図は、基本的に実験の担当者が作った。その時に不正が行われていたらしい。私が主導して研究室ぐるみでやったことではない。
 −−教授の役割は。
 出てきた実験結果を確認し、他に必要なデータなどについてアドバイスをした。筆頭著者が書いた文章の修正も私の役目だった。しかし、コンピューターが苦手なので図の作成はメンバーに任せた。
 −−不正を指示したことは。
 全くない。既に教授になっていたし(不正をする)理由がない。
 −−どうすれば防げたのか。
 実験結果の報告は全て信用したが、“性善説”に立ったやり方はだめだったのかもしれない。チェックし合うことが必要だった。実務的な細かい所は任せていた。丸投げと言われればその通りだ。

写し1写し2
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研究不正の背景には論文数やインパクトファクターの向上を目的とした過度の競争があります。競争が悪いとはいいません。しかし、公正さを保つ仕組みが必要です。

科学研究の不正防止策、半年以内に…学術会議

科学研究の不正防止策、半年以内に…学術会議

 
 高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究のデータが改ざんされていた問題を受け、日本学術会議の大西隆会長は23日、「科学者に対する国民の信頼を毀損(きそん)するような不正行為を根絶するために、不正防止活動や臨床研究の制度改革などについて議論し、半年間で結論をまとめる」との談話を発表した。
 〈1〉不正防止のために、全国7ブロックごとに「科学者行動規範普及委員会」(仮称)の設置〈2〉臨床研究における製 薬会社や研究者、政府の役割と取るべき行動についての提言――などを検討する。同会議が作成した「科学者の行動規範」の研修を受けていないと、公的研究費 を受け取れない仕組み作りも議論する。
大西会長は「基礎研究を臨床や創薬に結びつける橋渡し機能を強化するためにも、科学研究の不正を根絶し、健全性を高めねばならない」と話した。

(2013年7月23日20時52分  読売新聞)


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日本学術会議は強制調査権を持つ学術警察をぜひ作ってほしいです。

東京大:論文に多数の不正 調査委、43本「撤回が妥当」



東京大:論文に多数の不正 調査委、43本「撤回が妥当」

 
毎日新聞 2013年07月25日 11時01分(最終更新 07月25日 11時59分)
 
 東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明10+件元教授(昨年3月に辞職)のグループが発表した論文に多数の不正があり、1996〜2011年の43本について、東大の調査委員会が「撤回が妥当」と判断したことが25日、分かった。16年間にわたってこれほど多くの不正を重ねたのは極めて異例。今後、研究費返還や博士号など学位取り消しに発展する可能性が高い。加藤氏は毎日10+件新聞の取材に自らの関与を否定したが、不正自体は認め「調査委の判断を受け入れる」と話した。
 加藤氏は細胞核内で遺伝情報を管理するたんぱく質などの研究で世界的に知られ、04〜09年に予算20億円に上る国の大型研究プロジェクトの代表を務めた。不正のあった論文には研究室メンバーら20人以上が共著者として名を連ねている。
 昨年1月に学外から指摘があり、東大が調査委を設置。加藤氏は監督責任を取って辞職した。研究所に加藤氏が着任した1996年以後の論文全165本を精査した結果、画像の合成や一部消去などデータの捏造(ねつぞう)、改ざんなどが判明した。43本は撤回が妥当としたほか、10本は訂正が必要と結論づけた。
 不正論文は、肥満の原因となる脂肪細胞が増える仕組みや細胞分裂に伴うDNA複製の仕組みの解明など多岐にわたる。いずれも実験データの画像に別の実験画像を切り張りしたり、一部を消去したりして、都合良く結論が導けるよう改変していた。
 調査委は加藤氏について「直接的に図の作製にはかかわっていない」とする一方、「論文作成に対する態度や研究室運営の問題が多数の不正を招いたことは明らか」と指弾。「東大の社会的信用を損ない、若い研究者の将来に多大な悪影響を与えた」と判断した。
 加藤氏は実験結果の内容をチェックし、文章を修正していたという。「(メンバーが)功を焦ったのだと思う。私の能力が無かったばかりに、大学、研究所、学会に甚大な迷惑をかけてしまい、申し訳ない。指摘された論文の撤回手続きを進めている」と陳謝した。【藤野基文、河内敏康、野田武】

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ようやく不正が認定されました。実行犯は誰でしょうか?この事件はまだ終わっていません。第三者の学術警察の設置など再発防止策を作ってほしいです。

2013年7月24日水曜日

ディオバン使用を中止、臨床データに操作 東京都済生会中央病院

ディオバン使用を中止、臨床データに操作 東京都済生会中央病院

2013.7.23 11:07
 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)を使った臨床研究データに人為的な操作があった問題で、東京都済生会中央病院(港区)は23日までに、ディオバンの使用中止を決めた。
 対象はディオバンに関連する計3種の薬。「次回の処方時より代替の薬に変える」としている。運営する恩賜財団済生会によると、中央病院が単独で決定したという。
  中央病院は、ディオバンが脳卒中や狭心症などの発生を予防するとした効果に疑問が生じていることを受け「(降圧効果のある)同種薬剤が多数存在する中で、 あえて処方する理由は少ない」とした。また、このような疑問点のある薬剤を漫然と使うことは「倫理的にも問題」とした。
 一方、降圧剤としての効果と安全性に問題はなく「服用を急に中止することは危険なので絶対にやめて」と患者に呼び掛けた。

msn 産経ニュース

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ディオバンを使わなくなる病院が増えるかもしれませんね。

2013年7月23日火曜日

防衛医大講師、論文データ虚偽記載で停職

防衛医大講師、論文データ虚偽記載で停職



防衛医大(埼玉県所沢市)は22日、下あご手術に関する論文3本にデータの改ざんや捏造(ねつぞう)が計7件みつかったとして、同大病院歯科口腔(こうくう)外科の武藤寿孝講師(63)を停職11日の懲戒処分にしたと発表した。
 同大によると、昨年12月、武藤講師の論文に虚偽記載があると指摘があり、学内の調査委員会が事実関係を調べた。その 結果、海外の学術誌に昨年掲載した下あご手術に関する論文に、複数人で行った手術を「1人で実施した」と記載したほか、同大倫理委員会の承認を受けずに論 文3本を発表するなど4件の捏造を行った。このほか10年以上前にかかわった手術のデータを再計算せずに協力者に無断で転載するなど3件の改ざんがみつ かったという。


(2013年7月22日22時21分  読売新聞)

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捏造、改ざんでたったの停職11日で済んだのは処分が軽すぎます。

2013年7月18日木曜日

Jikei Heart Studyは不正濃厚?

最近Kyoto Heart Studyの"バルサルタンは脳卒中や狭心症のリスクを他の薬より低下させる"という結果が誤りだった可能性が高いことが京都府立医大の検証で明らかになった。世間では事実上捏造・改ざんだったと考えられている。

Jikei Heart Studyもバルサルタンが他の薬より狭心症等のリスクを低下させると報告している。現在疑義が持たれているが、Kyotoの検証結果で疑惑はさらに深まったことになる。少なくともJikeiの結果は京都府立医大の検証の結果と違う。

Jikeiも不正が濃厚だろうか?

2013年7月17日水曜日

強制調査権を持つ第三者調査機関は必要か?

今回のディオバン(バルサルタン)の臨床試験改ざんは京都府立医大が犯人を特定せず、故意性も明言を避けた。理由は臨床試験に関わったノバルティスファーマ社の元社員が調査に協力しなかったことなどだ。被疑者の松原弘明元教授も不正を否定している。同大は任意調査に限界があるのでもう調査をしないという。同大の不正に対する対応は消極的だ。

被疑者が調査に協力しない、又は不正を否定しているから犯人を特定できない、故意性を認定できないなら、他の事件でも同様の問題が生じる。現在の任意調査の制度や研究機関の不正に対する消極的な態度に問題があることは明白だ。

今後同様の問題を繰り返さないためにも強制調査権を持つ学術警察が積極的に調査し不正を認定し処分できる仕組みが必要だ

2013年7月16日火曜日

臨床データ操作 企業関与に厳格なルールを

臨床データ操作 企業関与に厳格なルールを

琉球新報 社説 2013.7.14

患者を欺くだけでなく、日本の臨床研究への信頼を揺るがす極めて重大な事態だ。
 製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が販売する降圧剤「ディオバン」を使って京都府立医大の松原弘明元教授が実施した臨床研究について、府立医大は、論文に使われた解析用データに人為的な操作があり、「結論に誤りがあった可能性が高い」と発表した。
 薬を服用した高血圧患者について、脳卒中や狭心症を減らす効果があったようにデータが改ざんされていた可能性が濃厚だ。
 府立医大の検証チームは、他の降圧剤と比べ「発症率に差はない」と優位性を否定した。事実なら薬効を捏造(ねつぞう)するにも等しい行為と糾弾せざるを得ない。
 この臨床研究では、5月に退社したノ社の社員が患者データの解析を担当したが、関連の論文に名を連ねる際、所属を明示していなかったことも判明。ノ社から松原元教授の研究室には大学を経由し、1億円超の奨学寄付金が提供されていたことも分かっている。
 研究の中立性に疑義が持たれていたことに加え、今回のデータ不正だ。だが、2月に退職した松原元教授は、大学側の調査に「操作はしていない」と説明して いるほか、ノ社は「大学の報告だけでは、恣意(しい)的なデータ操作があったとは確認できない」とする。いずれも説得力を欠き理解不能だ。
 日本で2000年に発売されたディオバンの年間売り上げは1千億円以上で、ノ社の売上高の約3分の1を占める看板商品だ。改ざんされたデータが販売促進に利用されてきたことは否定できまい。
 ノ社と府立医大は、具体的な責任の所在をはじめ真相を究明する責務がある。強制力のない調査に限界があれば、刑事告発なども含め疑惑の解明に手だてを尽 くすべきだ。同様にノ社の社員が関与した臨床研究が実施された東京慈恵医大など4大学も、それぞれの調査結果の公表を急いでほしい。
 再発防止に向け、データ解析など公的な監視機関の必要性が指摘され、法整備による罰則の強化を求める声もある。国も検討作業を加速すべきだ。
 一方、臨床研究に対する公的支援が乏しい中、医薬分野の産学連携が滞ることがあってはならない。企業と大学の共同研究の在り方についても、透明性の高い公正なルールづくりが急がれる。

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実効的な再発防止策を作ってほしい。

2013年7月15日月曜日

薬の効果偽装―教訓導く徹底調査

薬の効果偽装―教訓導く徹底調査を


 不正に効能がうたわれた薬を飲むのは納得がいかない。
 京都府立医大が手がけた高血圧治療薬の臨床研究で、効能のデータが改ざんされていたことが明らかになった。
 だれが、どう操作し、なぜ見のがされたのか。この研究にたずさわった製薬大手ノバルティスの社員の関与が疑われているが、大学の調査では核心がなぞのままだ。不正の全容を解明しなければならない。
 この薬の名はディオバンといい、国内売り上げが年間1千億円を超える人気薬だった。
 問題の研究は、この薬が認可を受けて一般に使われるようになったあとに、府立医大病院などで高血圧患者約3千人を対象に行われた。
 「別の高血圧薬にくらべて、脳卒中や狭心症などの発生リスクが半減した」などとする論文6本が立て続けに発表され、医師向けの宣伝に使われた。
 だが、その後、「データが不自然」と疑問が噴出した。研究の中心だった教授は今年2月に釈明しないまま辞職し、論文はすべて撤回された。
 焦点の社員は論文にも登場しており、データの統計解析や研究の事務局役を担っていた。この会社から教授には、1億円以上の奨学寄付金が渡っていた。
 大学側がデータをカルテと突きあわせると、実際にはなかった脳卒中の減少などの効果が表れるようにデータが操作されていたことが確認された。
 同様の研究は、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大も行い、同じ社員がかかわっていた。社員はすでに退社したが、ノバルティスには重い説明責任がある。各大学も早急に本格調査せねばならない。
 薬の認可を目的とした臨床試験(治験)にくらべ、副次効果などを調べる臨床研究は規制がずっと甘い。今回の不正は、これまで手つかずだった制度的な問題点をあぶり出した。
 製薬会社の関与、奨学寄付金のあり方、大学や病院の責任、文部科学省や厚生労働省の役割はどうあるべきか。臨床研究から不正を締め出すための教訓を導くためにも、今回の問題の徹底調査が欠かせない。
 近年の学術論文の数を分析すると、日本は基礎医学では世界トップレベルなのに、臨床医学はここ10年ほど低落が著しい。研究資金の出所を明示するなど海外では常識のルールが徹底されておらず、質の高い研究が少ないとも指摘されている。
 安倍政権は医療を成長分野としている。学会と協力して制度の改善に取り組んでほしい。
 
朝日新聞社説 2013.7.13

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徹底調査して真相を明らかにしてほしいです。

2013年7月14日日曜日

降圧剤試験不正 第三者機関で解明せよ

『社説:降圧剤試験不正 第三者機関で解明せよ

毎日新聞 2013年07月13日 02時30分

 日本の臨床医学研究の信頼性を根底から損なう深刻な事態だ。
 京都府立医大チームによる降圧剤バルサルタンの臨床試験論文について、同医大は、血圧を下げる以外の効 果が出るよう「解析データが操作されていた」と発表した。販売元の製薬会社ノバルティスファーマ(東京)の社員(既に退職)がデータ解析していたという。 製薬社員が関与した論文が、薬の売れ行きに有利になる形で操作されていたのだ。まるで詐欺のような話ではないか。
 データ操作はどのような経緯でなされたのか。ノ社は意図的な改ざんを否定するが、組織的な関与はなかったのか。大学の任意調査には限界があり、第三者機関による徹底した究明作業を求めたい。
 問題の論文は2009年に発表され、バルサルタンが他の降圧剤より脳卒中や狭心症を減らす効果があると 結論づけた。ノ社は論文を宣伝に使い、バルサルタンは年間1000億円以上を売り上げている。だが、データ解析に重大な問題があるなどとして、この論文や 関連論文が今年2月までに撤回されていた。
 一方で、研究責任者を務めた元教授側にノ社から1億円の奨学寄付金が提供されていたことが判明。社員は 同様の試験をした慈恵医大など他の4大学のデータ解析などにもかかわったが、論文ではいずれもノ社所属を明らかにしていなかった。元教授は不正を否定し、 社員は府立医大の聴取には応じていない。
 患者は医師の処方を信じて薬を飲む。薬効のごまかしは許されない。
 製薬会社は有名医師や臨床試験の結果を広告や宣伝活動に使い、医師もそれに安住してきた。問題の背後には、こうした医学界と製薬会社の癒着関係があったのではないか。
 日本は医学系研究費の多くを製薬会社など民間に頼っている。産学連携は必要だが、公的な研究成果が社会から信頼されるためには、資金提供元などの情報開示による透明性の確保が重要だ。
 米国では、医師に支払う10ドル以上の全ての対価を政府に報告するよう企業に義務付けている。日本も、 日本医学会が11年に策定した指針で、論文や学会発表の際に研究費の提供元を明示するよう求めた。日本製薬工業協会も資金提供を公表する指針を今春施行し たが、自主規制にとどまる。
 米科学誌に昨年発表された報告では、「捏造(ねつぞう)かその疑い」で撤回された生物医学や生命科学分 野の論文数で、日本は米独に続き3位だった。安倍晋三首相は、医療分野を成長戦略の柱に据えるが、国や医学界が連携してバルサルタン問題の再発防止に努め なければ、日本発の医療に対する世界の信用は得られまい。


第三者機関に調査させるべきでしょうか?ここから先は刑事告発し捜査機関が強制捜査しないと真相は明らかになりません。おそらく刑事事件に発展するでしょう。

2013年7月13日土曜日

薬効データ改竄 医療現場への重大な背信行為

薬効データ改竄 医療現場への重大な背信行為(7月13日付・読売社説)

 医薬品への信頼を揺るがす由々(ゆゆ)しき事態だ。

降圧剤「ディオバン」の効果に関する臨床研究を巡り、京都府立医大は元教授らによる論文でデータの操作が行われていた、との調査結果を公表した。
 この薬は、医療機関で多用されている降圧剤の一つだ。約100か国で承認されている。データ改竄(かいざん)は、服用している患者への重大な背信と言えよう。
 問題の研究は、約3000人の高血圧患者を対象に実施された。論文では、この薬を服用すると、他の薬剤との比較で、脳卒中や狭心症の発症リスクがほぼ半減すると結論づけていた。
 だが、解析データは、カルテの記載に比べて薬の効果が高くなるよう書き換えられていた。カルテ通りに解析すると、他の薬剤と比べても効果に差異はなかった。
 医師が薬を選ぶ際の重要情報を改竄した悪質な行為である。
 この研究では、メーカーの「ノバルティスファーマ」元社員が患者のデータ解析を担当していた。元社員が改竄にかかわっていたかどうかについて、京都府立医大は本人への聞き取りができず、判断できなかったとしている。
 しかし、こうした甘い調査は許されない。大学の責任で実態解明を進めるべきだ。
 この薬の売り上げは年間1000億円以上に達している。利益を上げてきたメーカーに説明責任があるのは言うまでもない。
 看過できないのは、研究をまとめた元教授の対応だ。元社員がデータ解析に関与した事実を伏せて論文を発表していた。
 ノバルティス社は、論文内容を薬の販売促進に利用する一方、元教授の研究室に大学を通じて1億円以上を寄付していた。元教授とノバルティス社の間に過度な癒着はなかったのだろうか。
 企業から研究者への資金提供の情報を公開するなど、透明性を確保することが重要だ。
 今回の問題の背景には、臨床研究を巡るルールの不備がある。
 新薬の承認審査に必要な治験には、薬事法に基づき、国への届け出や、データの3重チェックなどが義務づけられている。
 一方、今回のように薬が市販された後の臨床研究には、そうした厳格な基準はない。研究の進め方などの指針が必要だろう。
 安倍政権は、医療を成長戦略の柱に位置付けている。不信感を持たれない産学の協力関係を築いたうえで、医薬品の技術革新を進めていくことが大切だ。
(2013年7月13日01時38分  読売新聞)

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京都府立医大は改ざんではなくデータ操作という表現で、意図的かどうか確認できなかったとしました。いわば限りなく黒に近いグレーという判断。しかし読売がいうように改ざんです。意図せずディオバンの効果がある方向ばかりに間違うことはまずありません。大学はきちんと故意を認定すべきです。被疑者が弁明を放棄したのだから不正を認定されても自己責任です。これで故意の不正を認定できないなら被疑者が不正を認めない限り不正を認定できません。それはあまりに不条理です。

2013年7月11日木曜日

バルサルタン臨床研究で改ざん可能性大と京都府立医大が中間報告!

『治療薬論文でデータ操作…京都府立医科大が発表

京都府立医科大は11日、高血圧治療薬「ディオバン」の臨床研究をめぐる松原弘明元教授らの論文について、「データが操作され、論文の結論に誤りがあった可能性が高い」とする調査結果を発表した。

 脳卒中や狭心症を抑える効果が実際よりも高くなるようにデータが操作されていた。

 松原元教授らの論文は2008年~12年に国内外の学会誌などに発表された。3000人の患者を対象にディオバンを使うと、従来の薬と血圧の下がり方は同じでも、脳卒中や狭心症などのリスクは45%も減るという内容だった。

 しかし、専門家から「データが不自然だ」などと指摘され、論文は相次いで撤回された。府立医大は3月に外部有識者を含む調査チームをつくり、データの検証や関係者からの聞き取りなどを進めていた。

(2013年7月11日21時03分  読売新聞)』

売り上げのために改ざん・・・。悪質です。

2013年7月1日月曜日

治験改ざん疑惑:費用ほぼ全額が医師に 大阪の病院

『治験改ざん疑惑:費用ほぼ全額が医師に 大阪の病院
毎日新聞 2013年07月01日 12時12分(最終更新 07月01日 13時22分)

小林製薬(本社・大阪市中央区)の肥満症治療の市販薬開発を巡り、臨床試験(治験)データが改ざんされた疑いがある問題で、治験を実施した医療法人 大鵬会・千本病院(同市西成区)へ治験関連費として支払われた2460万円のうち、病院側に残されたのは約3万円で、ほぼ全額が治験を担当した2人の医師 と、看護師1人に支払われていたことが1日、関係者への取材で分かった。
 千本病院で治験を担当したのは当時の内科部長(43)と当時の院長(45)。同病院によると、元内科部 長に計2154万円、元院長に計245万円が支払われ、看護師にも57万円が支払われた。これらの費用は、小林製薬から治験先を紹介した治験施設支援会 社、サイトサポート・インスティテュート(SSI、本社・東京都)を通じて支払われたという。小林製薬は「千本病院より先の配分などは関知していない」と 話した。また、SSIには、被験者への治験参加料と、SSIへの費用も支払ったが、額は公表できないとしている。
 元内科部長と元院長は昨秋、退職。元内科部長は、毎日新聞の取材に対し、支払われた金額を「はっきり覚 えていないが、高額だった。病院は初めての治験で、その後、治験を請け負うようになった。(その報酬は)病院にお返ししている」と話した。改ざんの疑いに ついては「SSIの社員が下書きしたのを、上書きしただけだ。改ざんしても僕には何もメリットはない」と、話した。
 SSI大阪オフィスは1日、取材に「当時の担当社員は退社しており、事実関係の確認を進めている」と話した。
 治験は千本病院が2010年4月〜11年3月に実施。被験者72人に病院職員が6人含まれ、うち4人の治験データが実際の身長より低く記載されるなどした。【斎藤広子、吉田卓矢】
 


お金の流れはどうでしょうか。