2013年8月8日木曜日

バルサルタン関連の改ざん事件や加藤茂明グループの捏造事件が報道され、研究不正問題が世間で注目されつつあります。前から改善を主張されていたにも関わらず無視していた文科省もついに重い腰をあげざるを得なくなりました。

しかし、重要なのはここからです。せっかく対策を作ってもそれが不十分なものでは全く意味がありません。今の様子をみると、文科省も日本学術会議も研究者の倫理教育や新しいガイドラインを作る程度で事を終わらせる可能性も否定できません。このような研究者のモラルや任意性にまかせる方法では不十分で、これまでの繰り返しにすぎません。

これまでも研究不正の対処については文科省のガイドラインや各研究機関の内部規定が存在しました。しかし、井上明久東北大前総長の事件ではガイドラインや東北大の規定は無視され、告発が不合理な理由で不受理になったり、不正が握りつぶされるといった事件が発生しました。他にもガイドライン等に従っていない例はいくつもあります。

研究者の倫理教育はこれまでも行われてきました。しかし、日本分子生物学会で研究者の不正防止に関する倫理教育をしていた加藤茂明ですら、論文43編で捏造などの不正を発生させてしまったのです。捏造論文の一つであるネイチャーの筆頭著者(加藤グループに属していた)は"不正をすべきでない。"と偉そうに研究倫理を語っていましたが、自分は悪質な捏造を実行していたのです。

結局、拘束力のない規定では実効性がなく、研究者や研究機関のモラルや任意性に任せても必ずしも不正を防げないことは、これまでの事件で明確に立証されました。

では、 研究機関でこのような問題が生じたときに監督機関である文科省や資金配分機関に訴え、改善してもらえばよいではないかと思うかもしれませんが、井上明久事件や松原弘明元京都府立医大教授のデータ流用事件などを見ればわかるように、文科省等に訴えても「文科省としては不正防止のガイドラインを作っており、それに基づいて定められた各研究機関の内部規定に基づいて不正の問題は対処される。まずは研究機関に自浄作用を発揮してもらって、文科省としてはその後に必要な対応を検討する。」といった趣旨の回答を大臣や役人がするだけです。結局のところ文科省等に訴えても問題を研究機関に丸投げするだけで、文科省等が責任を果すことはありません。

研究機関に問題を丸投げするのは研究不正の問題に限らず、研究費や業績評価などの問題でも全く同じです。要するに、倫理教育やガイドラインを強化するだけでは学術界の自浄作用は保障されません。研究機関が問題を握りつぶしたり恣意的に扱ったら、それを改善する方法はありません。

近いうちに検討される不正防止策はこうしたことをきちんと改善するものでなくてはいけません。これは絶対です。そのためには倫理教育やガイドラインの強化だけでなく、規定に拘束力をもたせ実効的なものにし、学術警察を作って告発を受け付け、大事にするためにわざと不正認定を避けるのではなく積極的、客観的に研究不正を調査し、 処分に関しても罰則を強化し、拘束力のある罰則の統一規定を作る必要があります。学術警察は必要ならば強制調査できる権限を持つべきです。

学術界の不正の問題を必ず改善しなければなりません。

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