2013年8月18日日曜日

薬のデータ捏造、論文捏造など大学医療の問題を東大教授告発


薬のデータ捏造、論文捏造など大学医療の問題を東大教授告発

NEWS ポストセブン 8月17日(土)7時6分配信
 1960年代に発表された山崎豊子の『白い巨塔』は、閉鎖的かつ権威主義的な大学病院の腐敗を描いた作品だった時を経ていま、相次ぐ薬のデータ捏造や研究費の不正流用が発覚し、その体質はより腐っていたことが明らかになった。

 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門で医療ガバナンスを研究している上(かみ)昌広・特任教授(内科医)が、この現状を憂い、膿を出し切るために爆弾告発を決意した。

 * * *
 いま問題となっている「バルサルタン事件」は、残念ながら氷山の一角に過ぎません。日本の大学病院と製薬会社は、不正や癒着が起きやすい構造になってい ます。同様の不正はまだまだあるはずです。今後、糖尿病、がん、精神病などの分野でも問題が発覚するでしょう。これらの疾患に関わる医療では巨額のお金が 動くからです。

 製薬会社に「御用学者」が引っぱり出され、この薬は効くぞというようなことをふれまわる。厚労省は見て見ないふりをする。この構造は、原発事故における “原子力ムラ”と同じです。電力会社が製薬会社、経産省が厚労省に置き換わっただけ。そして、御用学者たちがまんまとそれに使われている。「原発は安全 だ」といっていた学者と、いま製薬会社と癒着している医師たちは全く同根です。

〈大手製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)に関して、脳卒中予防などの効果を調べた複数の大学の臨床データに不正が あった問題は、大学側が次々と謝罪する事態となった。医療の信用を大きく損なった「前代未聞の不祥事」として連日のようにマスコミに報じられているが、こ の深淵には、福島第一原発事故同様、官・民・学の「利権」と「癒着」がある、とバッサリと斬り捨てる医学者がいる。

 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門で、医療ガバナンスを研究している上昌広・特任教授(内科医)である。〉

 バルサルタンは血圧を下げる薬ですが、他の薬と比べて、それほど下がり方は強くない代わりに、心筋梗塞や脳卒中のリスクが半分くらいに減りますよ、と製 薬会社は謳っていた。その根拠とされていたのが、京都府立医大や慈恵医大など5つの大学で行なわれた臨床試験論文でした。

 ところがその論文に関し、京都大学のドクターがどうも血圧値がおかしいと指摘して調査したところ、血圧値や脳卒中、心筋梗塞の発症数を改竄していたことが判明し、さらに製造元であるノバルティスの社員(5月に退職)がデータ解析に関与していたことが分かったのです。

 今回の不正はテストの点数でいえば0点を80点に改竄していたようなもの。「心筋梗塞などのリスクが下がる」という論文の“ストーリー”そのものをい じっていたわけです。なぜ不正がこれまで発覚しなかったのかというと、患者を研究対象にしているためです。薬効には個人差があり、環境が異なれば、研究結 果は同じになりません。つまり、大学側から見れば、個人差があるなど言い逃れできるのです。臨床研究の“死角”をついた不正です。

〈さらに、ノバルティス社は、大学側の“弱み”も巧みについている。臨床研究に詳しいナビタスクリニック立川の谷本哲也医師によると、「日本の大学病院に は臨床試験に欠かせない統計解析のプロがいない。人材面でも製薬会社に依存する臨床検査になっていた」という。今回、データ操作した疑いがもたれているノ バルティス元社員は、統計解析の専門家として大阪市立大学の講師も務めていた。

 一方、慈恵医大の調査報告書によると、臨床検査責任者以下、すべての医師たちが、「自分たちには、データ解析の知識も能力もなく、自分たちがデータ解析を行なったことはない」と証言している。〉

 つまり、統計解析という臨床試験のキモの部分を、初めから製薬会社に握られていたわけです。大学が論文を発表するので、製薬会社は“第三者”として、バ レない限り不正ができる。実態として、自社の社員がコミットしていても、会社としては関係ないと突っぱねることができる。ノバルティスがこの論文について “医師主導臨床研究”と繰り返し言い続けているのは、確信犯です。

 論文不正の最大の問題は、数値を操作したことで多くの患者を危機にさらしたことです。脳卒中リスクを減らす薬だという触れ込みですから、それを脳卒中リ スクの高い患者に処方しなかったら医師は訴えられかねない。論文を読んだ勉強熱心な医師ほど、バルサルタンを処方した可能性があります。それが嘘なら、バ ルサルタンで治療を受けていたために、脳卒中や心筋梗塞になったという人がごまんといるはずです。

 医療は日進月歩。医師がすべて最先端研究についていくことは不可能です。そこで医師は、論文をわかりやすく解説した医療雑誌に頼ります。ところが、そこには製薬会社の記事広告が満載。有名大学教授を招いた座談会で「バルサルタンは効く」と連呼している。

 今回問題になった先生たちも毎週のように講演会や座談会に呼ばれていました。1回15万円ほどの講演料を貰っていたでしょう。小遣い欲しさから、製薬会 社にすり寄る教授も生まれます。バルサルタンを宣伝していたある国公立大学教授は、子供を私立の医大に通わせていました。大学の給料だけでは苦しい。こう なると、企業の広告塔を止められなくなります。このような「御用学者」を用いた製薬関係の広告費が、年間1兆円程度といいます。

※週刊ポスト2013年8月30日号

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バルサルタン以外の薬でも同様の不正があったらたいへんなことになります。

2013年8月17日土曜日

筑波大、群馬大などの処分 - 加藤茂明事件

加藤茂明元東大分子細胞生物学研究所教授らの事件は捏造の実行者が加藤以外の人物だと東大の調査委員会は考えています。そろそろ犯人も含めて正式な調査結果が出てもいいと思います。群馬大学、筑波大学など犯人と目される研究者たちの処分はどうなるのでしょうか?

2013年8月16日金曜日

バルサルタン:臨床試験疑惑 5大学寄付、11億円 ノバルティス、初めて公表

バルサルタン:臨床試験疑惑 5大学寄付、11億円 ノバルティス、初めて公表

毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊

 降圧剤バルサルタン(商 品名ディオバン)に血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、厚生労働相直轄の有識者による検討委員会が9日、初会合を開いた。販売元の製薬会 社ノバルティスファーマ(東京)は、臨床試験を実施した5大学の主任研究者の研究室に提供した奨学寄付金が、総額11億3290万円に上ることを初めて明 らかにした。ノ社と大学側に資金関係を積極的に公表するよう求める声が高まっていた。
 内訳は、東京慈恵会医大1億8770万円(2002〜07年)▽京都府立医大3億8170万円(03〜12年)▽千葉大2億4600万円(02〜09年)▽滋賀医大6550万円(02〜08年)▽名古屋大2億5200万円(02〜12年)。
 企業から資金提供を受けた研究では、論文でそのことを明示することが必要だ。だが、論文でノ社から資金提供されたことを明示していたのは慈恵医大と名古屋大だけだった。疑惑が表面化してからは、国などが大学とノ社に対し、金額も公表して説明責任を果たすよう求めていた。
 ノ社はこの日、広告や講演会の資料などの宣伝資材に5大学の論文を使った実績も報告。バルサルタン関連の全1384種類のうち計495種類で使っていた。委員会は、9月末をめどに再発防止策などについて、中間報告をまとめる。【河内敏康、八田浩輔】

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再発防止のために奨学寄附金のあり方も検討する必要があります。

2013年8月15日木曜日

バルサルタン臨床試験疑惑 責任追及に課題多く 有識者検討委、調査に強制力なし

クローズアップ2013:バルサルタン臨床試験疑惑 責任追及に課題多く 有識者検討委、調査に強制力なし

毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊

降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、厚生労働相直轄で設置された有識者の検討委員会がスタートした。広がりを見せるデータ不 正操作の真相に迫ることが求められるが、厚労省内部からは強制力のない調査の難しさを懸念する声も漏れる。社員が深く関わり、信頼性が否定された試験論文 を宣伝の目玉にしてきた製薬会社ノバルティスファーマ(東京)の責任を問えるのかも焦点だ。【桐野耕一、八田浩輔、河内敏康】
 「誰が、どのような意図で、何のためにこのようなことが起きたのか、調べていただきたい」。東京・霞が関の厚労省で始まった検討委員会。田村憲久厚労相は、語気を強めてあいさつした。
 続いて、臨床試験にノ社の社員(5月に退職)が関与した5大学が、調査の経過を報告。滋賀医大の服部隆 則・副学長は「元社員の部下も関与していた」と明らかにした上で、「データには初歩的なミスが多く、論文内容と一致しない部分も出ている」と述べ、論文の 信頼性に疑問を呈した。千葉大も、カルテと論文の作成に使われたデータとの間で血圧値などの不一致が見られたことを報告した。
 大臣直轄の委員会は、年金問題で信用を失った社会保険庁の組織改革など、厚労行政にかかわる極めて重大な問題を議論する際に設置されてきた。「臨床試験のデータ操作は想像を絶する事態だ。日本の医療界の信用に関わる」。厚労省の幹部は危機感を隠さない。
 新薬の製造・販売を承認するための「治験」には、データの保存義務など薬事法に基づく厳格な規制があ り、違反すれば罰則が科されることもある。だが、今回のような治験以外の臨床研究については、強制力のない倫理指針があるだけで、「野放し」だったのが実 態だ。規制強化は研究者の自由を奪うと懸念する声もあるが、同省幹部は「カルテやデータのチェックなど不正ができない仕組みを取り入れる必要がある」と指 摘する。
 だが、規制以前の課題もある。万全の再発防止策を講じるには、真相解明が不可欠だが、委員会には法律に基づく強制的な調査権限はない。別の幹部は「関係者に正直に証言してくださいとお願いするしかない。真相に肉薄したいが、限界もある」と明かす。
 委員会でもこの点が議論の対象となった。森嶌昭夫委員長が「嫌だという人を強制的に聞き取りできない」 と言及すると、別の委員から「どう考えても元社員や論文の著者の聞き取りが必要だ」「大学とノ社の報告に矛盾もある。同じ場で聞き取りをしたい」との意見 が出た。こうした声を受け、委員会は聞き取りに応じるよう元社員らに求める方向だ。

ノ社はデータ操作された論文を宣伝に使い、昨年度は約1083億円を売り上げた。省内には「社会的に決して許されない」との声がある。ただし、幹部 は「仮に刑事告発するとしても、現状ではどの法律に違反しているのか、はっきりしない。違法行為が濃厚にならないと簡単には動けない」と苦渋の表情で語っ た。

 ◇元社員の関与に濃淡

臨床試験は、東京慈恵会医大、京都府立医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大で行われ、ノ社の同じ社員(5月に退職)が参加した。
 慈恵医大と府立医大の試験は、バルサルタンには他の降圧剤よりも脳卒中や狭心症などの発症を抑える効果があると結論付けた。だが、各大学の調査で血圧に関するデータの操作が発覚。さらに府立医大では、虚偽の脳卒中の記述をデータに加えるなどの別の不正操作も見つかった。
 元社員は両試験で統計解析や図表類の作製などをしていたほか、研究チームの会議の事務作業も引き受けていた。慈恵医大は元社員が不正操作したと疑い、府立医大は「データ操作できる可能性があったのは、元社員と数人の研究者に限られる」との見解だ。
 ノ社側の調査では、元社員の5大学への関わり方には濃淡がみられる。
 滋賀医大の試験は、バルサルタンには、他の降圧剤より腎臓を保護する効果が高いと結論付けた。元社員と共に部下も関わり、部下が患者データ管理や統計解析をした。部下は2007年に論文が発表される直前にノ社を辞め、滋賀医大の大学院生になったという。
 名古屋大の試験では、バルサルタンに心不全の予防効果を認めた。社内調査は「統計の手法の相談に応じたが、実際の解析は(大学の)医局員がした」とするが、ノ社が委託した第三者機関の調査は、元社員が統計解析した可能性を示唆しており、食い違っている。
 千葉大の試験では、心臓と腎臓を守る効果は認めたが、脳卒中などの予防効果はみられなかった。ノ社は、元社員について「研究者の一人と確執が生じたため、他の研究者らとほとんど接触がなかったと考えられる」と指摘。統計解析も「助言」にとどまっていたとしている。

 ◇ノ社宣伝関係の出版社編集委員が検討委員に 人選に疑問の声

降圧剤バルサルタンの臨床試験疑惑を巡る厚生労働省の検討委員会(12人)で、日経BP社の宮田満・特 命編集委員が委員に就任した。同社発行の医療専門誌「日経メディカル」は、製薬会社ノバルティスファーマが10年間以上、バルサルタンの宣伝記事や広告を 集中的に出した媒体で、厚労省の人選に他の委員から疑問の声が上がっている。


関係者によると、日経BP社は2000年11月にバルサルタンが発売される前から、ノ社によるプロモーション戦略に参画。ノ社の社内資料によると、 バルサルタンの広告は「日経メディカル」ともう一つの別の業界紙に集中し、東京慈恵会医大や京都府立医大の臨床試験の経過や成果を、大きく紹介してきた。 疑惑の表面化後、日経メディカルなどでの一連の宣伝の過剰さを批判する声があり、ノ社は7月29日の記者会見で「真摯(しんし)に反省している」と謝罪し た。
 ある委員は「委員会の信頼性が疑われかねない」と懸念するが、日経BP社は「専門知識を買われ就任した。当社としても今回の問題については検証報道を続けており、就任に問題はないと認識している」とコメントしている。【八田浩輔】
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 ◇臨床試験疑惑に関する厚生労働省の検討委員

稲垣治 ・日本製薬工業協会医薬品評価委員長
 桑島巌 ・NPO法人臨床研究適正評価教育機構理事長
 曽根三郎・日本医学会利益相反委員長
 竹内正弘・北里大教授
 田島優子・弁護士
 田代志門・昭和大講師
 花井十伍・全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人
 藤原康弘・国立がん研究センター企画戦略局長
 宮田満 ・日経BP社特命編集委員
 森下典子・国立病院機構大阪医療センター臨床研究推進室長
◎森嶌昭夫・名古屋大名誉教授
 山本正幸・公益財団法人かずさDNA研究所長
 ◎は委員長
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■ことば

 ◇バルサルタン臨床試験疑惑

ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタンに血圧を下げるだけでなく、脳卒中予防などの効果もあるかを 調べた5大学の臨床試験に、ノ社の社員が参加していたことが3月末に発覚した。論文上の社員の所属は、非常勤講師を務めていた「大阪市立大」などとされ、 社員の関与は外部から分からなくなっていた。ノ社が薬の宣伝に利用した東京慈恵会医大、京都府立医大の論文でデータ操作が見つかった。



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きちんと調査してほしいです。


2013年8月14日水曜日

バルサルタン事件の刑事告発

クローズアップ2013:バルサルタン臨床試験疑惑 元検事の郷原信郎弁護士の話

毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊

 ◇「刑事告発も視野に」−−企業コンプライアンスの専門家で、独占禁止法に関する著書のある元検事の郷原信郎弁護士の話

ノバルティスファーマが、内容が事実と異なることをあらかじめ認識した上で、臨床試験の論文をバルサル タンの売り上げ拡大のために使っていたのなら、誇大広告を禁止する薬事法66条に抵触する可能性がある。まずは医薬品を所管する厚生労働省が徹底調査し、 行政処分などを検討すべきだ。同条には罰則(2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金)もあり、刑事告発も視野に入れる必要がある。
 一方、こうした行為は医薬品市場の公正な競争を妨げるととらえることもできる。つまり、ノ社が他社の製 品よりも著しく優良であると医療関係者に誤認させ、販売を拡大しようとしたとすれば、不公正な取引方法を禁じた独占禁止法19条(欺まん的顧客誘引)に違 反する可能性も出てくる。不正な論文が撤回され、心疾患などへの効果の根拠が失われたならば、その宣伝を排除する必要がある。
 医薬品の問題なので、第一次的には所管の厚労省が薬事法の適用で対処すべき問題だ。しかし、それが十分に機能しない場合は、市場における競争全般を領域とする公正取引委員会が医薬品事業者に対する調査に乗り出し、排除措置の行政処分を行うこともあり得るだろう。


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刑事告発は必要です。

2013年8月13日火曜日

科学者不正行為 国民と科学への背信だ

科学者不正行為 国民と科学への背信だ 

2013年7月29日 


科学者による不正行為が後を絶たない。科学研究への国民の信頼を裏切るだけでなく、科学に真摯(しんし)に向き合うべき研究者の自殺行為だと深い失望を禁じ得ない。
  東京大学では、分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授らが発表した論文に多数の捏造(ねつぞう)があったことが25日に発覚したほか、同じ日に政策ビジョ ン研究センターの秋山昌範教授が東大と岡山大から研究費名目で計2180万円をだまし取った詐欺の疑いで逮捕された。26日には北里大を運営する北里研究 所が、文部科学省の研究費補助金の不正受給が新たに判明したとして、約8790万円を返納すると発表した。
 国内では近年、論文の不正が相次いで判明しているほか、研究費の不正使用も後を絶たない。文科省がことし4月に発表した公的研究費の調査では、全国の大 学など46の研究機関で不正使用が計3億6100万円に上り、計139人が関与していた。架空取引で業者に研究費を管理させる「預け金」や、カラ出張など の方法で不正請求した「プール金」などだ。
 科学者のモラルを厳しく問いたい。文科省は大学や研究機関と連携し、不正を事前チェックする態勢を早急に構築する必要がある。
 加藤元教授は分子生物学研究の第一人者で公的資金を使った研究も多かった。東大は外部からの指摘を受け、1996~2011年に元教授が関わった165本の論文を調査。うち43本は「撤回が妥当」とする報告書をまとめた。
 加藤元教授は「改ざん、捏造があったのは事実」と認める一方、「悪質な不正を繰り返していた者は少ない。不正箇所の多くは図表を良く見せるためのお化粧 と理解している」とも述べた。社会的な信用を失墜させる重大な事態を真摯に受け止めているとはにわかに信じがたい発言だ。多くの誠実な科学者にも影響を及 ぼす自らの責任を深く反省すべきだ。
 一方、秋山容疑者は医療ITが専門で、こちらも電子カルテ研究の第一人者として知られていた。東京地検特捜部によると、詐取した金を私的に使い、一部を共謀した業者に手数料として支払ったとされる。事実ならば言語道断だ。
 科学の真理を探究することは、人類の発展に貢献する崇高な行為だ。科学者一人一人は、国民の大きな夢と希望を担っていることを忘れないでほしい。

琉球新報 写し

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不正の原因を分析して改善に役立てる必要があります。

2013年8月12日月曜日

降圧剤:臨床試験 ノバルティスファーマ社ぐるみで支援

降圧剤:臨床試験 ノバルティスファーマ社ぐるみで支援

毎日新聞 2013年08月07日 02時30分


降圧剤バ ルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、製薬会社ノバルティスファーマの多くの人間が臨床試験を支援していた実態が浮かび上がっている。厚生労 働省は9日に大臣直轄の検討委員会をスタートさせてデータ解析に関わったノ社の社員(5月に退職)から事情を聴く意向だが、真相に切り込むには他の社員た ちからの聴取も欠かせない。【八田浩輔、河内敏康】
 ・社名伏せ データ解析の社員紹介
 ・大学寄付金「上層部の了承が必要」

 ◆「統計の専門家」
 「大阪市立大の非常勤講師という名刺を渡された。社員と名乗らなかった」。2002年に試験を始めた東京慈恵会医大の望月正武元教授(72)は、元社員との出会いを大学側にこう証言した。
 元社員を「統計の専門家」として望月氏に引き合わせたのは、ノ社のマーケティング担当者だ。大阪市大に よれば、元社員は02〜12年度に非常勤講師だったが、勤務実態は事実上なかった。慈恵医大によると、4種類の名刺を使い分け、社名が一切書かれていない ものもあったという。

 ◇販売戦略の一環

ノ社の社内資料によれば、00年11月に発売した直後のバルサルタンの年間の売り上げ目標は最大で500億円だったが、他社も含めた同種の降圧剤市場が急拡大するのに伴って上方修正。02年に1000億円を目指す社内プロジェクトがスタートした。関係者は「PRのための予算も増えた」と言う。「降圧を超える効果」が臨床試験で証明されることを期待し、各地の大学に試験が提案されていった。
 結局5大学の試験に参加した元社員は、09年に社長賞を受賞している。当時社長だった三谷宏幸最高顧問は「疑義のある論文という認識が無かった。今となっては反省する」と釈明している。
 元社員は循環器マーケティング部門に所属していて、当時の上司の多くは既に退社している。ノ社は「調査 したが、元社員によるデータ操作や上司が操作を指示したことを示す事実は認められない」と不正への関与を否定するが、退社した当時の上司らからは「強制力 がなく難しい」と聞き取りしていない。

◆宣伝記事で援護 慈恵医大の論文は07年に一流医学誌ランセットに掲載された。発表直後から試験の信頼 性などを疑問視する意見が国内外の専門家から上がったが、ある関係者は「疑念を打ち消すために、国内外の高血圧分野の権威を招いた座談会形式の宣伝記事を 専門誌に掲載した」と明かす。

慈恵医大、京都府立医大のように患者数が3000人を超す大規模臨床試験の経費は数億〜十数億円といわれる。ノ社は使途を限定しない奨学寄付金を府 立医大に計1億440万円(09〜12年度)、慈恵医大に計8400万円(05〜07年)提供している。ノ社は「研究の支援に用いられることを意図、期待 した」としている。
 「数千万円の寄付には役員クラスへの説明と了承が必要だ。上層部が何も知らなかったでは済まされない」(ノ社に在籍した男性)

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このようなバルサルタン事件の背景や不正の構図についてはフライデーも過去に報じていました。この事件をスクープした毎日新聞も当然把握していたのでしょうが、確実な裏付を必要とする分週刊誌より遅い報道になってしまったのは新聞の辛いところでしょうか。

ただ、週刊誌を悪くいうわけではないですが、全国紙がこのように報じたことは週刊誌の報道よりも信頼度が高いと世間は認識するでしょう。今後はノ社の指示で元社員が不正を実行したのかどうかが一つの重要事項です。記事ではノ社マーケティング担当者が望月正武(Jikei Heart Studyの責任者)に元社員を統計の専門家として紹介したと言及されています。マーケティングの担当者の件等についてはこちらのブログが詳しいです。

2013年8月11日日曜日

「隠蔽」は日本の組織体質か

「隠蔽」は日本の組織体質か --- 岡本 裕明

アゴラ 8月4日(日)17時32分配信 

京都府立医大、東大、東電の最近の共通点といえば「隠蔽と改ざん」でしょうか? 京都府立医大では製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバ ン」の効果に関する臨床研究を巡る論文データの改ざんが問題になりました。東大のシステム販売会社と共謀し委託契約料を騙し取った事件もデータの改ざんが ベースです。更に東大の分子細胞生物学研究所でも論文捏造疑惑が発生しており、現在調査中であります。

企業に目を向ければ東電が汚染水を海に流していた事に関して5月の時点でわかっていたのにその事実を確認するのに手間取り、公表が遅れていました。とくに公表に向けた直近の動きは以下の日経の記事が参考になるかと思います。

「広瀬社長によると、7月18日に海への汚染水流出を裏付ける潮位と地下水位のデータを本店が把握。19日夕刻に広瀬社長、原子力部門、広報部などが協議 して速やかに公表する意向を確認した。だが、広瀬社長は「公表前に漁業関係者に知らせた方がいい」と指示。22日に関係部門が漁業関係者に説明し、その日 の夕刻に発表した。20~21日は公表資料を作成していたという。」

本社が18日に事実を把握した後、公表までに4日かかっていること自体がもはや常識の範疇を超えてしまいました。大体、公表資料を作るのに2日間も要する のは企業体質がよほどの権力体質であるといえましょう。欧米企業ならば半日で公表にこぎつけるはずです。また、漁業関係者に先に知らせるという判断もよく わかりません。私なら同時に発表し、その上で漁業関係者により具体的な説明を個別に行う方法をとります。

これらの事件はごく最近起きたものだけであり、時間軸を延ばせばいくらでも出てくる「日本版パンドラの箱の祭典」であります。それもたまたま見つかったのが氷山の一角で話題にもならない隠蔽や改ざんは無数であると思います。

なぜ、人は隠すのか、といえば、追い込まれた際の弱さなのだろうと思います。「これで失敗したら人生終わり」というギリギリのところにいることが隠蔽だろうが、改ざんだろうが、犯罪だろうが何でもして「ばれなければ」という気にさせるのだろうと思います。

勿論、このような隠蔽体質は世界中で起こっていますので日本独特のものとはいいませんが、日本は多いほうだろうと思います。理由は先日も指摘しましたが、 やり直しのきかない日本ということが影響しているのではないでしょうか? アメリカは失敗してもやり直す気持ちがあればいくらでもスタート台に戻れます。 また、そこから復活した人は高く賞賛されます。ところが日本は「だめな奴」というレッテルを貼られ、権限や職を失い、人生路頭に迷うことが多いのです。

更に激しい競争社会に生きている人ほどその傾向は高いのではないでしょうか? 大学の教授はよい論文を書き、学内での地位を高めることが非常に重要になり ます。山崎豊子の「白い巨塔」はもっとも日本的な大学病院の醜い姿が描かれています。また東電もエリート社員の集り。著名な大学を優秀な成績で出て国家官 僚へのチャンスを蹴って入社するような人が多いところにおいて社内競争は社員の正しいマインドを歪めることになるのでしょうか?

隠蔽しなくてはいけないということは人間の弱さそのものだと思います。組織の強さと個人の弱さのアンバランスともいえましょう。精神衛生的にゆがみが生じている日本社会はいつ、幸せになれるのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

2013.7.31


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みなさんはどう思うでしょうか?

2013年8月10日土曜日

透明で質の高い臨床研究に体制を改めよ

透明で質の高い臨床研究に体制を改めよ

スイス製薬大手の日本法人、ノバルティスファーマの高血圧治療薬をめぐる疑惑が拡大している。薬の効果を調べるため国内の5大学で実施された臨床研究に社員(当時)が関与しデータが不正に操作された疑いがある。
 日本の臨床研究の信頼を揺るがす事態だ。政府や学会は徹底した真相解明に取り組むべきだ。政府は健全な臨床研究ができる体制を整え、問題の再発防止と医薬研究の推進を両立させる必要がある。
 問題の本質は2つ。まずデータ操作の疑惑だ。東京慈恵医大などの内部調査では、製薬会社の元社員が薬の効果が大きくみえるよう操作をした疑いが濃い。だれがやったにせよ、操作が事実なら日本の臨床研究のお粗末さを示す。
 誤った論文が国際的な医学誌に載り世界の医療関係者が読んだ。日本の臨床研究への国際的な信頼が深く傷ついたのは間違いない。大学側も知らなかったではすまない。日本の医療関係者は疑惑を解明し説明する責任を負う。
 第二に利益相反の問題だ。製薬会社の社員が自社製品を評価する臨床研究に関与するなど、もとより許されることではない。ノバルティス社の社内管理体制に問題があったのは明らかだ。経営陣の責任が厳しく問われている。
 京都府立医大と慈恵医大では、臨床研究を担当した教授が多額の奨学寄付金をノバルティス社から得ていた。教授の裁量で使えるつかみ金だ。企業への資金依存が問題の温床になった疑いがある。
 企業と大学の連携は日本の創薬能力を高めるため大切だ。健全な産学連携は推進する必要がある。問題は不透明な関係を育む使途があいまいな資金だ。研究契約に基づく透明性の高い資金にするよう改めるべきだ。
 日本製薬工業協会は寄付金などの提供先を公開する「透明性ガイドライン」をつくったが、医療界からの申し入れで部分的な実施にとどまる。完全実施に移す時だ。
 大規模な臨床研究には統計学やデータ管理の専門家などが不可欠だが、国内の大学医学部には少なく能力が不足する。それが製薬会社とのもたれ合いを生む構造的要因にもなっている。
 政府は医療を成長戦略の柱の1つに数えるが、足元は危うさをはらむ。製薬会社と研究者や医師のもたれ合いを排し、透明で質が高い臨床研究に向けて体制を改める必要がある。

日本経済新聞 社説 2013.8.3 写し

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きちんと改善しなければなりません。

2013年8月9日金曜日

A Survey on Data Reproducibility in Cancer Research Provides Insights into Our Limited Ability to Translate Findings from the Laboratory to the Clinic

A Survey on Data Reproducibility in Cancer Research Provides Insights into Our Limited Ability to Translate Findings from the Laboratory to the Clinic

  • Aaron Mobley,
  • Suzanne K. Linder,
  • Russell Braeuer,
  • Lee M. Ellis mail,

  • Leonard Zwelling mail

PLOS 受付 2013.2.25、受理 2013.3.29、発表 2013.5.15、本文写し 


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調査で"疑わしいデータを発表するように圧力をかけられた"と答えた人が18.6%いたようです。詳しくは論文を読んでください。

2013年8月8日木曜日

バルサルタン関連の改ざん事件や加藤茂明グループの捏造事件が報道され、研究不正問題が世間で注目されつつあります。前から改善を主張されていたにも関わらず無視していた文科省もついに重い腰をあげざるを得なくなりました。

しかし、重要なのはここからです。せっかく対策を作ってもそれが不十分なものでは全く意味がありません。今の様子をみると、文科省も日本学術会議も研究者の倫理教育や新しいガイドラインを作る程度で事を終わらせる可能性も否定できません。このような研究者のモラルや任意性にまかせる方法では不十分で、これまでの繰り返しにすぎません。

これまでも研究不正の対処については文科省のガイドラインや各研究機関の内部規定が存在しました。しかし、井上明久東北大前総長の事件ではガイドラインや東北大の規定は無視され、告発が不合理な理由で不受理になったり、不正が握りつぶされるといった事件が発生しました。他にもガイドライン等に従っていない例はいくつもあります。

研究者の倫理教育はこれまでも行われてきました。しかし、日本分子生物学会で研究者の不正防止に関する倫理教育をしていた加藤茂明ですら、論文43編で捏造などの不正を発生させてしまったのです。捏造論文の一つであるネイチャーの筆頭著者(加藤グループに属していた)は"不正をすべきでない。"と偉そうに研究倫理を語っていましたが、自分は悪質な捏造を実行していたのです。

結局、拘束力のない規定では実効性がなく、研究者や研究機関のモラルや任意性に任せても必ずしも不正を防げないことは、これまでの事件で明確に立証されました。

では、 研究機関でこのような問題が生じたときに監督機関である文科省や資金配分機関に訴え、改善してもらえばよいではないかと思うかもしれませんが、井上明久事件や松原弘明元京都府立医大教授のデータ流用事件などを見ればわかるように、文科省等に訴えても「文科省としては不正防止のガイドラインを作っており、それに基づいて定められた各研究機関の内部規定に基づいて不正の問題は対処される。まずは研究機関に自浄作用を発揮してもらって、文科省としてはその後に必要な対応を検討する。」といった趣旨の回答を大臣や役人がするだけです。結局のところ文科省等に訴えても問題を研究機関に丸投げするだけで、文科省等が責任を果すことはありません。

研究機関に問題を丸投げするのは研究不正の問題に限らず、研究費や業績評価などの問題でも全く同じです。要するに、倫理教育やガイドラインを強化するだけでは学術界の自浄作用は保障されません。研究機関が問題を握りつぶしたり恣意的に扱ったら、それを改善する方法はありません。

近いうちに検討される不正防止策はこうしたことをきちんと改善するものでなくてはいけません。これは絶対です。そのためには倫理教育やガイドラインの強化だけでなく、規定に拘束力をもたせ実効的なものにし、学術警察を作って告発を受け付け、大事にするためにわざと不正認定を避けるのではなく積極的、客観的に研究不正を調査し、 処分に関しても罰則を強化し、拘束力のある罰則の統一規定を作る必要があります。学術警察は必要ならば強制調査できる権限を持つべきです。

学術界の不正の問題を必ず改善しなければなりません。

2013年8月7日水曜日

岡山大准教授が論文多重投稿 国内外4誌に

岡山大准教授が論文多重投稿 国内外4誌に


 岡山大大学院医歯薬学総合研究科の40代男性准教授が、外科治療後の症状などに関するほぼ同じ内容の論文を、日本の学会誌と複数の海外専門誌に投 稿していたことが31日、大学関係者への取材で分かった。論文には新規性が求められるため、こうした多重投稿は倫理面から禁止されている。引用であること の記載はなく、転載許可も得ていなかった。今春、海外専門誌の指摘で発覚したという。
 同大は5月下旬、同研究科の教授らで調査委員会を設置。本人や論文作成に関わった共著者から聞き取りなどを実施しており、近く処分を検討する。同 大は「データの捏造(ねつぞう)、盗用はないが、研究者として恥ずべき行為。論文投稿の研修といった再発防止策を講じたい」としている。
 男性准教授は数年前、国内の外科系学会誌に日本語で論文を執筆、掲載された。その後、論文を英訳して海外の専門誌に投稿。内容が似通った英語の論文2本を別の海外誌にも出し、計4誌に掲載されたという。
 大学関係者によると、関連論文には複数の共著者が存在。名を連ねている同じ教室の教授らの監督責任が問われる可能性もある。山陽新聞社の取材に男性准教授らは「ノーコメント」としている。
 一般的に論文の掲載数は研究者の実績を示す指標の一つ。権威ある媒体ほど、研究費の獲得、地位向上につながるとされている。

(2013/8/1 8:00)

山陽新聞、写し

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捏造、改ざん、盗用だけでなく二重投稿やそれに基づく業績水増し評価などもきちんと不正として取り締まり、改善していただきたい。このような評価に基づく予算獲得や昇進は詐欺です。

2013年8月6日火曜日

論文捏造、データ改ざん次々 業績競争の陰 科学者に誘惑

論文捏造、データ改ざん次々 業績競争の陰 科学者に誘惑


(2013年8月1日) 【中日新聞】【朝刊】【その他

「科学者」による論文、データの改ざん、捏造(ねつぞう)問題が続出している。人類の発展に貢献する崇高な学問の最前線で、こうした不正や疑惑が絶えないのはなぜか。科学者が研究費を確保するため「派手な業績」を追い求める構造、再発防止策などを考えた。(小倉貞俊)
研究費は成果次第


「日本のすべての研究が世界で信用を失いかねない事態になっていると言っても過言ではない」
 東京大医科学研究所の上(かみ)昌広特任教授(医療ガバナンス論)は、科学者によるデータ改ざん問題について強い危機感を示した。
 特に7月は研究者による論文の捏造やデータの改ざんが次々と明るみに出た。

製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が販売する降圧剤を使って京都府立医大の松原弘明元教授が行った臨床研究について、大学側は11日、論文の データに人為的操作があったと発表。30日には東京慈恵医大も同じ降圧剤のデータを操作する不正があったことを認めた。いずれも降圧剤の「効果」を強調す るためのデータ改ざんだったとみられている。
 7月下旬には、東大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授らが過去に発表した論文に複数の改ざん、捏造があったことが発覚している。
 昨年10月、「iPS細胞を使った世界初の心筋移植手術を実施した」との虚偽の発表をして大騒ぎになった元東京大病院特任研究員の例は記憶に新しいが、この種の科学者による「不正行為」は後を絶たない。

■「発表か死か」

 不正はなぜ、起きるのか。「科学者の不正行為」の著書がある愛知淑徳大の山崎茂明教授(科学コミュニケーション)は「背景にあるのは、研究環境の悪化 だ。『華々しい業績を挙げないといけない』という成果主義がより強まってきており、多くの研究者が強烈なプレッシャーにさらされている」と指摘する。
 科学者が評価される尺度は「有名な専門誌にどれだけ多くの論文を発表したか」というもので、「パブリッシュ・オア・ペリッシュ」(発表するか死か)とも指摘される厳しい状況だという。
 加えて山崎教授は「国からの補助金は、提案して審査を通らねばもらえない競争型の研究資金の比重が高まっている。また若手の研究者らの雇用が任期制で、立場が不安定なことも要因だ」と強調。カネをめぐる競争社会が科学者を不正に走らせる原因とみる。
 総合研究大学院大の池内了教授(科学技術論)の見方も同じだ。「2004年に国立大学が法人化されて以降、主要財源である文部科学省か らの一般運営費交付金が毎年1%ずつ削られ、すでに1割減になっている状況だ。『論文を書かないと金取れず、金がなければ研究できず』といった構図もあ り、追い詰められている」と科学者の置かれている悲しい現状を説明する。
 結果を出さないとカネがもらえない。カネを引っ張ってこなければ出世もできない。不正なデータを使ってでも「結果」を出したくなる構造が判断をゆがめるのか。科学者としては若手の40、50代は特に誘惑にかられやすいともいう。
 池内教授は「一定の地位を確保して落ち着いている世代とは違い、研究者として岐路に立っている人がほとんどだ。改ざんに手を染めたり、その指示を出したりと、つい魔が差してしまう」と残念そうに語った。
不正告発 捨て身の覚悟


■閉鎖的な環境
 
 別の背景もある。リーダー格の科学者がデータを改ざんしても、いさめたり、やめさせたりしにくい環境があることだ。
 上特任教授は「数年前のこと」と前置きした上で、「複数の研究室で、大学院生らの若い研究者が指導者から『こういう実験結果のデータがほしい』と求められ、数値を改ざんさせられるケースがあったと聞いた」と明かす。
 研究室では指導者の立場は絶対的。指導者の指示に従わなければ大学の中で孤立しかねず、将来や、場合によっては雇用の継続にさえ関わっ てくるという「体育会的」体質が強いようだ。こうした閉鎖的空間の中では、指導者がデータを改ざんしても口を挟みにくく、その結果、不正に携わってしまう こともある。
 山崎教授が相談を受けたケースでは、ある若手研究者が教授との共同研究を論文に発表する際、教授から「グラフのゆがみをならしてシンプルにするように」と要求された。若手研究者が拒否したことで関係が悪化し、結局、この人は科学の世界から去ることになったという。

 東大分子細胞生物学研究所の加藤元教授らのケースでは、加藤氏本人が知らないところで部下が行っていたとされる。しかし、池内教授は「直接頼まれ なくても、その研究室のトップの意向や圧力を感じて不正に走ることもある。せっかく、トップが研究費を取ってきたのだからと考えるからだ」と実情を明か す。
 こうした環境では、トップの不正を告発しにくい。不正告発のための窓口を置いている大学、研究機関もあるが、告発者にとっては、捨て身の覚悟が必要なため、なかなか利用されない。
 文科省は06年、同省が研究費を出している研究の不正行為に対する告発窓口を置いた。だが実名、匿名合わせて告発は例年10件前後にと どまっている。上特任教授は「むしろ、最近は研究論文がインターネット上で公開されるようになり、ブロガーがネット上で不正を指摘して問題が発覚する事例 が増えてきている」という。

■倫理面教育を

 後を絶たない科学者の不正をどう防止するか。科学者の倫理教育の徹底しかないと池内教授は強調する。「科学者は科学的真実に誠実であるべきで、倫理を守 ることは大前提だ」と訴え、(1)説明責任(2)研究のマイナス面を警告する社会的責任(3)不正を防ぐ倫理責任−の3つを再認識してほしいという。
 不正を行った科学者を厳しく罰する仕組みを求める声も出ている。上特任教授は「ノバルティスファーマの問題は悪質で、犯罪と言っていい。第3者機関で取り締まることも必要ではないか」。池内教授は「悪質な不正を働けば、確実に研究の世界から追放される、という認識を学会や研究者間で共 有していくしかない」と語った。


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ようやくメディアも研究不正の原因や動機について報じるようになりました。この原因や動機はずいぶん前から指摘されていたことです。必ず改善してほしいです。

2013年8月5日月曜日

論文データ操作 学術研究への裏切りだ

東京新聞 社説 2013.8.1

医薬品研究などの論文にデータ操作や捏造(ねつぞう)の不正が相次ぎ発覚した。公的研究費の架空請求事件で、東大教授も逮捕された。科学者の不祥事は社会の信頼を揺るがす。学術研究への裏切りでもある。
 日本の医薬品研究の信用を失墜させる重大事態といえよう。製薬会社ノバルティスファーマが販売する降圧剤をめぐる論文で、「データが人為的に操作された」と東京慈恵医大が発表した。
 既に京都府立医大でも、「データ操作で、臨床研究の結論に誤りがあった可能性が高い」と発表している。ノ社側は「意図的な捏造や改ざんをした事実はない」と不正への関与を否定しているが、二つの大学の調査委員会の指弾は極めて重大である。
 二〇〇四年から始まった降圧剤研究は、血圧を下げる効果のほかに「脳卒中や狭心症のリスクを半減させる」という結論を導き出していた。根拠となる データが操作されれば、結論が変わりうるのは当然だ。「論文撤回」に発展した前代未聞の事態は、科学の名に値しない。服用した人は憤っているだろう。悪質 だ。
 慈恵医大では、ノ社の元社員が問題となったデータの統計解析をしていたと認定した。
 元社員は公立大学の非常勤講師でもあったが、利害関係者が研究に加われば、自社に有利な結果を導く恐れがある。本来、許されることではないはずだ。論文の基礎となる解析作業を、元社員に丸投げしていた研究者側にも責任はあろう。
 この降圧剤は販売額が年間一千億円を超えている。ノ社から府立医大側にも慈恵医大側にも多額の奨学寄付金が提供されていた事実もある。臨床研究のデータは患者の身体、生命と密接にかかわる。徹底的な真相解明が早急になされるべきである。
 東大分子細胞生物学研究所の元教授らが発表した論文四十三本についても、「意図的な改ざんと捏造があった」と、同大に指摘された。東京地検に東大教授が詐欺容疑で逮捕される事件もあった。架空発注で研究費約二千二百万円を詐取した疑いだ。
 研究者の不正は蔓延(まんえん)しているようだ。文部科学省の調査では、科学研究費補助金などの不正使用は、四十六機関で計約三億六千百万円にの ぼっている。公金だけに見逃せない事態だ。企業が絡んだ科学研究の在り方も再考すべきだろう。癒着がないか、厳格なチェックが欠かせない。

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必ず改善を

2013年8月4日日曜日

降圧剤データ操作 全容解明と再発防止に努めよ


降圧剤データ操作 全容解明と再発防止に努めよ


医薬に対する患者の信頼を根底から覆す事態といわねばならない。許し難い裏切り行為だ。
 東京慈恵医大がノバルティスファーマ社の降圧剤ディオバンの臨床研究で、血圧値データの人為的操作があったことを認めた。京都府立医大に続くデータごまかしの発覚である。
 慈恵医大はデータ解析を担当したノ社元社員の操作関与の疑いを指摘した。一方、ノ社は元社員の関与を否定している。データ操作の実行者の特定や動機など真相の徹底解明と責任追及を強く求めたい。と同時に、再発防止に努めなければならない。
 研究責任者の客員教授は世界的に権威のある英医学誌に発表した論文の撤回を表明した。科学的根拠のない論文に二束三文の値打ちもなく当然だ。それどころか、日本の臨床研究への国際的な信頼を損なわせた責任は極めて重い。
 研究はディオバンが他の薬より狭心症や脳卒中などに効果があるかを調べた。その結果、有効性が高いとした。
 教授の講座には、判明済みだけでノ社から8400万円の寄付があったという。資金提供は論文に記載されてはいたが、研究の中立性を担保しているとはいえまい。
 ノ社元社員が参加した京都府立医大の臨床研究でも、データ操作や1億円超の寄付が明らかになっている。
 ノ社は第三者調査の結論として、元社員による意図的なデータ改ざんの事実は断定できなかったとしたが、にわかには信じがたい。元社員はデータ解析のほか、論文執筆などにも関わった。なのにノ社の所属を伏せていたのだ。
 大学や民間会社の任意の調査には限界があり、もどかしい限り。大学は刑事告発に踏み切り、強制捜査による全容解明を図るべきだ。
 問題の背景には、産学のなれ合い構造が見てとれよう。製薬企業は医学者の研究資金難につけ込み、薬の販売促進につながる研究結果を得ようとする 実態がある。現に、ノ社は臨床研究成果を医療現場に宣伝し、ディオバンを年商1000億円以上の人気薬品にしている。根は深いのだ。
 日本医学会は、利益相反委員会が産学連携にかかる指針改定に乗り出す。研究成果が信頼されるには、資金の出所や金額など情報開示による透明性の確保が不可欠。厳正な新ルールづくりを求めたい。それを医学会、研究者に十分浸透させることも必要だ。
 政府は成長戦略として創薬や医療技術の開発促進の旗を振る。不正防止の仕組みが不十分のままなら、国民の理解は得られまい。厚労省が設置する検討会の再発防止論議が急がれる。臨床研究は患者の命に関わる。一刻の猶予もないと肝に銘じたい。

愛媛新聞 社説 2013.8.3 写し

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刑事告発をしなければなりません。

高血圧薬不正―これは構造的な問題だ

高血圧薬不正―これは構造的な問題だ


 人気薬をめぐる不正が、日本の研究機関の構造的なひ弱さをあぶり出している。
 製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンについて、東京慈恵会医大の臨床研究でもデータ操作が明らかになった。
 京都府立医大と同様に元社員がデータ解析を担当した。会社に有利な結論になるように改ざんした疑いが一層高まった。
 会社側は先日、「改ざんの証拠は見つからなかった」と発表したが、それで済ませられるはずがない。
 深刻なのは、今回が氷山の一角かも知れないことだ。これまでの両大学と会社の調査結果からは、医学界と製薬業界の根深い問題が露呈した。
 まず、日本の臨床研究の技術と基盤が実に貧弱なことだ。
 慈恵医大の医師たちは、責任者だった教授も含めて、「自分たちにはデータ解析の知識も能力もない」と口をそろえたという。これは、そもそも自分たちには臨床研究の立案能力がないとの告白に等しい。
 第二に、学界は最低限の研究倫理も疑われていることだ。
 両大学ともデータ解析を元社員まかせにしていながら、論文にその事実を明記していなかった。慈恵医大の場合、一流医学誌の論文掲載基準に合わせるため、「データ解析グループは資金提供者とは独立していた」と虚偽の記載までしていた。
 第三に、学界と業界のもたれ合いである。カネも能力も乏しい研究者側の弱みにつけ込むように、製薬業界が資金と労力を提供し、学界は長年、無反省にそれを受けとってきた。
 京都府立医大では1億円、慈恵医大では8400万円の奨学寄付金が、仕切り役の教授にわたっていた。研究上の使い道を限らない資金である。前後してノバルティス側は高血圧薬の臨床研究を持ちかけ、データ解析も引き受けた。
 研究者は企業のお膳立てどおりに患者のデータを集めさえすれば、自分の業績となる論文ができる。企業は、論文を使って製品の宣伝に役立てられるという腐敗しやすい構図だ。
 慈恵医大は今後の対策として、研究行動のルールづくりや倫理教育の強化、データ解析を支える臨床研究センターの学内設置などを打ち出した。これまで実行していなかったのが問題というものばかりだ。
 医学論文の虚偽記載は、科学への裏切りともいうべき行為であり、失われた信頼の代償はあまりに大きい。ほかの大学や大病院も早急に、臨床研究体制を見直すべきである。

朝日新聞 社説 2013.8.1

写し

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必ず改善を。

2013年8月3日土曜日

「科学研究費」の闇 不正にまみれた「学者ムラ」

「科学研究費」の闇 不正にまみれた「学者ムラ」

大学などの研究費として一番代表的なものは「科研費」と呼ばれる文部科学省が分配する科学研究費補助金だ。これ以外にも、厚生労働省と環境省なども個別に 科研費を持つ。税金を使いオープンに運営されているかのように見えるが、実はその選考方法から使途にいたるまでベールと疑惑に包まれている。東北地方の国 立大学工学部の教授の一人は語る。
「科研費選考の過程で学会のボスの意向が反映されることはどの分野でもある。そして現場での使い方や研究が適正かどうかは最終的に研究者の善意に任されてきた。実際にはさまざまな不正がある」
 科研費の闇は、民間を巻き込んだ研究費全体の利権や不正にも繋がっているという。

まともな審査が行われない

「研究費・不正」といって真っ先に挙がるのは医学の世界だろう。京都府立医科大学元教授による捏造論文に端を発した、ノバルティスファーマ社製の降圧剤「バルサルタン」を・・・  

 

 三万人のための総合情報誌『選択』 2013年7月号 写し ツイート

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科研費等の審査や業績評価がでたらめなのは以前からわかっていました。必ず改善していただきたい。

2013年8月2日金曜日

降圧剤疑惑:データ改ざんの関与否定 製薬会社が初会見

降圧剤疑惑:データ改ざんの関与否定 製薬会社が初会見

毎日新聞 2013年07月29日 21時36分(最終更新 07月29日 22時07分)

 降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)に血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、発売元 の製薬会社ノバルティスファーマ(東京)が29日、初めて記者会見を開き、第三者機関による調査結果を発表した。データ操作が明らかになった京都府立医大 など5大学の臨床試験に関与していた社員らを調べた結果、「データの意図的な操作、捏造(ねつぞう)、改ざんなどをした事実は認められなかった」と不正へ の関与を否定した。一方で、社員が不適切な関与をしてきた各大学の論文を薬の宣伝に利用してきたことについては、「おわび申し上げる」と問題があったこと を認めて陳謝した。
 記者会見で二之宮義泰社長は「社員が関与し、いまだに真相究明に至らず、大変申し訳ない。会社の責務として、二度とこのようなことが起こらないよう再発防止を徹底する」と述べた。
 バルサルタンの臨床試験は、東京慈恵会医大、府立医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大の5大学で実施され た。同じ社員(既に退職)が全ての試験に関与していたのに、論文では社員であることが伏せられていたことが発覚。さらに、ノ社が府立医大に4年間で1億円 余の奨学寄付金を贈っていたことも毎日新聞の報道で表面化した。
 これを受け、ノ社のスイス本社は4月に調査を第三者機関に委託。17人の弁護士と法律専門家らが、社内コンピューターに残されたメールや電子文書など15万件を詳細に調べ、経営陣、社員15人、元社員2人から聞き取りをした。
 その結果によると、一人の元社員は、研究のデザインや研究事務、統計解析、論文執筆などに参加してい た。少なくとも二つの臨床試験で、解析に使う患者の症例を決定する委員会に出席もしていた。しかし、この元社員はデータの操作を否定。また、元社員による データ操作を示す証拠は見つからなかったという。
 元社員は論文上、社名を伏せて肩書を当時非常勤講師だった「大阪市立大」としていた。その理由につい て、「大阪市立大の非常勤講師として研究に参加していたため、許されると思い込んでいた」と釈明したという。また、5大学の臨床試験の研究者は、元社員が ノ社の社員であることを「認識していた、あるいは認識してしかるべきだった」とした。
 元社員の上司やノ社の経営陣の一部は、元社員の試験への関与を認識していたが、経営陣の上層部は、元社員の日々の業務まで把握していなかったとした。

ノ社が5大学の臨床試験を奨学寄付金で支援していたことも判明。調査報告書は「ノ社は奨学寄付金が臨床試験の支援に用いられることを意図し、大学も認識していた」とした。
 一方、試験に深く関係した社員の多くが既に退職し、調査できていない社員もいた。元社員が所有するパソコンのデータは調査できていない。【河内敏康、八田浩輔】
 【ことば】

 ◇ノバルティスファーマ

世界140カ国以上に展開するノバルティス(スイス・バーゼル)の日本法人として1997年設立。医薬品の開発や輸入、製造、販売を行う。社員数は4417人(2013年1月現在)。12年の売上高は3234億円。

 ◇バルサルタン

ノバルティスファーマが商品名ディオバンで2000年に販売を開始した。発売後の02〜04年に東京慈 恵会医大や京都府立医大など5大学で臨床試験がされ、血圧を下げる以外にも脳卒中などに効果があると結論づけられた。だが府立医大の論文でデータ操作が明 らかになり、各大学がデータを検証している。

写し1写し2

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誰が改ざんを実行したのでしょうか?

2013年8月1日木曜日

バルサルタンの医師主導臨床研究に関するノバルティスファーマ社の公表

バルサルタンの医師主導臨床研究に関して

2013年7月29日

バルサルタン(製品名:ディオバン®)の医師主導臨床研究について、弊社では社内調査に加えて、4月より独立した第三者外部専門家による調査が行われてきました。このたび、外部専門家の調査が終了し、7月29日に記者会見を行いました。 つきましては本サイトにおいて、記者会見の冒頭で弊社社長が述べたお詫びと見解、ならびに調査報告書*(「バルサルタンを用いた5つの医師主導臨床研究におけるノバルティスファーマ株式会社の関与に関する報告書」)を公開します。

*この調査報告書には、第三者外部専門家による調査報告(第3章)が含まれています。これは、ノバルティスファーマの本社であるNovartis Pharma AG社から独立した調査を委託された第三者法律事務所により作成されたものです。

【社長記者会見要旨】

このたびは、患者さま、ご家族、医療従事者の皆さま、および国民の皆さまに大変ご心配とご迷惑をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
日本で2001年から2004年の間に開始された、バルサルタンの5つの医師主導臨床研究において、弊社の元社員が関わ り、かつ研究論文への開示が適切に行われていなかったことをお詫び申し上げます。これによって、日本の医師主導臨床研究の信頼性を揺るがしかねない事態を 生じさせたこと、また、これらの5つの研究の論文を引用して、バルサルタンのプロモーションを行ったことにつきましても、お詫び申し上げます。
弊社では、今回の事態に至ったことを深刻に受け止め、これまで社内調査、第三者による調査が行われてきました。このたび、第三者による、元社員を含めた弊社日本法人を対象とする調査が終了しましたので、結果をお伝えします。
この調査では、残念ながら真相を完全に解明するには至っておりません。弊社としては、この件については決してうやむやにせず、判明したことは誠実に皆さまにお伝えしたいと考えております。
先日の、京都府立医科大学の調査結果の発表によりますと、論文のデータに何らかの操作があったとされています。弊社はこの 発表について重く受け止めております。しかし、本研究が医師主導のため、データを持っていない弊社としましては、調査にも限界があります。7月16日、私 から京都府立医科大学に対して、協力して真相を解明したいと申し入れる手紙をお送りしました。
また研究に関わっていた弊社の元社員につきましては、本人はこれまで、弊社と第三者機関の10時間以上に及ぶ聞き取り調査 に答えているので、改めて大学の調査に応じる必要はないという立場でした。しかし、弊社としては、本人に対し、会社の調査だけではなく、大学の調査に協力 する重要性が増していることを伝えてきました。また7月16日には、社長名で本人に調査に協力するよう要請を行いました。その結果、最新の状況では本人が その重要性を理解し、大学による調査に応じることに前向きになっております。
弊社としては、今回の件で患者さまからも多数のお問い合わせをいただいており、誠に申し訳なく思っております。ただし、今 回問題となっている医師主導臨床研究は、バルサルタンの承認後に実施されており、降圧剤としてのバルサルタンの有効性、安全性は確認されております。この ことは、改めてご理解いただきたいと思います。
今回の医師主導臨床研究で検討された心血管系イベント(脳卒中、心筋梗塞など)の予防効果の研究は、海外では先行して実施 されていました。その後、海外では高血圧症の効能に加えて、心筋梗塞後の治療および心不全の治療薬として追加効能が認められました。そのような環境の中 で、日本でもバルサルタンが医師主導臨床研究の研究対象に取り上げられたものと理解しています。とはいえ、弊社の元社員がこれらの臨床研究に関与し、未だ に真相究明に至っていないことで患者さまが不安に思われていることにつき、大変申し訳なく思っております。
私たちは製薬会社として、高い倫理観を持って社会的責任を果たすことを求められています。今後、あらゆる調査に全面的に協力して真相の解明に当たり、私たちの責務として、二度とこのようなことが起こらないよう、再発防止を徹底してまいります。
患者さま、ご家族、医療従事者の方々、国民の皆さまからの信頼をいただけるよう、全社を挙げて不退転の決意で取り組んでまいります。
改めて、ご迷惑、ご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます。
公表写し報告書写し

ノバルティスファーマ社の公表

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結局真相はまだわからないのですね。