2013年7月15日月曜日

薬の効果偽装―教訓導く徹底調査

薬の効果偽装―教訓導く徹底調査を


 不正に効能がうたわれた薬を飲むのは納得がいかない。
 京都府立医大が手がけた高血圧治療薬の臨床研究で、効能のデータが改ざんされていたことが明らかになった。
 だれが、どう操作し、なぜ見のがされたのか。この研究にたずさわった製薬大手ノバルティスの社員の関与が疑われているが、大学の調査では核心がなぞのままだ。不正の全容を解明しなければならない。
 この薬の名はディオバンといい、国内売り上げが年間1千億円を超える人気薬だった。
 問題の研究は、この薬が認可を受けて一般に使われるようになったあとに、府立医大病院などで高血圧患者約3千人を対象に行われた。
 「別の高血圧薬にくらべて、脳卒中や狭心症などの発生リスクが半減した」などとする論文6本が立て続けに発表され、医師向けの宣伝に使われた。
 だが、その後、「データが不自然」と疑問が噴出した。研究の中心だった教授は今年2月に釈明しないまま辞職し、論文はすべて撤回された。
 焦点の社員は論文にも登場しており、データの統計解析や研究の事務局役を担っていた。この会社から教授には、1億円以上の奨学寄付金が渡っていた。
 大学側がデータをカルテと突きあわせると、実際にはなかった脳卒中の減少などの効果が表れるようにデータが操作されていたことが確認された。
 同様の研究は、東京慈恵会医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大も行い、同じ社員がかかわっていた。社員はすでに退社したが、ノバルティスには重い説明責任がある。各大学も早急に本格調査せねばならない。
 薬の認可を目的とした臨床試験(治験)にくらべ、副次効果などを調べる臨床研究は規制がずっと甘い。今回の不正は、これまで手つかずだった制度的な問題点をあぶり出した。
 製薬会社の関与、奨学寄付金のあり方、大学や病院の責任、文部科学省や厚生労働省の役割はどうあるべきか。臨床研究から不正を締め出すための教訓を導くためにも、今回の問題の徹底調査が欠かせない。
 近年の学術論文の数を分析すると、日本は基礎医学では世界トップレベルなのに、臨床医学はここ10年ほど低落が著しい。研究資金の出所を明示するなど海外では常識のルールが徹底されておらず、質の高い研究が少ないとも指摘されている。
 安倍政権は医療を成長分野としている。学会と協力して制度の改善に取り組んでほしい。
 
朝日新聞社説 2013.7.13

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徹底調査して真相を明らかにしてほしいです。

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