2014年1月18日土曜日

臨床改ざん疑惑、厚労省が告発者名を漏洩 研究責任者に

写真・図版
内部告発をめぐる情報漏洩の構図

 アルツハイマー病の治療法確立を目指す国家プロジェクトJ―ADNI(アドニ)」を巡り、厚生労働省が臨床研究データの改ざんを指摘する実名入りの内部告発メールを無断で告発対象の研究チームの責任者に転送していたことが分かった。内部告発者の人権を著しく損なう行為で、国家公務員法守秘義務)や内規に触れる可能性もある。


 厚労省が国家プロジェクトを守るため疑惑をもみ消そうとしたとの疑念も招いており、厚労省の調査への信頼が揺らぐのは必至だ。
 厚労省認知症・虐待防止対策推進室によると、担当専門官に「改ざんが数十例ある」というメールが届いたのは昨年11月18日。J―ADNI事務局側がデータの書き換えを指示した文書と、その通りに書き換えられた検査記録が添付されていた。専門官は翌日、「研究チーム内で対処すること」と判断し、代表研究者の岩坪威東大教授にそのままの文面と添付資料をメールで送ったという。
 朝日新聞が改ざん疑惑を報じた今月10日、岩坪教授は研究者らからの問い合わせに告発者名を伝えて性格を批判し、告発内容に根拠はないとの認識を示した。
 厚労省の漏洩(ろうえい)によって告発者の名が業界内で知られる事態となり、告発者は取材に「私が悪者で研究の信頼性を損なわせたという評価が研究者の間に広まった。名誉毀損(きそん)だ」と主張。「厚労省が疑惑をもみ消そうとしているのではないか」と話している。
 国家公務員法は職務上知り得た秘密を漏らすことを禁止。国の公益通報者保護法のガイドラインは、内部告発者を守るための基本的な事項として「通報者が特定されないよう十分に配慮する」と明記している。
 朝日新聞の取材を踏まえ田村憲久厚労相は17日の記者会見で漏洩の詳細に触れなかったものの、告発メールへの対応について「(本人の)同意を得ないで確認作業に入った。適切ではなかった」と語った。内部告発者保護に詳しい中村雅人弁護士は「実名を伝えないのは最低限のルール。誰も通報しなくなり不正をただす機会が失われれば、国民に不利益になる」と指摘する。(渡辺周、月舘彩子)
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 〈内部告発者保護〉 内部告発者への報復を禁じる公益通報者保護法は06年に施行された。不正を告発しやすくし、公益を守るのが理念。厚労省は08年に内部告発をした自治労共済職員の名を自治労側に伝える問題を起こし、職員4人を処分した。告発者は国家賠償を求め提訴し、係争中だ。

渡辺周、月舘彩子
2014年1月18日11時12分
朝日新聞

写し.

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