毎日新聞 2013年05月23日 02時30分(最終更新 05月23日 02時30分)
降圧剤「バルサルタン」を巡る臨床試験に、製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)の社員が関与して いた問題で22日、同社が社内調査結果を明らかにした。社員が関与したことについて「臨床試験結果に疑念を生じさせることになった。不適切だった」と謝罪 した。上司もこの社員を支援していたことが分かったが、組織ぐるみだったかは「確認できなかった」とした。
取材に明らかにした。今回の調査は、スイス本社が4月に始めたものとは別に、日本法人が京都府立医大の チームによる論文が撤回された2月ごろに開始。社員らから聞き取った。大学の研究者は対象にしておらず、試験データの精査もしていない。結果は22日に日 本医学会、日本循環器学会などに報告した。
社員は、▽京都府立医大▽東京慈恵会医大▽滋賀医大▽千葉大▽名古屋大の5大学による薬の効果を検証す る試験に関与し、複数でデータ解析にかかわっていた。「試験ごとに関与の仕方は違った」というが、詳細は明らかにしなかった。「意図的なデータの操作や改 ざんに導いたことを示す証拠は見つからない」とした。
複数の社員が「企業の社員でも(大阪市立大の非常勤講師という)研究者としての肩書で臨床研究を支援するなら、問題は生じないと信じていた」などと説明したという。
2月の記者会見で当時の三谷宏幸社長(現最高顧問)は「試験は医師主導で、我々は一切試験に関与していない」と述べていたが、同社は「事実と相違していた。訂正しおわびしたい」とした。
この社員は今月15日付で退職。同社は「契約が切れたためで、今回の問題とは無関係」と説明した。【八田浩輔、河内敏康】
『バルサルタンの医師主導臨床研究について
2013年5月22日
最近、バルサルタンの承認後に日本で実施された医師主導臨床研究について報道されております。医師主導臨床研究は、医師に よる独立した運営委員会が企画、設計し、実施するもので、研究や科学的な理解に多大な貢献を果たしています。ノバルティスは、医師主導臨床研究がこのよう な形で実施され、研究結果が信頼できる確実なもので、かつ独立性が保たれたものとなることが極めて重要であると信じています。
報道では、バルサルタンの承認後に日本で実施された医師主導臨床研究に関連して、当社の元社員が試験に関わった可能性があることや、その元社員が当時当社の社員であることを開示していなかったことなどが指摘されています。
ノバルティスは、これらを極めて深刻に受けとめ、日本で2001年から2004年の間に開始されたバルサルタンの医師主導臨床研究について、第三者である外部専門家による包括的な調査を4月に開始しました。
このほど、関連する学会および当該研究を行った方々などに対して、これまでの調査にもとづく現状を報告しました。 主な内容は以下の通りです。
● | 一人の元社員(以降「当元社員」)は、度合はそれぞれ異なるものの、5つのバ ルサルタンの医師主導臨床研究にかかわっていました。また、当元社員の部下である別の元社員も、そのうちの1つの研究に関係していました。全貌の解明には まだ調査が必要ですが、これまでに以下のことが判明しました。 | |
---|---|---|
○ | 国内におけるバルサルタンの医師主導臨床研究の論文数本に、当元社員が当社社員であることの開示がなされないま ま謝辞中に記載されていました。当元社員は、自分が当社の社員であるということを表記するように、それらの論文の著者に対して要請しなければならなかった ということを、当社は認めます。 | |
○ | 当元社員が、いくつかの研究でデータの解析にもかかわっていたことが判明しました。これまでの調査で、意図的な データの操作や改ざんに導いたことを示すものは判明していません。研究者や研究機関が、適切な方法でそれぞれの研究結果を検証する際には、当社はできるか ぎり協力します。このような検証を実施することで、当社の外部専門家による調査の結論の精度が高まると考えるからです。 | |
○ | これら5つのバルサルタンの医師主導臨床研究に当元社員を関与させるという明確な戦略が当時当社にあったとは特 定できていません。しかしながら、一方で、当時の上司の中には、当元社員のこれらの研究へのかかわりを認識し、支援していた者がいたことが判明していま す。彼らは、企業の社員であっても、保有する研究者としての肩書の立場で臨床研究を支援するならば、利益相反の問題を生じないと信じていました。なお、現 時点では、当時の上司が、これらの研究の発表論文において当元社員の所属の開示が不十分であったことを知っていた、もしくは、承認していたことを示すもの はありません。 | |
○ | これらの研究を実施していた研究者の中には、当元社員が当社の社員であることを知っていた研究者がいたことが調 査の中で確認されています。その一方で、当元社員のこれらの研究への関与内容は、現在のノバルティスの行動規範や医師主導臨床研究の基本原則に鑑みれば、 不適切なものでした。 | |
● | 当元社員は当時、大阪市立大学の非常勤講師であり、臨床研究に関わる活動と会社の業務 を隔てる手立てを講ずれば、臨床研究に携わることができると誤って理解していました。当時、当元社員だけでなく、上司や研究者においても、同様の誤解をし ていた人たちがいたと考えています。 |
最新の調査によれば、以前当社が発表したKYOTO HEART studyにおける当社社員の関与についての見解が事実と相違したものであることが判明しました。以前に発表した見解は、その時点での調査や認識に基づくものでした。本報告にて訂正し、お詫びいたします。
ノバルティスでは、社員全員が会社の行動規範に従うよう、厳格なルールを定めています。この行動規範は、常に専門家とし
て倫理的で正しい行動を取ること、および正しい業界ルールに従って行動を取ることを定めており、ノバルティスグループ企業では、全世界ですべての従業員に
対して雇用条件として義務付けています。ノバルティスは、業務のあらゆる場面において、倫理的な業務遂行と規制遵守に対し高い基準で取り組んでいます。また、ノバルティスの行動規範は、ヘルスケアビジネスおよび法令その他の規制の変化に応じて改訂し更新されています。
ノバルティスは本件を極めて重大なこととして認識しており、さらに調査を進めます。そして、その結果に基づき、必要かつ適切な措置を講じます。また、学会や臨床の先生方と協働し、推奨される臨床研究への変革に前向きに取り組んでまいります。
今回の調査の対象となった、日本で実施されたこれらのバルサルタンの医師主導臨床研究の結果は、バルサルタンの承認申請や追加適応取得の資料としては使用されておりません。
バルサルタンは、ノバルティス ファーマ(スイス・バーゼル)で開発された「高血圧症」に使用される薬剤です。 1996年にドイツで承認されて以来、世界約100カ国で承認されています。日本では2000年9月に承認され、同年11月に発売されました。また、 2010年10月には薬事法に基づく再審査※の結果を受領し、市販後の有効性及び安全性に関する審査を終えています。
ノバルティスの定める行動規範(コード オブ コンダクト)についての詳細は下記をご参照ください。
- 行動規範(コード オブ コンダクト)(3.8MB)
※ 再審査とは、新医薬品について市販後の一定期間(8年程度)に集められた有効性・安全性の結果を国が審査する制度です。
(ノバルティスファーマー社HPより)』
捏造や改ざんはあったのでしょうか。
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