2014年10月5日日曜日

研究不正疑惑、東北大が告発不受理 外部調査見送る

井上明久前総長らによる論文で使い回しの疑いが指摘された画像

東北大の 井上明久前総長の研究不正疑惑をめぐり、複数の論文で同じ画像が使い回されている疑いを指摘した告発書を、大学側が受理せず、本格的な調査をしないと決め ていたことがわかった。大学幹部らによる調査で「不正ではない」と判断し、外部識者のいる調査委員会にゆだねるのを見送った。
 告発書は東北大の斎藤文良名誉教授と矢野雅文名誉教授の2人が、昨年11月に提出していた。その中で、2001年に井上氏らが発表した論文に不正の疑いがあると指摘。金属を電子顕微鏡で撮影するなどして得たとされる画像が、1999~00年発表の別の論文と同じだったり、極めて似ていたりすると告発した。
 論文に掲載された金属の作製条件は、それぞれ異なるため、同じ画像になることはあり得ないという。このほかにも、別の論文と同じものに見えるデー タがあり、告発書は「論文全体が極めて不自然。写真を取り違えたなどの単純ミスというより、新しい実験データに基づいて書かれた論文を偽装した研究不正が 強く疑われる」とした。
 これに対し、大学側は9月16日付の文書で、斎藤氏らに回答した。指摘については「表示の誤りである可能性が高い」としつつも、11年に別の人物 から似た内容の告発があったときの調査で「研究不正にはあたらないと確認された」と説明。このため、「告発を受け付ける必要はないと判断した」という。
 東北大は内部規定で、研究不正の告発を受けた場合には、学外の識者らでつくる調査委を設けることになっている。一方で、告発への「初期対応委員会」を理事や副学長らで設置することを、井上氏の疑惑が指摘され始めて以降の09年に決定。今回の告発の不受理は、この委員会が決めた。
 「誤り」を認めつつ「不正ではない」と判断した理由について、東北大広報課は朝日新聞の取材に「秘密保持となっているため、お答えできない」としている。(小宮山亮磨)

■不正告発への「初期対応委員会」メンバー(09年6月の「理事裁定」で決定)
①研究を担当する理事又は副学長
コンプライアンスを担当する理事又は副学長
③被告発者等の所属する部局の長
④広報を担当する理事又は副学長
⑤学外の専門的知見を有する者(研究を担当する理事又は副学長が必要と認めた場合)
⑥その他研究を担当する理事又は副学長が指名する者
 〈井上前総長の研究不正疑惑〉 井上明久氏は、丈夫でさびにくいという特徴を持つとされる特殊な金属の世界的権威で、06年から12年まで東北大総長を務めた。
 07年に匿名の投書で研究不正が指摘されたが、大学が立ち上げた調査委が同年末に不正を否定した。しかしその後も、同内容の論文を複数の雑誌に投稿していた「二重投稿」の疑惑などが次々と指摘された。
 追及を続けた教員グループを、井上氏が10年に名誉毀損(きそん)で提訴すると、教員らも反訴。仙台地裁は昨年の一審判決で「直ちに捏造(ねつぞう)、改ざんがあるとは言い切れない」として、教員グループに110万円の賠償を命じた。裁判は仙台高裁で継続中で、8月に予定された判決が延期され、10月に弁論が再開されることになっている。

朝日新聞 2014.10.5

写し

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本調査しないといけない。