毎日新聞 2013年06月11日 東京朝刊
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験問題で、販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)の社員 (既に退職)が大学の研究チームに加わることができたのは、ノ社で医師向けの宣伝などを企画するマーケティング担当者による紹介が端緒だったことが分かっ た。当時、ノ社は販売競争に有利となる臨床試験の結果が出ることを期待しつつ、大学側と試験実施に向け計画を進めていた。ノ社は、この経緯を厚生労働省と 関係学会に社内調査結果として報告したが、これ以外には公表していない。【河内敏康、八田浩輔】
バルサルタンの2000年の発売以来の売り上げ(12年まで)は計約1兆2000億円に上る。医師の処方薬であり、保険料の形で国民が負担している。
取材で判明した社内調査結果などによると、海外で「バルサルタンには、血圧を下げるだけにとどまらない種々の効果がある」と報告されていたため、ノ社は、日本人対象の臨床試験が行われて同様の効果が確認されることを望んでいた。
一方、大学側には、実績づくりのために大規模な臨床試験に取り組みたいとの希望があり、思惑が合致した形で試験が計画されていった。
その過程で、ノ社のマーケティング担当者が、「統計の専門家」として、循環器マーケティング部門に所属していた社員を教授らに紹介していた。社内の上司は、臨床試験が計画通りに行われるよう、社員に対し、研究チームへの支援を指示していた。
結局、臨床試験は京都府立医大など計5大学で実現。統計解析などにノ社の社員が関わったことは、いずれ の論文からも伏せられ、所属は「大阪市立大」などとなっていた。このうち東京慈恵会医大と府立医大を含む4大学の結果には、専門家から統計学的な疑問が投 げ掛けられており、府立医大の論文は掲載誌から撤回(取り消し)されている。
ノ社は3月、取材に「臨床試験は医師主導で、企業は関与できない」「社員は有名な統計解析の専門家だったために加わった」と説明していた。問題が拡大した後の5月22日にホームページで社内調査の結果を公表したが、社員が研究チームに加わった経緯は明らかにしなかった。
◇年間売り上げ1000億円計画
ノバルティスファーマの社内資料などによると、同社は2002年ごろ、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の年間売り上げ1000億円を目指す「100Bプロジェクト」をスタートさせた。Bは英語で10億を示す「ビリオン」の頭文字だ。スイス本社との共同事業だった。
降圧剤は、血圧を下げる作用の仕組みによって複数の種類があり、バルサルタンはそのうち「ARB」と総称される種類に属する。ARBは00年前後に数社が発売し、競合品との差別化が社内の最重要課題だった。
「100B達成には国内の臨床的データの創出が不可欠」として、ノ社が一連の臨床試験を企画・提案したのはまさにその時期だった。
最初の試験となった東京慈恵会医大のチームは、バルサルタンが脳卒中などのリスクを大きく下げると結論付け、論文は07年4月に一流医学誌「ランセット」に掲載された。
この成果は、医師向けの宣伝に大々的に活用された。多くの医師は「患者に処方する薬の選択を変えさせるほどのインパクトがあった」と口をそろえる。
発売翌年(01年)の売り上げは薬価ベースで160億円だったが、4月に慈恵医大の論文が発表された07年は1276億円、8月に京都府立医大の論文が発表された09年は1400億円を記録した。
降圧剤は、血圧を下げる作用の仕組みによって複数の種類があり、バルサルタンはそのうち「ARB」と総称される種類に属する。ARBは00年前後に数社が発売し、競合品との差別化が社内の最重要課題だった。
「100B達成には国内の臨床的データの創出が不可欠」として、ノ社が一連の臨床試験を企画・提案したのはまさにその時期だった。
最初の試験となった東京慈恵会医大のチームは、バルサルタンが脳卒中などのリスクを大きく下げると結論付け、論文は07年4月に一流医学誌「ランセット」に掲載された。
この成果は、医師向けの宣伝に大々的に活用された。多くの医師は「患者に処方する薬の選択を変えさせるほどのインパクトがあった」と口をそろえる。
発売翌年(01年)の売り上げは薬価ベースで160億円だったが、4月に慈恵医大の論文が発表された07年は1276億円、8月に京都府立医大の論文が発表された09年は1400億円を記録した。
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不適切な販促がディオバンの売り上げに貢献していたのでしょうか?
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