東大論文不正:元教授、研究者同士競わせる
毎日新聞 2013年07月26日 00時20分(最終更新 07月26日 00時28分)
東京大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(昨年3月に辞職)のグループによる大量の論文不正が25
日、発覚した。大学の調査委員会が「撤回が妥当」と判断した論文は16年間で計43本と、加藤氏が在職中に発表した全論文の4分の1に上る。加藤氏自身は
不正の指示や関与を否定しているが、世界的研究者の前代未聞の不正を生んだ背景には、メンバーを複数の小グループに分け、有名科学誌への発表成果を競わせ
る研究室の運営手法があったとみられる。
加藤氏によると、研究室には最大50人以上のメンバーが所属し、年間の研究費は約2億円あった。この分 野では国内有数の規模だ。加藤氏は「研究費に見合う、世界で通用する成果を出さないとダメだ」と圧力をかけ、メンバーを3〜5の小グループに分けて競い合 わせた。実験は各自の得意分野を生かし、分業体制で進めたという。
研究者は論文の質や量で評価され、研究費やポストの獲得に直結する。英国の「ネイチャー」や米国の「サイエンス」「セル」など有名科学誌は世界の研究者の注目度が高く、加藤氏も「(研究者としての)世界が変わる」とメンバーに投稿を強く勧めた。
ただし、有名科学誌のハードルは高く、あいまいさのない「きれいなデータ」が求められる。判明した不正 の大部分は、データを示した画像を改ざんしたり、別の実験データを使い回したりしたものだ。成果が出ないメンバーを「(研究をやめて)臨床に戻れ」と叱責 し、その後に「あまりにもきれいなデータが出てきたこともあった」という。加藤氏自身は画像の改変にタッチせず、実験結果に助言したり、論文を修正する役 割だった。
加藤氏は「僕の要求が厳しかったので、メンバーがついてこられなかったのかもしれない。“性善説”の研究室だったので、互いにチェックすることがなかった。自分は管理者として失格だった」と肩を落とした。
こうした研究室運営について、研究不正に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「生命科学は最近、研究者の 数や大型の研究資金が増え、特に競争が激しくなった分野。成果を求めるプレッシャーが高まれば、不正を生む要因になり得る。最初はデータをきれいに整える ために画像を操作する程度だったのが、徐々にエスカレートしていった可能性がある」と指摘する。【藤野基文、西川拓】
加藤氏によると、研究室には最大50人以上のメンバーが所属し、年間の研究費は約2億円あった。この分 野では国内有数の規模だ。加藤氏は「研究費に見合う、世界で通用する成果を出さないとダメだ」と圧力をかけ、メンバーを3〜5の小グループに分けて競い合 わせた。実験は各自の得意分野を生かし、分業体制で進めたという。
研究者は論文の質や量で評価され、研究費やポストの獲得に直結する。英国の「ネイチャー」や米国の「サイエンス」「セル」など有名科学誌は世界の研究者の注目度が高く、加藤氏も「(研究者としての)世界が変わる」とメンバーに投稿を強く勧めた。
ただし、有名科学誌のハードルは高く、あいまいさのない「きれいなデータ」が求められる。判明した不正 の大部分は、データを示した画像を改ざんしたり、別の実験データを使い回したりしたものだ。成果が出ないメンバーを「(研究をやめて)臨床に戻れ」と叱責 し、その後に「あまりにもきれいなデータが出てきたこともあった」という。加藤氏自身は画像の改変にタッチせず、実験結果に助言したり、論文を修正する役 割だった。
加藤氏は「僕の要求が厳しかったので、メンバーがついてこられなかったのかもしれない。“性善説”の研究室だったので、互いにチェックすることがなかった。自分は管理者として失格だった」と肩を落とした。
こうした研究室運営について、研究不正に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「生命科学は最近、研究者の 数や大型の研究資金が増え、特に競争が激しくなった分野。成果を求めるプレッシャーが高まれば、不正を生む要因になり得る。最初はデータをきれいに整える ために画像を操作する程度だったのが、徐々にエスカレートしていった可能性がある」と指摘する。【藤野基文、西川拓】
◇「性善説で実験信用」
加藤氏が毎日新聞の取材に応じた一問一答は次の通り。−−不正が起きた原因をどう考えるか。
研究室は3〜5のグループに分かれ、良い意味の競争があった一方で、他グループよりも成果を出さなければいけないという焦りもあったのではないか。
−−論文はどのように仕上げたのか。
筆頭著者が何を解明したいかを考え、そのために必要な実験は複数に割り振った。論文の図は、基本的に実験の担当者が作った。その時に不正が行われていたらしい。私が主導して研究室ぐるみでやったことではない。
−−教授の役割は。
出てきた実験結果を確認し、他に必要なデータなどについてアドバイスをした。筆頭著者が書いた文章の修正も私の役目だった。しかし、コンピューターが苦手なので図の作成はメンバーに任せた。
−−不正を指示したことは。
全くない。既に教授になっていたし(不正をする)理由がない。
−−どうすれば防げたのか。
実験結果の報告は全て信用したが、“性善説”に立ったやり方はだめだったのかもしれない。チェックし合うことが必要だった。実務的な細かい所は任せていた。丸投げと言われればその通りだ。
写し1、写し2
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研究不正の背景には論文数やインパクトファクターの向上を目的とした過度の競争があります。競争が悪いとはいいません。しかし、公正さを保つ仕組みが必要です。
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