東大、51論文「不適切」 学位取り消しも 元教授グループ
2013年12月27日05時00分
東京大は26日、同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)の研究グループの論文計51本について、「科学的な適切性を欠いた画像データが使用されていた」とする中間報告を発表した。来年中にも最終報告をまとめ、関係者の処分や研究費の返還も検討するという。
東大が不正問題の調査で中間報告をするのは異例。「日本の学術研究の国際的な信頼も揺るがす大問題」(大和裕幸副学長)との危機感による。
調査は、加藤元教授が同研究所に所属していた1996~2012年に発表された、加藤元教授や研究室のメンバーが著者になった論文165本が対象。不適切とされた51本のうち43本は画像の捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正の疑いがあり「撤回が妥当」と認定し、8本は「訂正が可能」とした。すでに13本は撤回されている。
51本の論文には共著者を含め約200人の研究者が関与していた。さらに聞き取り調査などを進め、不正に関与した者を特定し、関与の度合いを認定する。処分は別の組織で検討するが、大学を離れた研究者も含む。学位取り消しの可能性もあるという。
一連の研究は約15年間で30億円以上の公的研究費が投じられ、「不正にかかわった研究費は返還せざるを得ない」とした。調査結果を資金の提供機関に伝え、返還などの判断を求める。
報告書では、問題の背景として「国際的に評価の高い学術誌などを通じて顕著な研究成果を発表することが重視される一方、実験データの管理や論文内容のチェックが疎(おろそ)かにされていた」ことなどを挙げた。
12年1月に「論文データに加工の疑いがある」という学外からの指摘を受け予備調査を実施、13年9月末から本調査を進めていた。加藤元教授は 「監督責任がある」として12年3月末に辞職。元教授は不正があったことを認めたうえで、「自分は指示したこともやったこともない」と調査に答えたとい う。
(今直也)
■結論ありき、画像捏造
論文に掲載された画像は実験結果を示す重要な証拠だ。しかし、画像処理を加えることで結論に合うように操作することができる。
東大の調査では、51論文で確認した不適切な画像データ処理は計210カ所あり、重複も含め(1)貼り合わせ78カ所(2)流用・転用97カ所(3)不掲載・消去35カ所(4)過度な調整28カ所、に大別できたという。
たとえば、画像の貼り合わせは、複数の画像データをつなぎ合わせて、あたかも実験結果で得られた画像のように見せかけていた。拡大したところ、不自然な線などが見つかった。提出させた画像の操作履歴から、画像をつなぎ合わせたものと分かったという。
■中間報告まで2年、遅すぎる
《解説》東大が研究不正を指摘する申立書を受理したのが2012年1月。2年が経とうとしているのに、中間報告では、誰がどんな不正を働いたのか認定ができていないという。不正防止への対応が遅すぎる。
東大側は調査が長引く理由を、論文数が多く、関係研究者が約200人にものぼる複雑さを挙げる。それにしても2年は長い。
文部科学省の特別委員会は06年、研究不正対応のガイドラインを作った。研究者側に疑惑を晴らす説明責任を課し、「疑いが覆されないときは、不正行為と認定される」とした。今回の調査では、論文に使った画像データの検証で、画像の貼り合わせなど明らかな不正を確認できている。
文科省ガイドラインでは不正と認定された場合、公的研究費の使用中止や返還、新規申請制限などの措置を定めている。対応が遅れれば、このような制 裁措置も意味がなくなる。いま、各地で研究不正を疑う指摘が相次いで出ている。東大で真相解明が遅れることは、悪い先例になりかねない。
(編集委員・浅井文和)
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朝日新聞
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東大が不正実行者の特定をきちんとやろうとする姿勢は評価します。これまで琉球大や京都府立医大、独協医大などで不正実行者の特定が十分でなくトカゲの尻尾切りで終わった例も珍しくなかったからです。しかしまだ不正実行者の特定ができていなかったとは。予備調査開始から約2年なので不正実行者の特定も含めてもうとっくに終わっていると思っていました。来年中に最終報告という東大の姿勢はのんきすぎるというか、だらだらやってるだけと言われてもしかたないでしょう。
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