バルサルタン:臨床試験疑惑 調査出そろう 「効果あり」で不正 結論、データ操作に相関
毎日新聞 2013年12月18日 東京朝刊
どの試験も、バルサルタンと他の降圧剤との比較が目的だった。全ての試験に販売元ノバルティスファーマの同じ社員(5月に退職)が関与していたが、元社員の存在とデータ操作との関係は解明されなかった。
データ操作が判明した京都府立医大と東京慈恵会医大の試験は「他の降圧剤と比べて、脳卒中や狭心症のリスクを大幅に減らす」と結論付けていた。これらの結果は、他の試験と比べて際立って多く広告に使われた。だが両大学の調査で、バルサルタンの効果を強調する不正の痕跡が見つかった上、元社員に統計解析などを任せていたことが分かった。腎臓を守る作用があるとした滋賀医大でも、データ操作が示唆された。
一方、名古屋大、千葉大は不正を否定する中間報告を公表。データを検証すると一部で不整合があったが、「意図的な操作ではない」と判断された。両試験は、バルサルタンに心臓を守る働きがあると指摘したが、脳卒中の予防など試験の主目的だった評価項目では別の降圧剤との間に差がなかった。元社員の関与も限定的だった。
誰がデータ操作したのかについては、各大学で判断が分かれている。慈恵医大は元社員の不正への関与を示唆し、京都府立医大は元社員と共に大学の研究者にも疑いの目を向けた。滋賀医大は元社員の部下も参加していたが、大学は研究者による操作を疑っている。
ノ社から5大学に提供された計11億円を超す奨学寄付金についても詳細な使途は明らかになっていない。
厚生労働省は、誇大広告を禁じた薬事法に基づく調査を進めている。大学による任意調査の限界を指摘する声は強まっており、11月には民間団体が東京地検に告発状を提出している。
◇千葉大「不正なし」
バルサルタンの 臨床試験疑惑で、千葉大の調査委員会は17日、「現時点で、意図的にデータ操作が行われたことを示す内容は見いだせなかった」とする中間報告を発表した。 患者108人分について論文に使ったデータとカルテを照合したところ、各項目で5〜8%の不一致があったが再解析した結果、データ操作されたとは言えない と説明した。大学側は「あくまで内部的な調査だ」としており、データの照合作業を依頼した第三者機関の調査結果を待って最終報告する。
千葉大の試験にはノ社の社員(5月に退職)が参加していたのに、論文では伏せられていた。ノ社から受けた奨学寄付金についても記載がなく、調査委は「説明が不十分だった」と批判した。千葉大の論文責任者は小室一成教授(現在は東京大教授)。【河内敏康、田中裕之】
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■ことば
◇バルサルタン臨床試験疑惑
ノバルティスファーマ(東京)の降圧剤バルサルタンに 血圧を下げるだけでなく、脳卒中予防などの効果もあるかを5大学が臨床試験をして確かめた。ノ社は各論文を大々的に宣伝に利用してきたが、今年に入って、 社員が全試験に参加していたことや研究チームに奨学寄付金を出していたことが発覚した。さらに東京慈恵会医大などの試験ではデータ操作されていたことも分 かった。ノ社は謝罪に追い込まれたが、データ操作への関与は否定している。バルサルタンは累計で1兆2000億円を売り上げてきた大ヒット薬。--
千葉大の調査は正当だったのでしょうか。
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