2013年12月27日金曜日

厚労委、千葉大の調査報告に異議 ディオバン論文不正

厚労委、千葉大の調査報告に異議 ディオバン論文不正

2013年12月25日23時10分


製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンに関する臨床研究の論文不正問題で、厚生労働省の検討委員会は25日、4回目の会合を開いた。滋賀医 科大、名古屋大、千葉大が報告した。「意図的なデータ操作は見いだせなかった」とまとめた千葉大の調査に対し、「データの食い違いの頻度が多く、ずさんな 研究だったと結論すべきだ」などの意見が出た。
 この日の検討委で、ディオバンの効果を調べた5大学の臨床研究についての調査が出そろった。京都府立医科大と東京慈恵会医科大、滋賀医科大の3大 学では不正や不適切なデータ操作があったとされている。千葉大と名古屋大は不正は確認されていないとした。千葉大の報告については「これだけ誤記があって は、科学研究としてありえない」などの意見が出た。
 検討委はさらに聞き取り調査を進めるかなどを検討するという。製薬企業からの奨学寄付金の具体的な用途など、実態をできる限り明らかにしていくとの方針が示された。

■調査を00年度まで拡大
 厚生労働省は25日、大学病院など臨床研究の拠点117施設に対し、2000~08年度に始めた研究についても、データ捏造(ねつぞう)など不正 が疑われたものがあったかどうか、報告を求めることを決めた。公費助成を受けていたか、結果が製薬企業の広告に使われていたかなどを報告してもらう。
 09年度以降の研究については8月に報告を求め、不適切な研究は137件だった。不正があった高血圧薬の研究は02年に始まったので、過去にさかのぼって調査するべきだとの声があり、時期を広げたという。


朝日新聞

写し
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VARTに関する千葉大の調査は私も怪しいと思っています。VARTは例えばディオバンが他の薬より心臓を保護する効果があることを示し、それに疑義が持たれていました。しかし千葉大の中間報告では修正したデータベースを用いて再解析をせず「不正なし」と結論。これは正当な調査とは到底いえません。実験をせず著者の主張したい結論を論文で主張するのと何ら変りません。厚労委から批判が出たのは千葉大の調査が保身のために十分でないことを見抜いているからでしょう。だから不正の調査は第三者機関がやった方がいいと思います。VARTの調査に関しては今後もどうなるかわかりません。

東大、51論文「不適切」 学位取り消しも 元教授グループ

東大、51論文「不適切」 学位取り消しも 元教授グループ

2013年12月27日05時00分


東京大は26日、同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)の研究グループの論文計51本について、「科学的な適切性を欠いた画像データが使用されていた」とする中間報告を発表した。来年中にも最終報告をまとめ、関係者の処分や研究費の返還も検討するという。
 東大が不正問題の調査で中間報告をするのは異例。「日本の学術研究の国際的な信頼も揺るがす大問題」(大和裕幸副学長)との危機感による。
 調査は、加藤元教授が同研究所に所属していた1996~2012年に発表された、加藤元教授や研究室のメンバーが著者になった論文165本が対象。不適切とされた51本のうち43本は画像の捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正の疑いがあり「撤回が妥当」と認定し、8本は「訂正が可能」とした。すでに13本は撤回されている。
 51本の論文には共著者を含め約200人の研究者が関与していた。さらに聞き取り調査などを進め、不正に関与した者を特定し、関与の度合いを認定する。処分は別の組織で検討するが、大学を離れた研究者も含む。学位取り消しの可能性もあるという。
 一連の研究は約15年間で30億円以上の公的研究費が投じられ、「不正にかかわった研究費は返還せざるを得ない」とした。調査結果を資金の提供機関に伝え、返還などの判断を求める。
 報告書では、問題の背景として「国際的に評価の高い学術誌などを通じて顕著な研究成果を発表することが重視される一方、実験データの管理や論文内容のチェックが疎(おろそ)かにされていた」ことなどを挙げた。
 12年1月に「論文データに加工の疑いがある」という学外からの指摘を受け予備調査を実施、13年9月末から本調査を進めていた。加藤元教授は 「監督責任がある」として12年3月末に辞職。元教授は不正があったことを認めたうえで、「自分は指示したこともやったこともない」と調査に答えたとい う。
 (今直也)
 ■結論ありき、画像捏造
 論文に掲載された画像は実験結果を示す重要な証拠だ。しかし、画像処理を加えることで結論に合うように操作することができる。
 東大の調査では、51論文で確認した不適切な画像データ処理は計210カ所あり、重複も含め(1)貼り合わせ78カ所(2)流用・転用97カ所(3)不掲載・消去35カ所(4)過度な調整28カ所、に大別できたという。
 たとえば、画像の貼り合わせは、複数の画像データをつなぎ合わせて、あたかも実験結果で得られた画像のように見せかけていた。拡大したところ、不自然な線などが見つかった。提出させた画像の操作履歴から、画像をつなぎ合わせたものと分かったという。
 ■中間報告まで2年、遅すぎる
 《解説》東大が研究不正を指摘する申立書を受理したのが2012年1月。2年が経とうとしているのに、中間報告では、誰がどんな不正を働いたのか認定ができていないという。不正防止への対応が遅すぎる。
 東大側は調査が長引く理由を、論文数が多く、関係研究者が約200人にものぼる複雑さを挙げる。それにしても2年は長い。
 文部科学省特別委員会は06年、研究不正対応のガイドラインを作った。研究者側に疑惑を晴らす説明責任を課し、「疑いが覆されないときは、不正行為と認定される」とした。今回の調査では、論文に使った画像データの検証で、画像の貼り合わせなど明らかな不正を確認できている。
 文科省ガイドラインでは不正と認定された場合、公的研究費の使用中止や返還、新規申請制限などの措置を定めている。対応が遅れれば、このような制 裁措置も意味がなくなる。いま、各地で研究不正を疑う指摘が相次いで出ている。東大で真相解明が遅れることは、悪い先例になりかねない。
 (編集委員・浅井文和)

画像

朝日新聞

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東大が不正実行者の特定をきちんとやろうとする姿勢は評価します。これまで琉球大や京都府立医大、独協医大などで不正実行者の特定が十分でなくトカゲの尻尾切りで終わった例も珍しくなかったからです。しかしまだ不正実行者の特定ができていなかったとは。予備調査開始から約2年なので不正実行者の特定も含めてもうとっくに終わっていると思っていました。来年中に最終報告という東大の姿勢はのんきすぎるというか、だらだらやってるだけと言われてもしかたないでしょう。

2013年12月26日木曜日

東大51論文「科学的適切性欠く」 研究不正で中間報告

東大51論文「科学的適切性欠く」 研究不正で中間報告

2013年12月26日21時17分


 【今直也】東京大は26日、同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)の研究グループの論文計51本について、「科学的な適切性を欠いた画像データが使用されていた」とする中間報告を発表した。来年中にも最終報告をまとめ、関係者の処分や研究費の返還も検討するという。
 東大が不正問題の調査で中間報告をするのは異例。「日本の学術研究の国際的な信頼も揺るがす大問題」(大和裕幸副学長)との危機感による。
 調査は、加藤元教授が同研究所に所属していた1996~2012年に発表された、加藤元教授や研究室のメンバーが著者になった論文165本が対象。不適切とされた51本のうち43本は画像の捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正の疑いがあり「撤回が妥当」と認定し、8本は「訂正が可能」とした。すでに13本は撤回されている。
 51本の論文には共著者を含め約200人の研究者が関与していた。さらに聞き取り調査などを進め、不正に関与した者を特定し、関与の度合いを認定する。処分は別の組織で検討するが、大学を離れた研究者も含む。学位取り消しの可能性もあるという。
 一連の研究は約15年間で30億円以上の公的研究費が投じられ、「不正にかかわった研究費は返還せざるを得ない」とした。調査結果を資金の提供機関に伝え、返還などの判断を求める。
 報告書では、問題の背景として「国際的に評価の高い学術誌などを通じて顕著な研究成果を発表することが重視される一方、実験データの管理や論文内容のチェックが疎(おろそ)かにされていた」ことなどを挙げた。
 12年1月に「論文データに加工の疑いがある」という学外からの指摘を受け予備調査を実施、13年9月末から本調査を進めていた。加藤元教授は 「監督責任がある」として12年3月末に辞職。元教授は不正があったことを認めたうえで、「自分は指示したこともやったこともない」と調査に答えたとい う。

朝日新聞
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ようやく本調査結果の公表。約2年かかりました。しかしまだ中間報告。最終報告までどれだけかかるのでしょう。

2013年12月20日金曜日

コピペ・捏造、論文にあらず 不正対策に大学本腰

コピペ・捏造、論文にあらず 不正対策に大学本腰

2013年12月20日10時00分


【渡辺志帆】論文盗用やデータのでっちあげなど、大学での研究不正が後を絶たない。学術成果を無償でインターネット上に公開する動きが世界で進んで いることが、今まで以上に不正を犯しやすい環境を生み出しているようだ。不正発覚によって大学が受けるダメージは計り知れないと、各大学は対策を本格化さ せている。
■発表前にネット照合
 「博士論文を電子媒体化する作業が走り始め、非常に危険な領域に入りつつある」
 11月に和歌山市で開かれた国立大学協会総会で、名古屋大(名古屋市)の浜口道成総長は、約80人の学長らに呼びかけた。
 他人の著作を盗用し、自分のもののように発表することを「剽窃(ひょうせつ)」という。名古屋大は同月、発表前の論文をインターネット上の著作や学術誌データベースと照らし合わせ、過去に公表された著作物と似ていないかを調べる剽窃対策サービスを全学で導入した。4月に学位規則が改正され、博士論文の公表方法が、従来の「印刷」から「インターネットの利用」に変わったことも受けての対応だ。
 博士論文は、かつては大学や国立国会図書館に足を運ばないと読めなかった。今後は、大学内の学術成果を集めて管理する電子サービス「機関リポジトリ」や国立国会図書館のサイトで無料公開される流れがさらに加速する。そうした中、研究者が、罪悪感もないまま「コピー・アンド・ペースト(切り張り)」して作った論文がひとたびインターネット上に出回れば、大学が受けるダメージは計り知れない。
 名古屋大も導入した世界最大級の剽窃対策サービス「iThenticate」の国内販売担当者によると、不正研究で大学がこうむる損害は、事実関 係の調査費や補助金の打ち切りなどで、1件あたり約52万5千ドル(約5400万円)と試算されるという。名古屋大の剽窃対策サービスは年300万円のコ ストがかかるが、藤井良一副総長は「お金には換えられない、大学の信用が失われるリスクを避ける必要がある」と話す。
 倫理教育に力を入れる大学もある。10月に論文不正で開学以来初めて博士号の取り消し処分をした早稲田大東京都新宿区)。毎年約1万人に上る学部新入生らは、情報リテラシーを学ぶオンライン講座を受講する。合格しないと大学のネットワークIDを使えなくするなど、「倫理教育は他大学に比べても早くからやってきた」という。
 だが、同大の大野高裕教務部長は「幼い頃からインターネットに親しんだ今の学生は、剽窃が悪いことだとよくわかっていない者が多い」。一部のクラ スで、リポートなどの課題提出物を昨春から本格導入した剽窃検知システムにかけたところ、およそ1割が他人の著作と30%以上似ているという結果が出た。 これは「教員が経験的に盗用を疑うレベル」という。
■データを長期保存
 研究データのでっちあげである「捏造(ねつぞう)」も、深刻な研究不正の一つだ。
 東京大学病院内に設けられ、全国の研究者や学生ら約30万人が利用登録する「大学病院医療情報ネットワーク」(UMIN)は11月、臨床試験の不正予防などを目的に、すべての研究者が利用できる症例データリポジトリの運用を始めた。リポジトリでは、患者の個人情報を伏せた臨床研究症例のデータを無料公開。データの長期保存が可能になるため、資料が廃棄されて検証できない事態を防ぐことができ、研究者間の相互チェックも可能にする世界初の試みという。
 文部科学省系の独立行政法人科学技術振興機構(JST)の集計によると、1977年から2012年10月までに国内で発覚した研究不正は114件。このうち、6割が盗用やその疑いがある不適切な引用で、3割を捏造や改ざんが占めた。人文社会科学系の不正は9割が盗用型であるのに対し、自然科学系は半数以上が捏造・改ざん型だった。
■背景に電子化・雑誌高騰
 研究成果をインターネットで無料公開する「オープンアクセス」の動きは世界的な流れだ。
 背景には、1980~90年代の電子化やインターネット普及と、学術雑誌高騰がある。オープンアクセス化の動向に詳しい東大教育企画室の船守美穂 特任准教授によると、冷戦下の研究開発競争で研究者が増え、発表される論文と学術雑誌数が急増。学術雑誌の購読料は年約10%ずつ値上がりし、大学図書館 や研究予算を圧迫するようになった。
 こうした事態に、欧米の学術界は普及し始めたばかりのインターネットを使って対抗。大学や学会の「リポジトリ」上で学術成果を無料公開したり、独自の無料電子ジャーナルを発刊したりする「オープンアクセス運動」を展開した。
 当時の円高の影響で、日本は欧米ほど雑誌高騰の弊害を受けなかった。国がオープンアクセス促進をうたうのは11年の第4期科学技術基本計画からだが、国内の環境は整いつつある。
 船守特任准教授は「オープンアクセスは不可逆の流れ。博士論文のネット公表義務化も、研究成果を多くの人に見てもらえるプラスの面から捉えるべき だ」と話す。ただ、特許侵害や研究不正など課題もあるとして、「どうすれば効率よく学術情報を共有・流通させ、新しい知の創出の循環を作り出せるか、博士 論文公表の議論をきっかけに、考えていく必要がある」と話している。

朝日新聞
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改善が進むとよいです。

2013年12月18日水曜日

バルサルタン:臨床試験疑惑 調査出そろう 「効果あり」で不正 結論、データ操作に相関

バルサルタン:臨床試験疑惑 調査出そろう 「効果あり」で不正 結論、データ操作に相関

毎日新聞 2013年12月18日 東京朝刊


バルサルタンの臨床試験と大学の調査結果
バルサルタンの臨床試験と大学の調査結果

降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑は、千葉大が17日に中間報告を公表したことで、試験を実施した5大学の調査結果がひとまず出そろった。別の降圧剤とバルサルタンの 効果に大差はなかったと結論付けた2大学はデータ操作を否定し、特別の効果があったとする3大学は不正を示唆しており、試験の結論とデータ操作との相関関 係が浮き彫りとなった。調査を継続する大学もあるが、大学による調査が一定の結論に達したことで、今後の焦点は国の対応に移る。【八田浩輔、河内敏康】
 どの試験も、バルサルタンと他の降圧剤との比較が目的だった。全ての試験に販売元ノバルティスファーマの同じ社員(5月に退職)が関与していたが、元社員の存在とデータ操作との関係は解明されなかった。
 データ操作が判明した京都府立医大と東京慈恵会医大の試験は「他の降圧剤と比べて、脳卒中や狭心症のリスクを大幅に減らす」と結論付けていた。これらの結果は、他の試験と比べて際立って多く広告に使われた。だが両大学の調査で、バルサルタンの効果を強調する不正の痕跡が見つかった上、元社員に統計解析などを任せていたことが分かった。腎臓を守る作用があるとした滋賀医大でも、データ操作が示唆された。
 一方、名古屋大、千葉大は不正を否定する中間報告を公表。データを検証すると一部で不整合があったが、「意図的な操作ではない」と判断された。両試験は、バルサルタンに心臓を守る働きがあると指摘したが、脳卒中の予防など試験の主目的だった評価項目では別の降圧剤との間に差がなかった。元社員の関与も限定的だった。
 誰がデータ操作したのかについては、各大学で判断が分かれている。慈恵医大は元社員の不正への関与を示唆し、京都府立医大は元社員と共に大学の研究者にも疑いの目を向けた。滋賀医大は元社員の部下も参加していたが、大学は研究者による操作を疑っている。
 ノ社から5大学に提供された計11億円を超す奨学寄付金についても詳細な使途は明らかになっていない。
 厚生労働省は、誇大広告を禁じた薬事法に基づく調査を進めている。大学による任意調査の限界を指摘する声は強まっており、11月には民間団体が東京地検に告発状を提出している。

 ◇千葉大「不正なし」

バルサルタンの 臨床試験疑惑で、千葉大の調査委員会は17日、「現時点で、意図的にデータ操作が行われたことを示す内容は見いだせなかった」とする中間報告を発表した。 患者108人分について論文に使ったデータとカルテを照合したところ、各項目で5〜8%の不一致があったが再解析した結果、データ操作されたとは言えない と説明した。
 大学側は「あくまで内部的な調査だ」としており、データの照合作業を依頼した第三者機関の調査結果を待って最終報告する。
 千葉大の試験にはノ社の社員(5月に退職)が参加していたのに、論文では伏せられていた。ノ社から受けた奨学寄付金についても記載がなく、調査委は「説明が不十分だった」と批判した。千葉大の論文責任者は小室一成教授(現在は東京大教授)。【河内敏康、田中裕之】
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 ■ことば

 ◇バルサルタン臨床試験疑惑

ノバルティスファーマ(東京)の降圧剤バルサルタンに 血圧を下げるだけでなく、脳卒中予防などの効果もあるかを5大学が臨床試験をして確かめた。ノ社は各論文を大々的に宣伝に利用してきたが、今年に入って、 社員が全試験に参加していたことや研究チームに奨学寄付金を出していたことが発覚した。さらに東京慈恵会医大などの試験ではデータ操作されていたことも分 かった。ノ社は謝罪に追い込まれたが、データ操作への関与は否定している。バルサルタンは累計で1兆2000億円を売り上げてきた大ヒット薬。
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千葉大の調査は正当だったのでしょうか。

データに違い「意図的操作なし」 千葉大、高血圧薬論文

データに違い「意図的操作なし」 千葉大、高血圧薬論文

2013年12月17日23時33分

【今直也】製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンの効果を調べた臨床研究の論文不正問題で、千葉大は17日、8%のデータに食い違いが判明したものの、「意図的なデータ操作は見いだせなかった」との中間報告を発表した。第三者機関に解析を依頼し、その結果をもとに最終的な結論をまとめる。

これで問題とされた5大学の調査報告がそろった。千葉大と名古屋大は不正は確認されず、京都府立医科大、東京慈恵会医科大、滋賀医科大では不正や不適切なデータ操作があったとされている。
 千葉大の調査は、同大付属病院の高血圧の患者108人の統計解析に使ったデータとカルテを比べた。検査データで5~8%、血圧値では全測定値1512件のうち65件(4・3%)の食い違いがあった。大学側は、この食い違いが意図的か、単純ミスかは、現時点で判断できないという。
 研究は、小室一成元教授(現東大教授)らが高血圧患者1021人を対象に実施した。ディオバンは、ほかの高血圧治療薬に比べ脳卒中などを防ぐ効果は変わらないが、心臓の肥大などを防ぐ効果が高いなどとする論文を2011年に日本高血圧学会誌に掲載した。
 ノバルティスによると、研究室は2002~09年の間に同社から計2億4600万円の奨学寄付金を受けた。論文には資金提供を受けていたことの記載はなく、元同社員が「大阪市立大」の肩書で参加していた。報告書は「記載内容(説明責任)が不十分であると言わざるを得ない」と指摘した。小室教授は「最終報告が出るまではコメントは差し控えたい」としている。


朝日新聞
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千葉大は「意図的なデータ操作は見いだせなかった」と主張したのにデータの「
食い違いが意図的か、単純ミスかは、現時点で判断できない」としています。これは矛盾しています。不正はなかったとアピールしたいんでしょうね。

2013年12月16日月曜日

(がん新時代:61)「がんは放置してもいい」は本当か 主張と反論

(がん新時代:61)「がんは放置してもいい」は本当か 主張と反論

2013年12月15日05時00分

◇がん患者力
 医師の近藤誠さんが書いた「医者に殺されない47の心得」は、今年のベストセラーとなりました。しかし、近藤さんの「がんは放置してもいい」という考えには、ほとんどのがん専門医が「助かる命も救えなくなる」と批判しています。近藤さんの主張と、第一線の腫瘍(しゅよう)内科医である勝俣範之さんの反論を紹介します。
 ■「医者に殺されない47の心得」の著者 慶応大医学部講師・近藤誠さん
【主張】
・がんは発見時に転移が潜む「本物」と、転移しない「がんもどき」に二分類される
・「本物」は手術でも抗がん剤でも治らない。「もどき」は治療が不要。よって、無症状なら治療はしなくてよい
・検診を受ければ死亡数が減るという根拠はない
抗がん剤臨床試験の生存曲線は形が不自然で、人為的操作があったと推測できる
生活の質を上げるための治療は必要
 ■自覚症状なければ治療は不要
 がんは検診で早期発見されても、その時点で転移が潜む「本物」と、転移しない「がんもどき」に分けられます。本物は基本的に抗がん剤で治らず、手術はがん細胞の増殖を速める恐れがあるから治療は無意味です。「もどき」は転移しないから治療の必要がありません。どちらにしても、自覚症状がないなら何もしなくていい。これが「放置療法」です。
 今のがん診療は、早期発見して治療したら治るという前提で組み立てられています。しかし、根拠がありません。
 外国の研究で、肺がんの検診を受けた人の方が、受けていない人より死亡数が多いとの報告があります。早期発見で余計な手術や抗がん剤治療を受けたせいでしょう。ほとんどの国では肺がん検診は行いません。乳がんも、検診を受けても亡くなる人の数が減らないという報告があります。前立腺がんは死亡数の差がありません。
 一般的に早期だと「もどき」の割合が多いのです。マンモグラフィーで見つかる乳がんは99%「もどき」なので、私は「診断を忘れなさい」と言って帰します。これまで検診でさまざまな部位にがんが見つかった150人以上を様子見してきたが、ほとんど転移が出ません。
 まれに「本物」の場合もあります。5ミリの乳がんを放置した私の患者さんは、数年後にがんが大きくなり、その後転移も出てきて、18年後に亡くなりました。がんの成長速度から、初発病巣が0・04ミリのときに転移していたと推定されました。
 ただ、すべてのがんを放置するわけではありません。大腸がんによる腸閉塞(へいそく)など、生活の質を下げる自覚症状があるなら、治療すれば長生きできることもある。肝がんは「もどき」でも早期発見に意味がないとはいえません。乳がんの「もどき」も乳房の皮膚を破る場合は部分切除を勧めることもあります。
 抗がん剤に延命効果があるとした臨床試験の結果には、人為的操作の疑いがあります。多数の患者さんをきちんと追跡すると、生存曲線は下に凸になるはずですが、不自然に持ち上がっている。転移患者は多くが数年以内に亡くなるのに、追跡できなくなった人を「生存」とするから生存率が落ちないのです。
 乳がん抗がん剤ハーセプチンも生存期間は延びません。臨床試験の生存曲線に人為的操作が疑われます。薬が効いて元気なのではなく、「もどき」だったのです。ほかの分子標的薬も、肺がんなど固形がんには無力です。ただし、血液のがんや睾丸(こうがん)のがんなどは、抗がん剤で治る可能性があります。
 国内外の論文分析と、患者さんの症例をもとに主張しています。症例報告は科学的根拠が低いと批判されるが、放置しても転移しない例が一つでもあれば強力な反論材料になるのです。
 4月にセカンドオピニオン外来を開き、1300人来院しました。無症状の人は治療しない方がいいと伝え、生活の質が向上しそうなら治療方法を示します。決めるのは患者さんですが、最良の結末になることを願います。
 (聞き手・小林舞子)
    *
 慶応大医学部卒。83年から同放射線科講師。米国留学後、乳房温存療法を国内に広めた。65歳。
 ■第一線の抗がん剤専門医 日本医科大武蔵小杉病院教授・勝俣範之さん
【反論】
・がんは「がんもどき」と「本物のがん」に二分類はできない
・過剰治療の側面はあるが、治療しなくていいがんかどうかは見極められない
・検診による過剰診断を示すデータはあるが、検診の全否定にはつながらない
・「臨床試験の生存曲線は人為的に操作された」という主張に科学的根拠はない
・放置療法により助かる命も助からないこともあり、この主張は危険
 ■一部患者に当てはまる「仮説」
 近藤先生は、がんには「がんもどき」と「本物のがん」しかなく、積極的な手術や抗がん剤は不要、と主張しています。面白い説ですが、これは一部の患者さんに当てはまる「仮説」です。
 がんの治療には色々な考え方、選択肢があるということを提案した点では、近藤先生の主張は評価できると思います。ただ、医学的データを近藤先生の 個人的な偏った見解に基づいて極端に示しており、患者に混乱をもたらしている点は注意が必要です。近藤先生が本で書かれている主張を「すべて正しい」と判 断するのではなく、「一部の患者さんに当てはまる」と読むと、理解しやすくなると思います。
 がんに積極的な治療が行われているのは、こうした治療に効果のあるがんが確実に存在するからです。一部の患者さんには、過剰治療になるかもしれませんが、どんながんなら手術や抗がん剤が不要なのか、まだよくわかっていないのが現状です。
 検診による過剰診断を示すデータがあることも確かです。それでも、一部の研究結果をもって、検診の有効性をすべて否定することにはなりません。最近、乳がん検診で過剰診断が行われていることがわかってきましたが、検診をすべてやめた方がいいとの見解にまでは至っていません。
 現在、遺伝子のタイプを調べて積極的な治療の必要の有無を見極めようという研究が進んでいます。例えば、乳がん抗がん剤ハーセプチンは特定の遺伝子に変異があるがん患者さんには非常に有効で、生存期間が大幅に延びました。
 近藤先生がハーセプチン臨床試験について「生存曲線がおかしい。人為的操作が加わったと思われる」と主張しているのは、全く根拠がありません。承認に関わる臨床試験(治験)のデータは国による立ち入り調査も行われるため、人為的操作を行える隙がありません。
 「放置療法の勧め」という言葉を聞いたときは、本当に驚きました。近藤先生の元に通う患者という一部の偏ったデータに基づいているわけで、それは科学的根拠になりません。
 インフォームド・コンセントは、患者さんの自己決定が大切と言われますが、正しい情報を提供されることが大前提です。5ミリの早期の段階で乳がんが見つかった近藤先生の患者さんも、手術をすれば、90%以上の確率で治ったはずです。正しい情報をしっかり伝えられた上での自己決定だったのか、疑問です。
 進行がんにやみくもに抗がん剤を使うのは、私も反対です。そういう意味では放置療法もやはり、一部の患者さんには当てはまるのです。ただ、「放置すべきだ」という一方的な言い方ではなく、正しい情報提供と、患者さんの意向を尊重する良いコミュニケーションが大切です。
 放置療法は、近藤先生の個人的な考えによる「仮説」です。患者さんやその家族は、放置することの危険性を十分に理解してほしいと思います。
 (聞き手・岡崎明子)
    *
 富山医科薬科大卒。国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科外来医長を経て現職。50歳。
 ◆日本対がん協会から
 がんの経験者が自らの病気について語る、とはどういうことでしょうか。
 今月初旬の土曜日、東京・秋葉原でがん経験者、医療関係者、国の政策担当者、メディア関係者が集まり「キャンサー・サバイバー・フォーラム」(日本医療政策機構、キャンサーネットジャパンなど主催、日本対がん協会など後援)が開かれました。
 「職場では後遺症も含めがんを知ってほしい。患者もがんを言い訳にしない」(清水敏明さん=舌がん経験)、「情報が得られず退院後に苦労した。情 報は貴重、シェアすることも大切」(岸田徹さん=胎児性がん経験)、「婦人科のがんは偏見をもたれやすい。事実を訴えていくことが使命と思う」(麻美ゆま さん=境界悪性腫瘍経験)と重みのある発言が続きました。
 ろう者で乳がん経験のある皆川明子さんは「医師とのコミュニケーションに不安がある。筆談や身ぶりでは情報量も限られる。すべての人が安心して治療を受けられる社会にしたい」。
 初めて講演台に立つ人もいます。嗚咽(おえつ)しながらも明るく振る舞い、命の大切さを訴えてました。
 阿南里恵さんは23歳で子宮頸(けい)がんを発症。人には同じ苦しみをさせたくないと講演を始め、日本対がん協会でがん征圧に向け奮闘中です。「講演活動で人生が大きく変わった。多くの出会いがあり、国のがん対策推進協議会にも加わっている。皆さんも勇気をもって発信してください」
 「がんを知って、がんの偏見をなくそう!」と宣言し、幕を閉じました。
 (協会事務局長・塩見知司)

朝日新聞
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真偽はどうでしょう。

2013年12月12日木曜日

研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論

研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論

毎日新聞 2013年12月12日 東京朝刊

 生命科学の研究不正疑惑が後を絶たない。日本分子生物学会(会員数約1万5000人)は今月、3日間にわたるフォーラムを神戸市で開き、防止策などを議論した。だが、延べ10時間近い議論は紛糾、「性善説」に基づく対策の限界も明らかになった。

 ●不安定な倫理基盤
 研究者にとって論文は業績の指標。競争が激しい生命科学分野では、データの改ざんや画像の使い回しといった不正がたびたび起きてきた。画像の加工が簡単にできるソフトの普及が、不正を招きやすくしているとの指摘もある。
 「特殊な一部の人の問題ではなく、我々が抱える内部構造の欠陥が背景にある。生命科学研究は急速に進展 したために倫理基盤が不安定だったのかもしれない。自らを律し、不正への対応を現場から考えたい」。同学会研究倫理委員の篠原彰・大阪大教授は、フォーラ ムを企画した意図を説明する。
 きっかけは、東京大の加藤茂明・元教授のグループによる不正。加藤氏は総額20億円に上る国の大型研究プロジェクトを主導しており、同学会でも若手向けの教育責任者だった。このことも関係者を驚かせた。
 ●10%が「目撃、経験」
 議論の前半は「不正をどう防ぐか」が中心。学会の全会員に実施したアンケート結果をめぐって意見を交わ した。この調査は回答者の10・1%が「所属する研究室内で、捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正行為を目撃、経験した」という内容で、事実なら不正の常 態化を示す深刻な状況だ。
 「回答率(7・9%)が低い。数字が独り歩きするのは危険」という懐疑的な意見の一方で、「皮膚感覚ではもっと多い」という指摘もあった。倫理教育の充実を、という意見には異論がなかったものの、規制や罰則の強化で抑止できるとの提案には賛否両論の意見が出た。
 高橋淑子・京都大教授は「基礎研究がビジネスのように過度に競争的になっている。日常から成果を開示 し、互いに議論する努力が不幸な事例を防ぐ」と、自浄作用に期待を込めた。論文を掲載する英科学誌ネイチャーの編集者も、論文の審査体制を強化したことを 報告しながら「出版の原則は(研究者への)『信頼』だ」と強調した。
 だが会場からは、これらを「理想論」と断じ、厳罰化を求める意見が出た。発言者は「不正な論文で得をする人の後ろには、競争的資金やポストを逃す人がいる」と訴えた。
 ●「身内」調査に限界
 不正疑惑が浮上した後の対応について議論した後半では、研究者の所属組織に調査を委ねる現行システムの 「限界」も指摘された。加藤元教授のケースでは、東京大が学外の告発を受けて昨年1月に調査を始めたが、2年近くが経過した今も結果は公表されていない。 降圧剤バルサルタンを巡る不正疑惑では、責任者が所属していた京都府立医大は最初「不正はない」との内部調査結果をまとめたが、関係学会の要請で再調査し た結果、データ操作が判明。こうした「身内」による調査は公正性を疑われかねず、米政府が設置している研究公正局(ORI)のような公的組織を設置すべき だとの意見もある。
 学会研究倫理委員長の小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授は「一定の確率で出る(不正)事案には共通の 基準で対応すべきだ。その場合は第三者機関が必要」と提案。中山敬一・九州大教授も「日本版ORIに調査を主導する専門官を置き、裁判員裁判のように調査 員を委嘱すればいい」と賛同した。
 これに対し、学会理事長の大隅典子・東北大教授は「取り締まる第三者機関があるのは末期的だと思う。できればそこに至る前に食い止めたいというのが個人的な意見」と話した。学会は今回の議論を倫理教育に反映させるほか、ホームページで議事録を公開し、科学界以外にも広く議論を呼びかけたいとしている。【八田浩輔】
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 ◇加藤茂明・元東京大教授グループの論文不正問題

東京大分子細胞生物学研究所を昨年3月に退職した加藤元教授のグループが1996年以降に発表した論文 43本について、東大の調査委員会がデータ画像の改ざんなどの不正を確認したと今年7月、報じられた。論文のテーマはDNA複製の仕組みなど多岐にわた る。論文執筆には16年間で20人以上が関わっていた。加藤氏は不正への直接関与は認めていないが、調査委は監督責任を指摘している。

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研究公正局は必要でしょう。