2013年9月11日水曜日

未解決研究不正事件 - 2013年8月18日時点

私の知る限り未解決の研究不正事件は以下のとおり。未解決の研究不正はたくさんある。まだ告発されていないもの、大学が組織的に隠蔽してきたもの、 被疑者が沈黙しているものなどいろいろある。きちんと解決しないとまずい。現在研究不正を防ぐために文科省や日本学術会議などで新しい不正防止策が検討さ れているが、現在進行中の事件も含めて過去の事例を分析し、不正調査制度の問題点を考慮して不正防止策を作ってほしい

(1)群馬大、筑波大、国立環境研究所などの事件 - 加藤茂明(元東大)の関連事件
先月加藤茂明元東大教授らのグループの論文43編で捏造・改ざんの不正があったとの予備調査結果が公表された。加藤は直接捏造などは実行しておらず、他の研究者が実行したと東大の調査委員会は考えている様子。
この事件をめぐってはH.K.(群馬大)、A.M.(筑波大)、J.Y.(筑波大)、Y.T.(国立環境研究所、2012年3月時点)、M.K.(東京医科歯科大学、2009年度時点)などの研究者にも疑惑がある。筆頭著者のリストはこちらを参照。端的にいって、H.K.A.M.らは捏造の実行者として疑われている。
彼らは現在沈黙したままで、東大も最終的な調査結果を公表していないし、処分もしていない。私は加藤だけが犠牲になって他が逃げ延びることがなければよいと思っている。加藤事件に関する告発は2012年1月に行われ、現在も調査が続いている。
(2)井上明久前東北大総長事件
もともと匿名(2007年)、顕名(2008~)で何度も告発されていたが、規定を無視し続けた東北大今年の3月頃にようやく告発の一部に対して第三者調査委員会を作って調査している。今月29日に名誉毀損裁判の判決が出る。裁判で井上の不正がどれだけ認定されるのか注目されている。
(3)M.E.群馬大学教授の不正疑惑
このサイトでM.E.の不正に関して告発したことやその内容を公表している。告発が2012年2月27日の消印で送付されているので、調査が行われているとすれば約1年半経過している。しかし、未だに調査結果は公表されていない。そもそも調査をやっているのか不明。
(4)九州大学の事件
このサイトで九州大学の研究者に対して不正疑惑の告発とその内容が公表されている。告発は2011年3月に行われ受理された。しかし、約2年5ヶ月以上経過した現在でも告発者に何の連絡もないという(関連)。
(5)大分大学医学部元学部長らの論文捏造疑惑
T.N.大分大学医学部元学部長やS.O.同大講師らの論文約20編で捏造疑惑が浮上し告発された。昨年3月30日付けで文科省が同大に調査を依頼、5月15日に調査委員会の設置が決定された。しかし、告発から約1年5ヶ月以上経過した現在でも何の公表もない。
(6)高井教行元大分大学医学部講師らの論文捏造疑惑
高井らの論文7編に画像の重複使用及び画像操作の疑惑が浮上し、大分大が調査委員会を設置したことが昨年12月の報道で発覚。高井らの論文は撤回され、高井は辞職した。現在調査結果の公表はない。
(7)R.M.大阪大医学系教授の盗用疑惑とその他
写し1写し2で R.M.大阪大医学系教授の盗用疑惑が指摘されている。ただ、これはまだ告発されておらず、指摘者に尋ねたところ他にもネタが見つかるかもしれないから今 はまだ告発しないとのこと。これは2011年1月頃に論文撤回ウォッチ(2012年1月閉鎖)が最初に指摘したので、発覚から2年7ヶ月以上経過してい る。
その他R.M.は肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療薬の主要特許を持ち、アンジェスMG関連)を設立。2004年にこの薬の臨床試験を実施した阪大病院の教授2名と医師3名が臨床試験の前に同社から未公開株を取得。「製薬会社の株式保有者が臨床試験をすることは違法ではないが、上場時、保有株の半数を売った教授もおり、大阪大は、倫理上の問題があるとして、ガイドライン作りを検討する委員会を設置することにした[1]」という。
2006年4月4日付けの朝日新聞によるとHGF遺伝子治療薬を組み込んだ薬を阪大病院の臨床研究で閉塞性動脈硬化症(ASO)の患者に使用[2]。22例中、約6割の患者で血管が新生され、病状が軽減されたという[2]。
しかし、2006年4月27日の朝日新聞で「血管再生の働きがある肝細胞増殖因子(HGF)を使い、足の動脈が詰まる患者を治療する臨床研究について、大阪大学病院の遺伝子治療臨床研究審査委員会(委員長・堀正二教授)は26日、効果の確証が得られなかったとする最終報告書案をまとめた。5月に文部科学、厚生労働両省に提出する。[3]」と報じられた。この臨床研究ではなぜかプラセボ効果を考慮していなかった。
この臨床研究はいったい何だったのだろう?まさか・・・。私見だが、臨床試験をやるプロがプラセボ効果を考慮し忘れることは通常ないと思う。違いますか?報告書p54によると臨床研究の統括責任者は(8)のT.O.で、R.M.も臨床研究に関与していた。
R.M.は他にバイオ・サイト・キャピタル株式会社創業
(8)T.O.大阪大医学系教授の論文多重投稿疑惑
写し3写し4写し5写し6写し7でT.O.大阪大医学系教授らの論文多重投稿が指摘されている。これは2011年2月頃に論文撤回ウォッチが最初に指摘した。なぜ告発されないかは不明。
(9)VART、SMART、Nagoya Heart Study - バルサルタン事件
バルサルタン臨床試験である上の3つはまだ調査結果が出ていない。KyotoやJikeiでは改ざんがあったと判明したが、誰が改ざんしたのかはま だわかっていない。上の3つは今年5月から調査を開始。噂ではもうすぐ調査結果が出るらしい。研究機関はやろうと思えばはやく調査結果を出せるのでは?
(10)小室一成東大医学系教授らの基礎研究の捏造疑惑
小室一成東大医学系教授らの画像捏造に関する疑惑が告発され、小室の旧所属機関の千葉大学で調査されている。告発サイトはこちらフォーブスでも報じられた。告発は2013年5月頃行われた。小室はVARTの代表者だが、この事件はそれとは別件。この件は日本の新聞・テレビはまだ報じていない。
(11)S.M.熊本大学教授らの基礎研究の捏造疑惑
Kyoto Heart Studyでエンドポイント委員を務めたS.M.にも捏造疑惑が指摘され告発された。告発サイトはこちら。昨年ノーベル賞を受賞した山中伸弥も疑惑論文の共著者になっている。私の記憶では2013年5月頃に告発された。この件はマスメディアはまだ報じていない。S.M.は2013年8月4日に高血圧学会学術誌Hypertension Researchの編集長を辞任し、(7)のR.M.阪大医学系教授が新編集長が決まるまで暫定的に編集長を務めることが公表された。S.M.がなぜ辞任したかは不明。
(12)H.T.東大医学系教授の捏造疑惑
H.T.東大医学系教授の論文に捏造疑惑が指摘されている。まだ告発されていないし、マスメディアも報じていない。2013年2月頃に2chへの書き込みで発覚。H.T.の妻はバイオリニストのI.K.。
(13)H.M.東北大加齢医学研究所教授の捏造疑惑
写し1写し2写し3H.M.の捏造疑惑が指摘されている。M.Y.東北大東北メディカル・メガバンク機構長も共著者。H.M.は准教授だったが2013年4月1日付けで教授に昇進。ネットの世界では容姿からアラレちゃんと呼ばれている。
・Molecular and Cellular Biology Vol.31 (1): 151. の訂正公告
・Molecular and Cellular Biology Vol.25 (21): 9360. の訂正公告
上の2つの訂正公告から不正疑惑が発覚した。告発されているかは不明。マスメディアの報道はない。
(14)国立循環器病センター、大阪大学、新潟大学の論文に関する指摘
写し1写し2写し3写し4で国立循環器病センター、大阪大学、新潟大学の論文にある事が指摘されている。写しの運営者が2012年12月から2013年1月にかけて指摘。告発されているのかは不明。日本のメディアでの報道はない。
(15)富山県立大学工学部のある研究者の論文への指摘
写しであることが指摘されています。これは昨年7月の指摘です。被疑者はでRetraction Watchでも報じられました同サイトが指摘したのは論文の訂正に関してです。指摘は2013年1月です。告発されているのかは不明。日本のメディアでの報道はない。
(16)山中伸弥への指摘
写しでノーベル賞受賞者山中伸弥が筆頭・責任著者を務める論文で不適切さが指摘されている。2013年3月頃に2chの指摘で発覚。告発されているのかは不明。メディアでの報道はない。

(17)慶應義塾大学血液内科への指摘
写しである事が指摘されています。特に写し1の青枠のものはなぜ8つ細胞が増えたのでしょうか?2011年9月に論文撤回ウォッチの指摘で発覚。告発されているかは不明。メディアの報道はありません。
(18)筑波大Y研究室への指摘
筑波大Y研究室の論文についてある事写し)が指摘されている。加藤茂明が著者になっていないものもあり、先月発表された予備調査結果に含まれていない可能性がある。加藤事件の告発者はこの件を告発していない。しかし2012年2月に情報提供写し)が筑波大にあったらしい。本調査が行われているのか不明。

著者の質問と加藤茂明事件告発者の回答(2013.8.26) 
(注) 日付は著者が都合により削除
(19)その他の研究機関
他にも告発されながら未解決の研究不正事件があるが、ネット上でのソースがないので紹介は控える。

参考
[1]読売新聞 2004.6.12
[2]朝日新聞  2006.4.4
[2]朝日新聞  2006.4.27

世界変動展望 2013.8.18

--
これだけあるんですね。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。