2013年6月2日日曜日

他の臨床研究にも不正はあるのか?


ノバルティス“論文問題”が
飛び火で戦々恐々の製薬業界

2013年05月28日
 
火の収まる気配がない——―。ある製薬会社の幹部は嘆く。スイスの大手製薬会社、ノバルティス ファーマの降圧剤「ディオバン」の論文問題のことだ。

 2001年〜04年に行われた京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学の5大学でのディオバンに関わる医師主導の臨床 研究について、ノバルティスの元社員が当時、同社社員の身分を開示せず、非常勤講師として勤務する大阪市立大学の肩書で論文作成に関与していたことが発覚 した。

 大阪市立大学とノバルティスの“名刺”を使い分けたという行為が「第三者の目から見て疑惑を生む」と問題視されたほか、元社員がデータ解析を担当していたために「データの改ざんがあったのではないか」と疑われたのだ。

 ノバルティスは5月22日、第三者による報告書をまとめた。現時点では、肝心のデータの改ざんについては判明しなかったが、元社員の関与は「不適切だっ た」とした。24日には、医学系118学会が加盟する日本医学会が元社員の関与した5大学に対し、調査委員会によるデータの再検証を求めた。

 焦点は、実際にデータの操作や改ざんの痕跡が見つかるか否かだが、ある製薬業界に詳しい医師は「過去に行われた他の有名な臨床研究にも疑惑が“飛び火”する可能性がある」と指摘する。

 複数の業界関係者によると「日本の臨床研究では、過去、疑惑が指摘されたものがある」という。今回の問題をきっかけに、再度、多方面からの検証が行われる可能性が高く、結果次第では日本の臨床研究の信頼性が地に落ちることになる。
 
そもそも医師主導の臨床研究といえども、実際は製薬会社からの提案によるものが少なくない。製薬会社は医師に対し、研究費の提供はもとより、あらゆ る形で協力を行ってきた。過度な両者の“依存関係”は薄らいでいるが、かつては製薬会社の社員が医師の臨床研究に患者として参加したり、論文や資料作成に 関わることは、日常的に行われていた。眠れぬ夜を過ごす関係者は多いだろう。

 今回、問題となった医師主導の臨床研究とは、新薬としての承認を得るために行う臨床試験、いわゆる治験とは異なる。新薬の発売後に、その有効性を証明する科学的根拠を集め、主に医師への宣伝活動を目的に行われるものだ。

 ディオバンは、世界でピーク時には6000億円以上を販売し、日本国内でも12年に1083億円を売り上げた大型新薬だ。武田薬品工業や第一三共などからの競合品が存在する。

 このように競争が激しい降圧剤や高脂血症薬、糖尿病薬などでは、国内でも大手製薬会社による大規模な臨床研究が複数行われている。

 もっとも、製薬業界による医師への研究費の提供や協力をすべて禁じる策は現実的ではないだろう。

 特に、国は医療分野を将来の成長産業として位置づけており、強力な産学連携は不可欠。「李下に冠を正さず」で、透明性を確保するしかない。 
本誌・山本猛嗣

週刊ダイヤモンド』

他の臨床研究にも同様の不正はあるのでしょうか?

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