2014年12月27日土曜日

STAP問題「研究者が毒矢刺す」 科学界から厳しい声

2014年12月27日00時56分

 STAP問題は科学者コミュニティーに突き刺さった1本の矢である――。理化学研究所の調査委員会が指摘したように、STAP問題は科学界に大きな禍根を残した。ES細胞混入というお粗末な結論に、科学界からは疑問の声があがった。

 御園生(みそのう)誠・東京大学名誉教授(応用化学)は「STAP問題という毒矢を生み、科学界に突き刺したのは、分子生物学の研究者たち自身だ。十分な議論や再現実験をせずに研究が進み、論文が発表された理由についてさらに調査する必要がある」と批判した。
 池内了(さとる)・総合研究大学院大名誉教授は「ES細胞の 混入は予想できたこと」とした上で、「理研も気付いていた可能性があるが、早い段階で出せば混乱が大きくなると恐れたのではないか。うがった見方かもしれ ないが、時間をかけて結論を出すことで、目立たないように処理しようとした印象がある。今後は著名な雑誌に載ったからうのみにするような『権威主義』も改 められるべきだ」と話した。
 日本分子生物学会副理事長の中山敬一・九州大教授(分子生物学)は「理研はこれで幕引きにせず、問題の背景を検証する必要がある。今後は学会の枠を超えて不正の定義など、科学界におけるルール作りが必要だ」と話した。
■「ハーバード大もSTAP調査」
 理化学研究所は26日の会見で、STAP細胞論文の責任著者の一人、チャールズ・バカンティ教授が所属するハーバード大学が調査をしていることを明らかにした。理研の有信睦弘理事が「ハーバード大学とは情報交換できる態勢にはなっている。調査が開始されたということも聞いている」と話した。ただ、調査に関する具体的な情報は入ってきていないという。
 ハーバード大学にはバカンティ教授のほかにも共著者の日本人医師が所属している。理研の川合真紀理事は「(共著者の)研究員の方にも資料提供の依頼を出しており、ハーバード大学とは連携して進めている」と話した。
     ◇
 STAP細胞をめぐる問題で、理化学研究所の調査委員会と理研が26日開いた会見の要旨は、次の通り。発言者は、調査委の桂勲委員長、理研の川合真紀理事、有信睦弘理事。
【調査委員会】
ES細胞の混入
 桂氏 小保方晴子氏は「混入の可能性はある」ということは言っていた。ただ、「私が混入をさせたことは絶対にありません」とも言っていた。
■調査の限界
 桂氏 2年も3年も続けられたらもう少し分かったかもしれないが、早く結論を出せという一般社会からのプレッシャーもある。理研の規則に従ってやった。
■STAP論文
 桂氏 これだけおかしいことがあり、優れた研究者の目を通っているはずなのに表に出てしまった。非常に不思議な論文だ。
【理研】
■懲戒委員会
 有信氏 今回の報告を受けて再開予定。(懲戒処分の)対象者は明確なことは言えない。
■今後の調査
 有信氏 調査委ができうる限りの調査をした。可能なことはやり尽くした。これ以上やるつもりはない。
■特許と研究費返還請求
 川合氏 (特許出願の取り下げを呼びかけていると)理解してもらっていい。(共同研究した)ハーバード大にも働きかけている。
 有信氏 (研究費の返還請求は)理研内部の規定、国のガイドラインに照らし合わせて検討する。方針はまだ決まっていない。
■検証実験
 川合氏 試料の全貌(ぜんぼう)が解明できたのは8月末以降。(実験を早く打ち切れなかったのかとの声もあるが)そのときにまだ調べきっていないことがあった。もう一度(事実関係を)判断するということで、11月末の段階で全体の結論を出したと理解している。

朝日新聞

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