2013年12月27日金曜日

厚労委、千葉大の調査報告に異議 ディオバン論文不正

厚労委、千葉大の調査報告に異議 ディオバン論文不正

2013年12月25日23時10分


製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンに関する臨床研究の論文不正問題で、厚生労働省の検討委員会は25日、4回目の会合を開いた。滋賀医 科大、名古屋大、千葉大が報告した。「意図的なデータ操作は見いだせなかった」とまとめた千葉大の調査に対し、「データの食い違いの頻度が多く、ずさんな 研究だったと結論すべきだ」などの意見が出た。
 この日の検討委で、ディオバンの効果を調べた5大学の臨床研究についての調査が出そろった。京都府立医科大と東京慈恵会医科大、滋賀医科大の3大 学では不正や不適切なデータ操作があったとされている。千葉大と名古屋大は不正は確認されていないとした。千葉大の報告については「これだけ誤記があって は、科学研究としてありえない」などの意見が出た。
 検討委はさらに聞き取り調査を進めるかなどを検討するという。製薬企業からの奨学寄付金の具体的な用途など、実態をできる限り明らかにしていくとの方針が示された。

■調査を00年度まで拡大
 厚生労働省は25日、大学病院など臨床研究の拠点117施設に対し、2000~08年度に始めた研究についても、データ捏造(ねつぞう)など不正 が疑われたものがあったかどうか、報告を求めることを決めた。公費助成を受けていたか、結果が製薬企業の広告に使われていたかなどを報告してもらう。
 09年度以降の研究については8月に報告を求め、不適切な研究は137件だった。不正があった高血圧薬の研究は02年に始まったので、過去にさかのぼって調査するべきだとの声があり、時期を広げたという。


朝日新聞

写し
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VARTに関する千葉大の調査は私も怪しいと思っています。VARTは例えばディオバンが他の薬より心臓を保護する効果があることを示し、それに疑義が持たれていました。しかし千葉大の中間報告では修正したデータベースを用いて再解析をせず「不正なし」と結論。これは正当な調査とは到底いえません。実験をせず著者の主張したい結論を論文で主張するのと何ら変りません。厚労委から批判が出たのは千葉大の調査が保身のために十分でないことを見抜いているからでしょう。だから不正の調査は第三者機関がやった方がいいと思います。VARTの調査に関しては今後もどうなるかわかりません。

東大、51論文「不適切」 学位取り消しも 元教授グループ

東大、51論文「不適切」 学位取り消しも 元教授グループ

2013年12月27日05時00分


東京大は26日、同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)の研究グループの論文計51本について、「科学的な適切性を欠いた画像データが使用されていた」とする中間報告を発表した。来年中にも最終報告をまとめ、関係者の処分や研究費の返還も検討するという。
 東大が不正問題の調査で中間報告をするのは異例。「日本の学術研究の国際的な信頼も揺るがす大問題」(大和裕幸副学長)との危機感による。
 調査は、加藤元教授が同研究所に所属していた1996~2012年に発表された、加藤元教授や研究室のメンバーが著者になった論文165本が対象。不適切とされた51本のうち43本は画像の捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正の疑いがあり「撤回が妥当」と認定し、8本は「訂正が可能」とした。すでに13本は撤回されている。
 51本の論文には共著者を含め約200人の研究者が関与していた。さらに聞き取り調査などを進め、不正に関与した者を特定し、関与の度合いを認定する。処分は別の組織で検討するが、大学を離れた研究者も含む。学位取り消しの可能性もあるという。
 一連の研究は約15年間で30億円以上の公的研究費が投じられ、「不正にかかわった研究費は返還せざるを得ない」とした。調査結果を資金の提供機関に伝え、返還などの判断を求める。
 報告書では、問題の背景として「国際的に評価の高い学術誌などを通じて顕著な研究成果を発表することが重視される一方、実験データの管理や論文内容のチェックが疎(おろそ)かにされていた」ことなどを挙げた。
 12年1月に「論文データに加工の疑いがある」という学外からの指摘を受け予備調査を実施、13年9月末から本調査を進めていた。加藤元教授は 「監督責任がある」として12年3月末に辞職。元教授は不正があったことを認めたうえで、「自分は指示したこともやったこともない」と調査に答えたとい う。
 (今直也)
 ■結論ありき、画像捏造
 論文に掲載された画像は実験結果を示す重要な証拠だ。しかし、画像処理を加えることで結論に合うように操作することができる。
 東大の調査では、51論文で確認した不適切な画像データ処理は計210カ所あり、重複も含め(1)貼り合わせ78カ所(2)流用・転用97カ所(3)不掲載・消去35カ所(4)過度な調整28カ所、に大別できたという。
 たとえば、画像の貼り合わせは、複数の画像データをつなぎ合わせて、あたかも実験結果で得られた画像のように見せかけていた。拡大したところ、不自然な線などが見つかった。提出させた画像の操作履歴から、画像をつなぎ合わせたものと分かったという。
 ■中間報告まで2年、遅すぎる
 《解説》東大が研究不正を指摘する申立書を受理したのが2012年1月。2年が経とうとしているのに、中間報告では、誰がどんな不正を働いたのか認定ができていないという。不正防止への対応が遅すぎる。
 東大側は調査が長引く理由を、論文数が多く、関係研究者が約200人にものぼる複雑さを挙げる。それにしても2年は長い。
 文部科学省特別委員会は06年、研究不正対応のガイドラインを作った。研究者側に疑惑を晴らす説明責任を課し、「疑いが覆されないときは、不正行為と認定される」とした。今回の調査では、論文に使った画像データの検証で、画像の貼り合わせなど明らかな不正を確認できている。
 文科省ガイドラインでは不正と認定された場合、公的研究費の使用中止や返還、新規申請制限などの措置を定めている。対応が遅れれば、このような制 裁措置も意味がなくなる。いま、各地で研究不正を疑う指摘が相次いで出ている。東大で真相解明が遅れることは、悪い先例になりかねない。
 (編集委員・浅井文和)

画像

朝日新聞

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東大が不正実行者の特定をきちんとやろうとする姿勢は評価します。これまで琉球大や京都府立医大、独協医大などで不正実行者の特定が十分でなくトカゲの尻尾切りで終わった例も珍しくなかったからです。しかしまだ不正実行者の特定ができていなかったとは。予備調査開始から約2年なので不正実行者の特定も含めてもうとっくに終わっていると思っていました。来年中に最終報告という東大の姿勢はのんきすぎるというか、だらだらやってるだけと言われてもしかたないでしょう。

2013年12月26日木曜日

東大51論文「科学的適切性欠く」 研究不正で中間報告

東大51論文「科学的適切性欠く」 研究不正で中間報告

2013年12月26日21時17分


 【今直也】東京大は26日、同大分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授(54)の研究グループの論文計51本について、「科学的な適切性を欠いた画像データが使用されていた」とする中間報告を発表した。来年中にも最終報告をまとめ、関係者の処分や研究費の返還も検討するという。
 東大が不正問題の調査で中間報告をするのは異例。「日本の学術研究の国際的な信頼も揺るがす大問題」(大和裕幸副学長)との危機感による。
 調査は、加藤元教授が同研究所に所属していた1996~2012年に発表された、加藤元教授や研究室のメンバーが著者になった論文165本が対象。不適切とされた51本のうち43本は画像の捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正の疑いがあり「撤回が妥当」と認定し、8本は「訂正が可能」とした。すでに13本は撤回されている。
 51本の論文には共著者を含め約200人の研究者が関与していた。さらに聞き取り調査などを進め、不正に関与した者を特定し、関与の度合いを認定する。処分は別の組織で検討するが、大学を離れた研究者も含む。学位取り消しの可能性もあるという。
 一連の研究は約15年間で30億円以上の公的研究費が投じられ、「不正にかかわった研究費は返還せざるを得ない」とした。調査結果を資金の提供機関に伝え、返還などの判断を求める。
 報告書では、問題の背景として「国際的に評価の高い学術誌などを通じて顕著な研究成果を発表することが重視される一方、実験データの管理や論文内容のチェックが疎(おろそ)かにされていた」ことなどを挙げた。
 12年1月に「論文データに加工の疑いがある」という学外からの指摘を受け予備調査を実施、13年9月末から本調査を進めていた。加藤元教授は 「監督責任がある」として12年3月末に辞職。元教授は不正があったことを認めたうえで、「自分は指示したこともやったこともない」と調査に答えたとい う。

朝日新聞
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ようやく本調査結果の公表。約2年かかりました。しかしまだ中間報告。最終報告までどれだけかかるのでしょう。

2013年12月20日金曜日

コピペ・捏造、論文にあらず 不正対策に大学本腰

コピペ・捏造、論文にあらず 不正対策に大学本腰

2013年12月20日10時00分


【渡辺志帆】論文盗用やデータのでっちあげなど、大学での研究不正が後を絶たない。学術成果を無償でインターネット上に公開する動きが世界で進んで いることが、今まで以上に不正を犯しやすい環境を生み出しているようだ。不正発覚によって大学が受けるダメージは計り知れないと、各大学は対策を本格化さ せている。
■発表前にネット照合
 「博士論文を電子媒体化する作業が走り始め、非常に危険な領域に入りつつある」
 11月に和歌山市で開かれた国立大学協会総会で、名古屋大(名古屋市)の浜口道成総長は、約80人の学長らに呼びかけた。
 他人の著作を盗用し、自分のもののように発表することを「剽窃(ひょうせつ)」という。名古屋大は同月、発表前の論文をインターネット上の著作や学術誌データベースと照らし合わせ、過去に公表された著作物と似ていないかを調べる剽窃対策サービスを全学で導入した。4月に学位規則が改正され、博士論文の公表方法が、従来の「印刷」から「インターネットの利用」に変わったことも受けての対応だ。
 博士論文は、かつては大学や国立国会図書館に足を運ばないと読めなかった。今後は、大学内の学術成果を集めて管理する電子サービス「機関リポジトリ」や国立国会図書館のサイトで無料公開される流れがさらに加速する。そうした中、研究者が、罪悪感もないまま「コピー・アンド・ペースト(切り張り)」して作った論文がひとたびインターネット上に出回れば、大学が受けるダメージは計り知れない。
 名古屋大も導入した世界最大級の剽窃対策サービス「iThenticate」の国内販売担当者によると、不正研究で大学がこうむる損害は、事実関 係の調査費や補助金の打ち切りなどで、1件あたり約52万5千ドル(約5400万円)と試算されるという。名古屋大の剽窃対策サービスは年300万円のコ ストがかかるが、藤井良一副総長は「お金には換えられない、大学の信用が失われるリスクを避ける必要がある」と話す。
 倫理教育に力を入れる大学もある。10月に論文不正で開学以来初めて博士号の取り消し処分をした早稲田大東京都新宿区)。毎年約1万人に上る学部新入生らは、情報リテラシーを学ぶオンライン講座を受講する。合格しないと大学のネットワークIDを使えなくするなど、「倫理教育は他大学に比べても早くからやってきた」という。
 だが、同大の大野高裕教務部長は「幼い頃からインターネットに親しんだ今の学生は、剽窃が悪いことだとよくわかっていない者が多い」。一部のクラ スで、リポートなどの課題提出物を昨春から本格導入した剽窃検知システムにかけたところ、およそ1割が他人の著作と30%以上似ているという結果が出た。 これは「教員が経験的に盗用を疑うレベル」という。
■データを長期保存
 研究データのでっちあげである「捏造(ねつぞう)」も、深刻な研究不正の一つだ。
 東京大学病院内に設けられ、全国の研究者や学生ら約30万人が利用登録する「大学病院医療情報ネットワーク」(UMIN)は11月、臨床試験の不正予防などを目的に、すべての研究者が利用できる症例データリポジトリの運用を始めた。リポジトリでは、患者の個人情報を伏せた臨床研究症例のデータを無料公開。データの長期保存が可能になるため、資料が廃棄されて検証できない事態を防ぐことができ、研究者間の相互チェックも可能にする世界初の試みという。
 文部科学省系の独立行政法人科学技術振興機構(JST)の集計によると、1977年から2012年10月までに国内で発覚した研究不正は114件。このうち、6割が盗用やその疑いがある不適切な引用で、3割を捏造や改ざんが占めた。人文社会科学系の不正は9割が盗用型であるのに対し、自然科学系は半数以上が捏造・改ざん型だった。
■背景に電子化・雑誌高騰
 研究成果をインターネットで無料公開する「オープンアクセス」の動きは世界的な流れだ。
 背景には、1980~90年代の電子化やインターネット普及と、学術雑誌高騰がある。オープンアクセス化の動向に詳しい東大教育企画室の船守美穂 特任准教授によると、冷戦下の研究開発競争で研究者が増え、発表される論文と学術雑誌数が急増。学術雑誌の購読料は年約10%ずつ値上がりし、大学図書館 や研究予算を圧迫するようになった。
 こうした事態に、欧米の学術界は普及し始めたばかりのインターネットを使って対抗。大学や学会の「リポジトリ」上で学術成果を無料公開したり、独自の無料電子ジャーナルを発刊したりする「オープンアクセス運動」を展開した。
 当時の円高の影響で、日本は欧米ほど雑誌高騰の弊害を受けなかった。国がオープンアクセス促進をうたうのは11年の第4期科学技術基本計画からだが、国内の環境は整いつつある。
 船守特任准教授は「オープンアクセスは不可逆の流れ。博士論文のネット公表義務化も、研究成果を多くの人に見てもらえるプラスの面から捉えるべき だ」と話す。ただ、特許侵害や研究不正など課題もあるとして、「どうすれば効率よく学術情報を共有・流通させ、新しい知の創出の循環を作り出せるか、博士 論文公表の議論をきっかけに、考えていく必要がある」と話している。

朝日新聞
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改善が進むとよいです。

2013年12月18日水曜日

バルサルタン:臨床試験疑惑 調査出そろう 「効果あり」で不正 結論、データ操作に相関

バルサルタン:臨床試験疑惑 調査出そろう 「効果あり」で不正 結論、データ操作に相関

毎日新聞 2013年12月18日 東京朝刊


バルサルタンの臨床試験と大学の調査結果
バルサルタンの臨床試験と大学の調査結果

降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑は、千葉大が17日に中間報告を公表したことで、試験を実施した5大学の調査結果がひとまず出そろった。別の降圧剤とバルサルタンの 効果に大差はなかったと結論付けた2大学はデータ操作を否定し、特別の効果があったとする3大学は不正を示唆しており、試験の結論とデータ操作との相関関 係が浮き彫りとなった。調査を継続する大学もあるが、大学による調査が一定の結論に達したことで、今後の焦点は国の対応に移る。【八田浩輔、河内敏康】
 どの試験も、バルサルタンと他の降圧剤との比較が目的だった。全ての試験に販売元ノバルティスファーマの同じ社員(5月に退職)が関与していたが、元社員の存在とデータ操作との関係は解明されなかった。
 データ操作が判明した京都府立医大と東京慈恵会医大の試験は「他の降圧剤と比べて、脳卒中や狭心症のリスクを大幅に減らす」と結論付けていた。これらの結果は、他の試験と比べて際立って多く広告に使われた。だが両大学の調査で、バルサルタンの効果を強調する不正の痕跡が見つかった上、元社員に統計解析などを任せていたことが分かった。腎臓を守る作用があるとした滋賀医大でも、データ操作が示唆された。
 一方、名古屋大、千葉大は不正を否定する中間報告を公表。データを検証すると一部で不整合があったが、「意図的な操作ではない」と判断された。両試験は、バルサルタンに心臓を守る働きがあると指摘したが、脳卒中の予防など試験の主目的だった評価項目では別の降圧剤との間に差がなかった。元社員の関与も限定的だった。
 誰がデータ操作したのかについては、各大学で判断が分かれている。慈恵医大は元社員の不正への関与を示唆し、京都府立医大は元社員と共に大学の研究者にも疑いの目を向けた。滋賀医大は元社員の部下も参加していたが、大学は研究者による操作を疑っている。
 ノ社から5大学に提供された計11億円を超す奨学寄付金についても詳細な使途は明らかになっていない。
 厚生労働省は、誇大広告を禁じた薬事法に基づく調査を進めている。大学による任意調査の限界を指摘する声は強まっており、11月には民間団体が東京地検に告発状を提出している。

 ◇千葉大「不正なし」

バルサルタンの 臨床試験疑惑で、千葉大の調査委員会は17日、「現時点で、意図的にデータ操作が行われたことを示す内容は見いだせなかった」とする中間報告を発表した。 患者108人分について論文に使ったデータとカルテを照合したところ、各項目で5〜8%の不一致があったが再解析した結果、データ操作されたとは言えない と説明した。
 大学側は「あくまで内部的な調査だ」としており、データの照合作業を依頼した第三者機関の調査結果を待って最終報告する。
 千葉大の試験にはノ社の社員(5月に退職)が参加していたのに、論文では伏せられていた。ノ社から受けた奨学寄付金についても記載がなく、調査委は「説明が不十分だった」と批判した。千葉大の論文責任者は小室一成教授(現在は東京大教授)。【河内敏康、田中裕之】
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 ■ことば

 ◇バルサルタン臨床試験疑惑

ノバルティスファーマ(東京)の降圧剤バルサルタンに 血圧を下げるだけでなく、脳卒中予防などの効果もあるかを5大学が臨床試験をして確かめた。ノ社は各論文を大々的に宣伝に利用してきたが、今年に入って、 社員が全試験に参加していたことや研究チームに奨学寄付金を出していたことが発覚した。さらに東京慈恵会医大などの試験ではデータ操作されていたことも分 かった。ノ社は謝罪に追い込まれたが、データ操作への関与は否定している。バルサルタンは累計で1兆2000億円を売り上げてきた大ヒット薬。
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千葉大の調査は正当だったのでしょうか。

データに違い「意図的操作なし」 千葉大、高血圧薬論文

データに違い「意図的操作なし」 千葉大、高血圧薬論文

2013年12月17日23時33分

【今直也】製薬大手ノバルティスの高血圧治療薬ディオバンの効果を調べた臨床研究の論文不正問題で、千葉大は17日、8%のデータに食い違いが判明したものの、「意図的なデータ操作は見いだせなかった」との中間報告を発表した。第三者機関に解析を依頼し、その結果をもとに最終的な結論をまとめる。

これで問題とされた5大学の調査報告がそろった。千葉大と名古屋大は不正は確認されず、京都府立医科大、東京慈恵会医科大、滋賀医科大では不正や不適切なデータ操作があったとされている。
 千葉大の調査は、同大付属病院の高血圧の患者108人の統計解析に使ったデータとカルテを比べた。検査データで5~8%、血圧値では全測定値1512件のうち65件(4・3%)の食い違いがあった。大学側は、この食い違いが意図的か、単純ミスかは、現時点で判断できないという。
 研究は、小室一成元教授(現東大教授)らが高血圧患者1021人を対象に実施した。ディオバンは、ほかの高血圧治療薬に比べ脳卒中などを防ぐ効果は変わらないが、心臓の肥大などを防ぐ効果が高いなどとする論文を2011年に日本高血圧学会誌に掲載した。
 ノバルティスによると、研究室は2002~09年の間に同社から計2億4600万円の奨学寄付金を受けた。論文には資金提供を受けていたことの記載はなく、元同社員が「大阪市立大」の肩書で参加していた。報告書は「記載内容(説明責任)が不十分であると言わざるを得ない」と指摘した。小室教授は「最終報告が出るまではコメントは差し控えたい」としている。


朝日新聞
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千葉大は「意図的なデータ操作は見いだせなかった」と主張したのにデータの「
食い違いが意図的か、単純ミスかは、現時点で判断できない」としています。これは矛盾しています。不正はなかったとアピールしたいんでしょうね。

2013年12月16日月曜日

(がん新時代:61)「がんは放置してもいい」は本当か 主張と反論

(がん新時代:61)「がんは放置してもいい」は本当か 主張と反論

2013年12月15日05時00分

◇がん患者力
 医師の近藤誠さんが書いた「医者に殺されない47の心得」は、今年のベストセラーとなりました。しかし、近藤さんの「がんは放置してもいい」という考えには、ほとんどのがん専門医が「助かる命も救えなくなる」と批判しています。近藤さんの主張と、第一線の腫瘍(しゅよう)内科医である勝俣範之さんの反論を紹介します。
 ■「医者に殺されない47の心得」の著者 慶応大医学部講師・近藤誠さん
【主張】
・がんは発見時に転移が潜む「本物」と、転移しない「がんもどき」に二分類される
・「本物」は手術でも抗がん剤でも治らない。「もどき」は治療が不要。よって、無症状なら治療はしなくてよい
・検診を受ければ死亡数が減るという根拠はない
抗がん剤臨床試験の生存曲線は形が不自然で、人為的操作があったと推測できる
生活の質を上げるための治療は必要
 ■自覚症状なければ治療は不要
 がんは検診で早期発見されても、その時点で転移が潜む「本物」と、転移しない「がんもどき」に分けられます。本物は基本的に抗がん剤で治らず、手術はがん細胞の増殖を速める恐れがあるから治療は無意味です。「もどき」は転移しないから治療の必要がありません。どちらにしても、自覚症状がないなら何もしなくていい。これが「放置療法」です。
 今のがん診療は、早期発見して治療したら治るという前提で組み立てられています。しかし、根拠がありません。
 外国の研究で、肺がんの検診を受けた人の方が、受けていない人より死亡数が多いとの報告があります。早期発見で余計な手術や抗がん剤治療を受けたせいでしょう。ほとんどの国では肺がん検診は行いません。乳がんも、検診を受けても亡くなる人の数が減らないという報告があります。前立腺がんは死亡数の差がありません。
 一般的に早期だと「もどき」の割合が多いのです。マンモグラフィーで見つかる乳がんは99%「もどき」なので、私は「診断を忘れなさい」と言って帰します。これまで検診でさまざまな部位にがんが見つかった150人以上を様子見してきたが、ほとんど転移が出ません。
 まれに「本物」の場合もあります。5ミリの乳がんを放置した私の患者さんは、数年後にがんが大きくなり、その後転移も出てきて、18年後に亡くなりました。がんの成長速度から、初発病巣が0・04ミリのときに転移していたと推定されました。
 ただ、すべてのがんを放置するわけではありません。大腸がんによる腸閉塞(へいそく)など、生活の質を下げる自覚症状があるなら、治療すれば長生きできることもある。肝がんは「もどき」でも早期発見に意味がないとはいえません。乳がんの「もどき」も乳房の皮膚を破る場合は部分切除を勧めることもあります。
 抗がん剤に延命効果があるとした臨床試験の結果には、人為的操作の疑いがあります。多数の患者さんをきちんと追跡すると、生存曲線は下に凸になるはずですが、不自然に持ち上がっている。転移患者は多くが数年以内に亡くなるのに、追跡できなくなった人を「生存」とするから生存率が落ちないのです。
 乳がん抗がん剤ハーセプチンも生存期間は延びません。臨床試験の生存曲線に人為的操作が疑われます。薬が効いて元気なのではなく、「もどき」だったのです。ほかの分子標的薬も、肺がんなど固形がんには無力です。ただし、血液のがんや睾丸(こうがん)のがんなどは、抗がん剤で治る可能性があります。
 国内外の論文分析と、患者さんの症例をもとに主張しています。症例報告は科学的根拠が低いと批判されるが、放置しても転移しない例が一つでもあれば強力な反論材料になるのです。
 4月にセカンドオピニオン外来を開き、1300人来院しました。無症状の人は治療しない方がいいと伝え、生活の質が向上しそうなら治療方法を示します。決めるのは患者さんですが、最良の結末になることを願います。
 (聞き手・小林舞子)
    *
 慶応大医学部卒。83年から同放射線科講師。米国留学後、乳房温存療法を国内に広めた。65歳。
 ■第一線の抗がん剤専門医 日本医科大武蔵小杉病院教授・勝俣範之さん
【反論】
・がんは「がんもどき」と「本物のがん」に二分類はできない
・過剰治療の側面はあるが、治療しなくていいがんかどうかは見極められない
・検診による過剰診断を示すデータはあるが、検診の全否定にはつながらない
・「臨床試験の生存曲線は人為的に操作された」という主張に科学的根拠はない
・放置療法により助かる命も助からないこともあり、この主張は危険
 ■一部患者に当てはまる「仮説」
 近藤先生は、がんには「がんもどき」と「本物のがん」しかなく、積極的な手術や抗がん剤は不要、と主張しています。面白い説ですが、これは一部の患者さんに当てはまる「仮説」です。
 がんの治療には色々な考え方、選択肢があるということを提案した点では、近藤先生の主張は評価できると思います。ただ、医学的データを近藤先生の 個人的な偏った見解に基づいて極端に示しており、患者に混乱をもたらしている点は注意が必要です。近藤先生が本で書かれている主張を「すべて正しい」と判 断するのではなく、「一部の患者さんに当てはまる」と読むと、理解しやすくなると思います。
 がんに積極的な治療が行われているのは、こうした治療に効果のあるがんが確実に存在するからです。一部の患者さんには、過剰治療になるかもしれませんが、どんながんなら手術や抗がん剤が不要なのか、まだよくわかっていないのが現状です。
 検診による過剰診断を示すデータがあることも確かです。それでも、一部の研究結果をもって、検診の有効性をすべて否定することにはなりません。最近、乳がん検診で過剰診断が行われていることがわかってきましたが、検診をすべてやめた方がいいとの見解にまでは至っていません。
 現在、遺伝子のタイプを調べて積極的な治療の必要の有無を見極めようという研究が進んでいます。例えば、乳がん抗がん剤ハーセプチンは特定の遺伝子に変異があるがん患者さんには非常に有効で、生存期間が大幅に延びました。
 近藤先生がハーセプチン臨床試験について「生存曲線がおかしい。人為的操作が加わったと思われる」と主張しているのは、全く根拠がありません。承認に関わる臨床試験(治験)のデータは国による立ち入り調査も行われるため、人為的操作を行える隙がありません。
 「放置療法の勧め」という言葉を聞いたときは、本当に驚きました。近藤先生の元に通う患者という一部の偏ったデータに基づいているわけで、それは科学的根拠になりません。
 インフォームド・コンセントは、患者さんの自己決定が大切と言われますが、正しい情報を提供されることが大前提です。5ミリの早期の段階で乳がんが見つかった近藤先生の患者さんも、手術をすれば、90%以上の確率で治ったはずです。正しい情報をしっかり伝えられた上での自己決定だったのか、疑問です。
 進行がんにやみくもに抗がん剤を使うのは、私も反対です。そういう意味では放置療法もやはり、一部の患者さんには当てはまるのです。ただ、「放置すべきだ」という一方的な言い方ではなく、正しい情報提供と、患者さんの意向を尊重する良いコミュニケーションが大切です。
 放置療法は、近藤先生の個人的な考えによる「仮説」です。患者さんやその家族は、放置することの危険性を十分に理解してほしいと思います。
 (聞き手・岡崎明子)
    *
 富山医科薬科大卒。国立がん研究センター中央病院乳腺科・腫瘍内科外来医長を経て現職。50歳。
 ◆日本対がん協会から
 がんの経験者が自らの病気について語る、とはどういうことでしょうか。
 今月初旬の土曜日、東京・秋葉原でがん経験者、医療関係者、国の政策担当者、メディア関係者が集まり「キャンサー・サバイバー・フォーラム」(日本医療政策機構、キャンサーネットジャパンなど主催、日本対がん協会など後援)が開かれました。
 「職場では後遺症も含めがんを知ってほしい。患者もがんを言い訳にしない」(清水敏明さん=舌がん経験)、「情報が得られず退院後に苦労した。情 報は貴重、シェアすることも大切」(岸田徹さん=胎児性がん経験)、「婦人科のがんは偏見をもたれやすい。事実を訴えていくことが使命と思う」(麻美ゆま さん=境界悪性腫瘍経験)と重みのある発言が続きました。
 ろう者で乳がん経験のある皆川明子さんは「医師とのコミュニケーションに不安がある。筆談や身ぶりでは情報量も限られる。すべての人が安心して治療を受けられる社会にしたい」。
 初めて講演台に立つ人もいます。嗚咽(おえつ)しながらも明るく振る舞い、命の大切さを訴えてました。
 阿南里恵さんは23歳で子宮頸(けい)がんを発症。人には同じ苦しみをさせたくないと講演を始め、日本対がん協会でがん征圧に向け奮闘中です。「講演活動で人生が大きく変わった。多くの出会いがあり、国のがん対策推進協議会にも加わっている。皆さんも勇気をもって発信してください」
 「がんを知って、がんの偏見をなくそう!」と宣言し、幕を閉じました。
 (協会事務局長・塩見知司)

朝日新聞
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真偽はどうでしょう。

2013年12月12日木曜日

研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論

研究不正:自浄期待は「理想論」 日本分子生物学会が防止策を議論

毎日新聞 2013年12月12日 東京朝刊

 生命科学の研究不正疑惑が後を絶たない。日本分子生物学会(会員数約1万5000人)は今月、3日間にわたるフォーラムを神戸市で開き、防止策などを議論した。だが、延べ10時間近い議論は紛糾、「性善説」に基づく対策の限界も明らかになった。

 ●不安定な倫理基盤
 研究者にとって論文は業績の指標。競争が激しい生命科学分野では、データの改ざんや画像の使い回しといった不正がたびたび起きてきた。画像の加工が簡単にできるソフトの普及が、不正を招きやすくしているとの指摘もある。
 「特殊な一部の人の問題ではなく、我々が抱える内部構造の欠陥が背景にある。生命科学研究は急速に進展 したために倫理基盤が不安定だったのかもしれない。自らを律し、不正への対応を現場から考えたい」。同学会研究倫理委員の篠原彰・大阪大教授は、フォーラ ムを企画した意図を説明する。
 きっかけは、東京大の加藤茂明・元教授のグループによる不正。加藤氏は総額20億円に上る国の大型研究プロジェクトを主導しており、同学会でも若手向けの教育責任者だった。このことも関係者を驚かせた。
 ●10%が「目撃、経験」
 議論の前半は「不正をどう防ぐか」が中心。学会の全会員に実施したアンケート結果をめぐって意見を交わ した。この調査は回答者の10・1%が「所属する研究室内で、捏造(ねつぞう)や改ざんなどの不正行為を目撃、経験した」という内容で、事実なら不正の常 態化を示す深刻な状況だ。
 「回答率(7・9%)が低い。数字が独り歩きするのは危険」という懐疑的な意見の一方で、「皮膚感覚ではもっと多い」という指摘もあった。倫理教育の充実を、という意見には異論がなかったものの、規制や罰則の強化で抑止できるとの提案には賛否両論の意見が出た。
 高橋淑子・京都大教授は「基礎研究がビジネスのように過度に競争的になっている。日常から成果を開示 し、互いに議論する努力が不幸な事例を防ぐ」と、自浄作用に期待を込めた。論文を掲載する英科学誌ネイチャーの編集者も、論文の審査体制を強化したことを 報告しながら「出版の原則は(研究者への)『信頼』だ」と強調した。
 だが会場からは、これらを「理想論」と断じ、厳罰化を求める意見が出た。発言者は「不正な論文で得をする人の後ろには、競争的資金やポストを逃す人がいる」と訴えた。
 ●「身内」調査に限界
 不正疑惑が浮上した後の対応について議論した後半では、研究者の所属組織に調査を委ねる現行システムの 「限界」も指摘された。加藤元教授のケースでは、東京大が学外の告発を受けて昨年1月に調査を始めたが、2年近くが経過した今も結果は公表されていない。 降圧剤バルサルタンを巡る不正疑惑では、責任者が所属していた京都府立医大は最初「不正はない」との内部調査結果をまとめたが、関係学会の要請で再調査し た結果、データ操作が判明。こうした「身内」による調査は公正性を疑われかねず、米政府が設置している研究公正局(ORI)のような公的組織を設置すべき だとの意見もある。
 学会研究倫理委員長の小原雄治・国立遺伝学研究所特任教授は「一定の確率で出る(不正)事案には共通の 基準で対応すべきだ。その場合は第三者機関が必要」と提案。中山敬一・九州大教授も「日本版ORIに調査を主導する専門官を置き、裁判員裁判のように調査 員を委嘱すればいい」と賛同した。
 これに対し、学会理事長の大隅典子・東北大教授は「取り締まる第三者機関があるのは末期的だと思う。できればそこに至る前に食い止めたいというのが個人的な意見」と話した。学会は今回の議論を倫理教育に反映させるほか、ホームページで議事録を公開し、科学界以外にも広く議論を呼びかけたいとしている。【八田浩輔】
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 ◇加藤茂明・元東京大教授グループの論文不正問題

東京大分子細胞生物学研究所を昨年3月に退職した加藤元教授のグループが1996年以降に発表した論文 43本について、東大の調査委員会がデータ画像の改ざんなどの不正を確認したと今年7月、報じられた。論文のテーマはDNA複製の仕組みなど多岐にわた る。論文執筆には16年間で20人以上が関わっていた。加藤氏は不正への直接関与は認めていないが、調査委は監督責任を指摘している。

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研究公正局は必要でしょう。

2013年11月29日金曜日

野口昌幸、水津太北大グループの論文改ざん疑惑、パワハラによる圧殺、北大の不正隠蔽・放置報道について

 財界さっぽろ2012年4月号で北海道大学N教授に関し以下の報道があった。

 

  

 

画像1 [1]より。 ただし、3枚目p200の広告部分は削除。


 画像2 実験データ部分の抜粋 [1]

責任著者・野口昌幸北大遺伝子病制御研究所教授、筆頭著者・水津太同研究所講師が発表したDevelopmental Cell誌の論文[2]を見ると以下の2つのデータが掲載されている。

 

 

画像3 どちらも[2]より。ただし、他のデータ部分は削除。

どう見ても画像2の右半分の画像と画像3は同一。従って、[1]で報道されたN教授は野口昌幸(Masayuki NOGUCHI)ということになる。画像1に掲載されているMolecular Cell誌に投稿された論文と比較すると画像操作があったと画像1の記事は主張している。根拠は画像1を見ていただければわかるだろう。[1]では実験データの捏造となっているが、画像操作なら改ざんというべきだろう。

[1]ではパワハラ、不当解雇などがあり、「N教授は某有名大学のT教授と親交が深い。T氏は文部科学省の審議会で、科学研究費の配分を決める委員を務めている。教授選でまわりの教授たちがN教授に票を入れたのは、研究費を多くとれるとの算段があったため。しかし、T氏もねつ造疑惑のある研究室に科研費は出せない。研究費がとれなくなったN教授は実績をあげるためにさらにねつ造を繰り返している。しかし、大学側は彼を教授に選んだ以上、それを放置するしかないのが現状のようだ[1]」と言及されている。青酸カリや覚せい剤に関することも言及されている[1]。青酸カリ事件は確かに報じられた[5]。

画像[1]で触れられている怪文書BOXの文章は次のもの。


[3]より

さらに[1]では「09年に掲載された論文もメディアには『世界初の発見』と取り上げられたが、学会内では無視されている[1]」とも言及されている。そのメディアの報道北大のプレスリリースはリンク先のとおり。

[1]の記事のようなことは北大だけでなく他の研究機関でもある。パワハラによる圧殺、不正強要、研究機関の不正隠蔽・放置に関しては本ブログでも執筆した(関連1関連2関連3関連4)。このようなパワハラによる圧殺があるためか、匿名告発にも対応するように主張する人もいる

現在は研究不正対応に関する改善策が検討中で、来年4月にガイドラインが改訂されるが、ぜひこれまで述べてきた主張が反映され、十分な改善策が作られてほしいと思う。

参考
[1]財界さっぽろ 2012年4月号 写し
[2]Futoshi Suizu,et al.:"The E3 Ligase TTC3 Facilitates Ubiquitination and Degradation of Phosphorylated Akt" Developmental Cell, Volume 17, Issue 6, 15 December 2009, Pages 800–810
[3]財界さっぽろ 告発文・怪文書BOX写し 2009.11.21

(注意書き)

『弊社へ寄せられた告発文、怪文章を公開しています。掲載されている文章の内容、事実関係の真偽、信憑性については一切保証されておりません。当コーナーへのご質問、ご意見などは受け付けておりませんのでご了承下さい。』

[4]野口昌幸の経歴紹介1紹介2、水津太の経歴と紹介
[5]北海道新聞 記事の一部の写し 2009.5.21

2013年10月15日火曜日

毎日新聞社説:バルサルタン疑惑 真相究明し再発防げ

社説:バルサルタン疑惑 真相究明し再発防げ

毎日新聞 2013年10月13日 02時30分

 製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)に血圧を下げる以外の効果もあ るとした臨床試験疑惑で、厚生労働省の検討委員会は「実態としてノ社が関与していた」とする中間報告をまとめた。不正な論文を使った宣伝は誇大広告の疑い があり、薬事法に基づく調査を国に求めている。再発防止に真相の究明は不可欠だ。厚労省は全力を挙げてほしい。
 バルサルタンを巡っては、東京慈恵会医大と京都府立医大で論文のデータに不正操作があり、ノ社の社員(既に退職)が肩書を伏せて解析に関与していたことが分かっている。
 検討委が関係者に事情聴取した内容からは、業績作りに励む研究者と論文を薬の宣伝に利用したい製薬会社のもたれあいの構図が浮かぶ。
 両大学の元教授らは「関係者が一つにまとまる企画がほしかった」と目的を説明し、学内に統計に詳しい者はいなかったと口をそろえた。研究が医学的課題の解明を目指したものではなく、体制もお粗末だったことに驚く。まさに患者不在である。
 一方、元社員は業務として研究を支援したと述べている。ノ社は奨学寄付金として慈恵医大と府立医大の講座に計約5億7000万円を提供し、臨床試験に使われることを期待していたという。「学術研究や教育の充実という寄付金本来の趣旨と異なる」(中間報告)のは明らかだ。
 論文は宣伝に使われ、バルサルタンは国内の年間売上高1000億円を超す人気薬になった。
 検討委の調査は任意で、関係者はいずれも不正への関与を否定したため、誰が何の目的でデータ操作したか は特定できていない。薬事法に基づく厚労省の調査なら、製薬会社が調査に協力しない場合、罰金も科せる。田村憲久厚労相は「刑事告発を否定するわけではな い」としており、厳正な対処を求めたい。
 ノ社が不当に得た利益をどうやって返還させるかについても、厚労省は知恵を絞ってほしい。
 中間報告は国に臨床研究の規制強化の検討も求めた。新薬の承認申請を目的とした「治験」には薬事法に基 づく規制や罰則があるが、バルサルタンの臨床試験は新薬としての承認後で、強制力のない倫理指針しかない。再発を防ぐには一定の法規制が必要だろう。コス トが増え、臨床研究が減るとの懸念もあるが、研究の質は向上するはずだ。本当に必要な研究なら、国が支援すればいい。
 中間報告は、今回の疑惑を「国益の損失にもつながる重大な問題」だという。安倍政権は医療を成長戦略の柱に据える。日本の臨床研究にその資格や実力があるのかを、バルサルタン疑惑は問うている。

写し

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現状を改善してください。


バルサルタン:滋賀医大もデータ不正…学内調査指摘へ

バルサルタン:滋賀医大もデータ不正…学内調査指摘へ

毎日新聞 2013年10月13日 07時02分(最終更新 10月13日 09時50分)

降圧剤バルサルタン(商 品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、滋賀医大の学内調査委員会が、データ操作された可能性を指摘する報告書を月内に公表する方向で最終調整していること が、複数の大学関係者への取材で分かった。論文に使われた血圧などの患者データの15%程度がカルテに記載されていた元の数値と一致していないという。こ の問題では東京慈恵会医大、京都府立医大でデータ操作が分かっており、不正は3大学に拡大する見通しとなった。【千葉紀和】

 滋賀医大の研究責任者は、同大病院長で副学長の柏木厚典(あつのり)氏。関係者によると、柏木氏は調査委に対し、データの不一致は10%以下だとしたうえで「原因は入力ミスなどのヒューマンエラー。論文の結論に間違いはない」などと操作を否定しているという。

 試験には、製薬会社ノバルティスファーマの社員2人(共に既に退職)が関わっていた。柏木氏は社員と 知っていたが、論文に明示しなかった。2人は上司と部下で、上司だった元社員の論文上の所属は、慈恵医大などと同様に「大阪市立大」となっていた。元部下 は、滋賀医大の研究員としてデータ管理や統計解析などに深く関わっていた。2007年にノ社を退職して同大の大学院生となり、現在も客員助教を務めてい る。

 滋賀医大の臨床試験は03~06年に実施された。糖尿病を伴う高血圧患者150人について、バルサルタンの腎臓を保護する効果を他の薬と比較し、バルサルタンの効果が高いと結論づけた。論文は07年に米国の糖尿病専門誌に掲載された。ノ社から研究室に02~08年、総額6550万円の奨学寄付金が支払われていたことも分かっている。

 滋賀医大は一連の疑惑を受け、今年5月に研究行動規範委員会(学内教員4人、学外有識者1人)を設置。10回の会合を開き、データの照合や元社員2人からの聞き取りを終えた。

 バルサルタンに 脳卒中予防など血圧を下げる以外の効果もあるかを確かめた臨床試験は、計5大学で実施され、ノ社は論文を宣伝に利用してきた。しかしデータ解析などを社員 が担い、ノ社から大学側に寄付金が出ていたことが発覚。慈恵医大と府立医大の調査でデータ操作されていたことが判明した。滋賀医大の他、千葉大、名古屋大 でも調査している。厚生労働省の有識者による検討委員会は9月、徹底調査を国に求めた。

写し

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SMARTも改ざんがあったのでしょうか。バルサルタン臨床研究の論文は全滅するかもしれません。

2013年10月11日金曜日

ディオバン問題 JIKEI HEART Study中間解析結果を主任研究者らが熟知“統計解析者と綿密な打ち合わせ”

ディオバン問題 JIKEI HEART Study中間解析結果を主任研究者らが熟知“統計解析者と綿密な打ち合わせ”

降圧薬・ディオバン(一般名:バルサルタン)をめぐる大規模臨床試験「JIKEI HEART Study」の中間解析段階で、主任研究者である東京慈恵会医科大学循環器内科の望月正武教授(現・客員教授)に対し、共同主任研究者のス ウェーデン・イェーテボリ大学准教授のBjorn Dahlof氏が、「統計学者とも綿密に打ち合わせて、ぜひ、有意差が出る地点まで試験を継続させてください」と指示していたことが分かった。両氏はま た、中間解析の時点から、薬剤の有効性をはかる主要評価項目(プライマリーエンドポイント)の結果を熟知していたことも明らかになった。これら内容が事実 だとすれば、厚労省の「高血圧症治療薬の臨床研究事案に関する検討委員会」(森嶌昭夫委員長)の中間報告や、東京慈恵会医科大学Jikei Heart Study調査委員会(橋本和弘委員長)の調査委員会報告書とも反する。医師主導臨床研究における主任研究者側の研究に対する知識や倫理観の欠如、さらに は臨床研究体制の不備など、研究者側も大きな問題を抱えていたことが浮かび上がってきた。


この会話は、望月正武教授とBjorn Dahlof氏の対談として、日経BP社の日経メディカル2005年4月号にノバルティスファーマ提供の記事広告として掲載された。両氏の会話を以下に抜粋する。


Dahlof:「この中間報告ではプライマリーエンドポイントに両群間に有意差はないとのことですが、その差は約30%ですから、この違いが保持されたままイベント数が倍になれば有意差が出てくると考えられます」
望月:「最終的にプライマリーエンドポイントの数は約300例になると予測しています」
Dahlof:「そこまでいくと有意差が出るでしょうね。臨床試験ではプライマリーエンドポイントで有意差が出ることが最重要です。担当の統計学者とも綿密に打ち合わせて、ぜひ、有意差が出る地点まで試験を継続させてください」
望月:「セカンダリーエンドポイントについてはいかがでしょうか?その詳細はまだ分からないのですが…」。

◎研究者側が主要評価項目の内訳まで熟知


望月教授は対談の中で、試験デザイン に加え、2002年1月16日~04年8月20日までのデータを対象とした中間解析を解説した。中間解析時点で発生し たイベントについては、「狭心症42例、脳卒中33例、心不全24例、心筋梗塞9例、腎不全1例、大動脈解離1例、死亡17例(そのうち心血管によるもの 4例)でした」と説明。試験登録時の患者背景として疾患の内訳を示したほか、試験解析から30か月時点までの血圧値も、いずれの群であるかは明記されてい ないものの、2群に分け、推移を示した。

JIKEI HEART 年譜

2002/01/16 試験の患者登録を開始
2004/07/01 試験デザインの論文がCardiovascular Drugs and Therapyに掲載
2004年9月~12月頃 中間解析を実施
2004年11月末 試験の患者登録を終了
2005/04/01 東京慈恵会医科大学望月正武教授、スウェーデン・イェーテボリ大学Bjorn Dahlof氏対談掲載
2005/12/01 経過観察を終了、「両群のエンドポイントに有意差が認められた」として試験を終了
2006/09/05 第28回欧州心臓学会議(ESC)・第15回世界心臓学会議(WSC)(スペイン・バルセロナ)のHot Lineセッションで結果を報告
2006/10/18 第21回国際高血圧学会(ISH)(福岡)の「Late-breaking Clinical Trials」セッションで結果を報告
2007/04/28 医学誌「The Lancet」に論文掲載

望月教授はまた、日経メディカル2005年7月号の記事広告の中で、副次評価項目(セカンダリーエンドポイント)の発生数にも言及している。この段 階で望月教授やDahlof氏は、患者背景に加え、同剤の有効性を示す主要評価項目の内訳まで熟知されていたことがうかがえる。


本来、統計解析者はデータの信頼性確保の観点から、主任研究者から独立し、解析を行うことが求められている。ところが、両氏のやりとりを見る限り、本来行ってはならない、主任研究者から統計解析者への“指示出し”する発言など、解析への介入を口にしている。


東 京慈恵会医科大学Jikei Heart Study調査委員会の中間報告では、「望月教授らは、これらの統計解析には一切関与しておらず、ノバルティス元社員から受領した解析結果を所与のものと して受領していた。望月教授らにとって、患者データの統計解析過程は、ブラックボックスになっていた」とされている。


さらに、 同大が7月30日に開いた記者会見でも、橋本和弘委員長は、「統計解析は、この試験に限らないが、独立したところで実施するのがほぼルール。この 方に統計解析を任せることになる。統計解析については、(同大研究者の)責任は問えない」と述べている。これらの発言も実態とは相反することになる。


◎中間解析段階でデータの詳細を主任研究者、製薬企業が把握 結果に影響?

こ れら内容は“記事広告”であったため、望月教授も、掲載前に自身の発言や掲載データについて確認していたとみられる。同時に、ノバルティスファーマの社 内でも担当部署でのチェックが行われていた。つまり、中間解析段階から、主任研究者、企業の双方が、データを熟知し、“ディオバンの有効性を示し、一流誌 LANCETに掲載する”ことを目的とした臨床研究が行われていたとみられる。



【解説】問われるべき研究者の知識不足、倫理観欠如の“責任”


一連のディオバン問題の背景には、研究者側の臨床試験への知識不足、そして倫理観の欠如がある。この問題は、一社の製薬企業の責任ではすまされない、日本の“医師主導”臨床試験が抱える構造的課題を示している。


中 間解析の詳細を主任研究者側が知っていたことの意味を考えたい。中間解析とは、本来データモニタリング委員会が臨床試験の中間データをレビューし、患者 に不利益がないか検討することを目的に実施される。解析結果を踏まえ、当初の予定通り試験の継続の可否を主任研究者側に勧告する。たとえば、いずれかの群 で明らかに有効性が高い場合は早期中止を勧告する一方、安全性に懸念があれば中止を主任研究者側に勧告を行う。2群間の有効性を比較するためのものではな い。さらに言えば、一般的にこの時点でデータの詳細を主任研究者側に伝えることもない。主任研究者が中間解析段階で詳細なデータを知ることで、それ以降の 研究が主任研究者の意図する方向に、“バイアス”が働く可能性があるためだ。


日本製薬工業協会 医薬品評価委員会データサイエンス部会、日本 CRO 協会 統計・DM ワーキンググループの合同タスクが2012年6月にまとめた「中間解析実施とデータモニタリング委員会運営のためのガイダンス」でも、「中間解析の結果が 試験完了前に漏洩すると,試験治療の比較にバイアスをもたらす危険性があるため,中間解析後の試験運営に中間解析結果を必要としない関係者が知ることがな いようにするなど、情報管理にはとくに配慮すべき」とされている。


特に、JIKEI HEART Studyで用いられた、“PROBE法”では、研究者、患者がどちらの治療群に割り付けられたかを知った上で、試験が進行する。発生したイベント(エン ドポイント)は、患者がいずれの群に割り付けられたことを知らないエンドポイント委員会が判定する。中間解析段階から詳細なデータを知っていたとすれば、 その後研究者による意図的な介入が働く可能性も否定できない。


複数の関係者によると、「(同試験の)データ安全性評価委員会は 形骸化していた」とも指摘されており、本来検討すべきデータ安全性評価委員会がこれらデー タを検討せず、主任研究者自身がデータを確認していたとみられる。データを熟知することで、目的とした結果を出すために誘導していた可能性も高い。


試 験が実施された2000年初頭、日本では大規模臨床試験の黎明期ともいえる時期だった。国際的に通用する臨床試験を行おうという試みは、JIKEI HEART Studyが最初と言っても過言ではない。しかし、その分当時の臨床試験の実施体制は脆弱だった、と言わざるをえない。本来独立していなければならない統 計解析者をはじめ、製薬企業のサポートなくして、“医師主導”の臨床試験を行うことは難しいのが現状だったと言える。


一方で、 この現状は依然として十分改善しているとは言い難い。現在でも、臨床試験について医師に対する教育は十分行われておらず、臨床試験と治験の違いも 十分に理解されていないのが現状だ。信頼性の高い臨床試験の実施に必須と言える、統計解析者の養成やデータセンターの整備も進んでいないのが現状だ。独立 したデータセンターや統計解析者を一大学で擁することは、コスト面、人材面ともに難しいことも指摘されている。このような、日本の臨床研究体制の未熟さ が、一連のディオバン問題のような、研究者と製薬企業との癒着ともとられかねない状況を招いたともいえる。本来であれば、これを機に、ひとつの大学や地域 だけではなく、国としての臨床試験の教育体制や、統計解析をはじめ、臨床試験運用のサポート体制の整備も求められるところだろう。


た だ、忘れてはならないのは、臨床試験の対象は患者であることだ。医学を研究する者にとって、一流誌LANCETに論文が掲載されることは、世界的に優秀 な研究者として称えられる名誉を手に入れることを意味する。本来、臨床試験は、臨床現場で行われたクリニカル・クエスチョンに対する答えを出すことを目的 にために行われるべきだ。“医師主導”で行う臨床試験であれば、なおさらだ。仮に、名誉のために“結果”ありきの医師主導の臨床研究が行われていたとすれ ば、医師である研究者の“罪”は重い。
(Monthlyミクス編集部 望月英梨)
ミクスOnline 2013.10.7
写し

2013年9月17日火曜日

山本謙吾 東京医科大学らの論文が二重投稿で撤回!

山本謙吾(Kengo YAMAMOTO)東京医科大学整形外科主任教授らの論文が二重投稿で撤回された[1][2]。二重投稿は不正行為。しかも複数論文で二重投稿をし悪質。このような行為は決して許されない。

ところで東京医科大学主任教授の二重投稿や教授選時の論文数水増しは朝日新聞で報じられました写し)。

参考
[1]論文の二重投稿による撤回公告 2011.8

撤回された論文は

"Cement spacer loaded with antibiotics for infected implants of the hip joint"
the Journal of Arthroplasty, Volume 24 (January 2009), Issue 1, pages 83-9.

筆頭著者 山本謙吾 (Kengo Yamamoto) 東京医科大学整形外科主任教授 - 共著論文

[2]論文の二重投稿による撤回公告 2011.5

撤回された論文は

"Treatment of Epiphyseal Injury of the Distal Ulna Without Associated Radial Fracture"
Orthopedics. 2006; 29[2]:157-159.

筆頭著者 山本謙吾 (Kengo Yamamoto) 東京医科大学整形外科主任教授 - 共著論文

2013年9月16日月曜日

加藤茂明教授のこと

加藤茂明教授のこと

 上 昌広

今夏、福島県南相馬市で、野馬追いのハイライト 神旗争奪戦を観戦した。ご一緒したのは、加藤茂明・元東大分子細胞生物学研究所教授だ。
先日、加藤元教授の研究室の不正行為に関し、東大が行った予備調査の結果が明らかとなった。マスコミが大きく取り上げたため、ご存じのかたも多いだろう。
報道によれば、加藤研が発表した165報の論文中、53報で問題が指摘され、そのうち43報で不正が確認されたという。日本を代表する研究 室が、大量の論文を捏造していたことになる。今回の事件は、論文捏造の実態を考える上で、示唆に富む。私は、この件について、加藤元教授から相談を受けて いた。そして、予備調査報告書を実際に見せて貰ったことがある。そこには、論文の不正箇所、不正を働いた研究者の名前が明記されていた。
驚いたのは、不正の構図が複雑であることだ。加藤元教授の指示のもと、研究室をあげてデータを捏造した、という単純な話ではない。多くの場合、論文の筆頭著者と、不正を働いた研究者は別人だった。不正の大部分は、当時、助手を務めた一部の研究者によって行われていた。
私には、不正の露見を避けるため、彼らが細心の注意を払っていたように見える。例えば、論文の結論を変えるような不正はなく、殆どが「デー タを綺麗にして、説得力を増す」程度のものだった。医学研究で不正がばれるのは、結果が再現されない場合だ。このやりかたでは、そんなことは起こらない。
逆に、一旦、このような不正に手を染めると歯止めが効かなくなるようだ。彼らが関わる論文の多くで、不正が指摘されていた。おそらく、恒常的にデータを改竄していたのだろう。
今回の調査を受け、関係者は処分を免れない。加藤元教授は2012年3月をもって東大を辞職しているし、東大は不正に使った研究費を返却す るという。やがて、責任問題追求の矛先は、実際に不正を行った研究者達や、彼らのかつての部下にも向かうだろう。一部の助手は、不正を指摘された研究が評 価され、他大学の教授に就任している。辞職は避けられないだろう。
一方、不正研究で学位をとった大学院生の処遇は難しい。今後の調査結果を待たねばならないが、彼らは不正を知らなかった可能性が高いからだ。彼らをどう処遇するか、医学界をあげて議論しなければならないだろう。
加藤研のケースは氷山の一角だ。バルサルタン事件では、複数の研究室の名前が挙がっている。また、ウェブでは、多くの医学研究者が不正を指摘されている。彼らは、どのような対応をとればいいのだろうか。
加藤元教授の対応は、彼らにとって参考になると思う。特記すべきは、加藤元教授が東大の調査に全面協力するとと もに、社会に対して、自分の言葉で説明したことだ。かつての部下達に「すべての研究資料やノートを提出し、調査に協力するよう」に伝えたことは、バルサル タン事件で逃げ惑う医師や製薬企業関係者とは対照的だ。また、加藤元教授は、取材を希望するメディアすべてに対し、丁寧に対応した。知人の記者は「自分の 責任をきっちりと認めています。さらに、正直に問題を説明してくれます。こんな人は初めてです」という。このようなやりとりを通じ、ゆっくりではあるが着 実に、問題の本質が社会に伝わりつつある。
医学研究の信頼が揺らいでいる。信頼を回復するには、嘘をつかず、正直に社会に説明することが欠かせない。加藤元教授の取り組みに注目したい。

本稿は、医療タイムスでの連載を修正加筆したものです。
 
Yahoo Japan ニュース 2013.9.4
 


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加藤事件の不正実行者は助手を務め他大の教授になった人もいるという。群馬大のH.K.のことだろう。昨年3月にセルの論文が撤回されて報道された。それの筆頭著者だ。

現状で不正実行者に上がいうような説明責任を果そうとする者はほとんどいない。それではいけない。

2013年9月15日日曜日

Influential Reinhart-Rogoff economics paper suffers spreadsheet error

Influential Reinhart-Rogoff economics paper suffers spreadsheet error

April showers bring … database errors?

The other day, we wrote about two retractions in the Journal of the American College of Cardiology, and another in the American Heart Journal, stemming from database errors.
Seems to be catching.
The Economist (among other outlets) this week is reporting about a similar nother database glitch — not, we’ll admit, a retraction — involving a landmark 2010 paper by a pair of highly influential economists. The controversial article, “Growth in a Time of Debt,” by Harvard scholars Carmen Reinhart and Kenneth Rogoff, argued that countries that took on debt in excess of 90% of their gross domestic product suffered sharp drops in economic growth. That evidence became grist for the austerity mill, including Paul Ryan.
Turns out, that conclusion was based to some extent on an Excel error. As the business press explained, a trio of researchers at the University of Massachusetts,  Thomas Herndon, Michael Ash and Robert Pollin, found that the Reinhart/Rogoff anlysis had excluded a handful of critical data points by basically lopping them off the spreadsheet. The result: Their claims about the deleterious effects of debt on growth are somewhat — indeed, substantially, in a way — overstated.
As the U. Mass economists note in their rebuttal paper, “Does High Public Debt Consistently Stifle Economic Growth? A Critique of Reinhart and Rogo ff“:
Herndon, Ash and Pollin replicate Reinhart and Rogoff and find that coding errors, selective exclusion of available data, and unconventional weighting of summary statistics lead to serious errors that inaccurately represent the relationship between public debt and GDP growth among 20 advanced economies in the post-war period. They find that when properly calculated, the average real GDP growth rate for countries carrying a public-debt-to-GDP ratio of over 90 percent is actually 2.2 percent, not -0:1 percent as published in Reinhart and Rogo ff. That is, contrary to RR, average GDP growth at public debt/GDP ratios over 90 percent is not dramatically different than when debt/GDP ratios are lower.
The authors also show how the relationship between public debt and GDP growth varies significantly by time period and country. Overall, the evidence we review contradicts Reinhart and Rogoff ’s claim to have identified an important stylized fact, that public debt loads greater than 90 percent of GDP consistently reduce GDP growth.
In the interest of full disclosure, we’ll also quote the two corrections to this paper:
(1) The notes to Table 3: “Spreadsheet refers to the spreadsheet error that excluded Australia, Austria, Canada, and Denmark from the analysis.” is corrected to read: “Spreadsheet refers to the spreadsheet error that excluded Australia, Austria, Belgium, Canada, and Denmark from the analysis.”
(2) Page 13: “Thus, in the highest, above-90-percent public debt/GDP, GDP growth of 4.1 percent per year in the 1950-2009 sample declines to only 2.5 percent per year in the 1980-2009 sample” is corrected to read “Thus, in the lowest, 0–30-percent public debt/GDP, GDP growth of 4.1 percent per year in the 1950–2009 sample declines to only 2.5 percent per year in the 1980–2009 sample.”
Reinhart and Rogoff, for their part, have acknowledged the error:
We literally just received this draft comment, and will review it in due course. On a cursory look, it seems that that Herndon Ash and Pollen also find lower growth when debt is over 90% (they find 0-30 debt/GDP , 4.2% growth; 30-60, 3.1 %; 60-90, 3.2%,; 90-120, 2.4% and over 120, 1.6%). These results are, in fact, of a similar order of magnitude to the detailed country by country results we present in table 1 of the AER paper, and to the median results in Figure 2. And they are similar to estimates in much of the large and growing literature, including our own attached August 2012 Journal of Economic Perspectives paper (joint with Vincent Reinhart) . However, these strong similarities are not what these authors choose to emphasize.
The 2012 JEP paper largely anticipates and addresses any concerns about aggregation (the main bone of contention here), The JEP paper not only provides individual country averages (as we already featured in Table 1 of the 2010 AER paper) but it goes further and provide episode by episode averages. Not surprisingly, the results are broadly similar to our original 2010 AER table 1 averages and to the median results that also figure prominently.. It is hard to see how one can interpret these tables and individual country results as showing that public debt overhang over 90% is clearly benign.
The JEP paper with Vincent Reinhart looks at all public debt overhang episodes for advanced countries in our database, dating back to 1800. The overall average result shows that public debt overhang episodes (over 90% GDP for five years or more) are associated with 1.2% lower growth as compared to growth when debt is under 90%. (We also include in our tables the small number of shorter episodes.) Note that because the historical public debt overhang episodes last an average of over 20 years, the cumulative effects of small growth differences are potentially quite large. It is utterly misleading to speak of a 1% growth differential that lasts 10-25 years as small.
By the way, we are very careful in all our papers to speak of “association” and not “causality” since of course our 2009 book THIS TIME IS DIFFERENT showed that debt explodes in the immediate aftermath of financial crises. This is why we restrict attention to longer debt overhang periods in the JEP paper, though as noted there are only a very limited number of short ones. Moreover, we have generally emphasized the 1% differential median result in all our discussions and subsequent writing, precisely to be understated and cautious, and also in recognition of the results in our core Table 1 (AER paper).
Lastly, our 2012 JEP paper cites papers from the BIS, IMF and OECD (among others) which virtually all find very similar conclusions to original findings, albeit with slight differences in threshold, and many nuances of alternative interpretation.. These later papers, by the way, use a variety of methodologies for dealing with non-linearity and also for trying to determine causation. Of course much further research is needed as the data we developed and is being used in these studies is new. Nevertheless, the weight of the evidence to date –including this latest comment — seems entirely consistent with our original interpretation of the data in our 2010 AER paper.
Carmen Reinhart and Kenneth Rogoff
April 16, 2013
1945-2009

RR (2010)
HAP (2013)
Debt/GDP Mean Median Mean Median
0 to 30 4.1 4.2 4.2 NA
30 to 60 2.8 3.9 3.1 NA
60 to 90 2.8 2.9 3.2 NA
Above 90 -0.1 1.6 2.2 NA
1800-2011
1800-2011
0 to 30 3.7 3.9 NA NA
30 to 60 3.0 3.1 NA NA
60 to 90 3.4 2.8 NA NA
Above 90 1.7 1.9 NA NA
RRR (2012), 1800-2011

Mean


Below 90 3.5


Above 90 2.4


Of course, this isn’t a retraction, at least not yet. And as we’ve noted, retractions are rare in economics. Still, a number of people have sent us tips about this paper, so we thought it was worth a post.
Update, 10:15 a.m. Eastern, 4/19/13: Word in headline corrected from “database” to “spreadsheet,” as per comment below from Neil Saunders.

Retraction Watch
2013.4.18

写し

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経済学でもこんなのがあります。

 

2013年9月14日土曜日

Fへの捏造指摘を無視したH.T.帝京大医学部教授の責任

T.H.帝京大医学部麻酔科教授はF医師への捏造指摘を無視。日本麻酔科学会の調査で名指しで責任を指摘された。T.H.が適切な行動をしていれば世界記録捏造はなかったかもしれない。この人も処分があったと確認できない。どうなっているのか?

Reference
[1]F医師の捏造調査報告書 2012.6

2013年9月13日金曜日

カネボウ"美白"問題

(番組趣旨より)
「驚くほど白くなると思っていた・・・」。カネボウの美白化粧品で、白斑症状を訴える人は1万人を超えた。自主回収から間もなく2か月、新たな事実が浮か び上がってきている。美白化粧品を複数種類「重ね塗り」している人に症状が多く出ている傾向が見えてきた。また、使用を中止すれば多くの人は治るとされて いるが、2年以上経っても白斑が消えない人もいることも判明している。美白成分「ロドデノール」はどんなものなのか。なぜ、「医薬部外品」として国の承認 を得ることができたのか。なぜ、カネボウは消費者や医師からの「異変」を知らせる声にすぐに対応できなかったのか。最新情報を追い、再発防止のために何が 必要か考える。
NHKクローズアップ現代 2013.9.2

 写し

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『論文には「時間が経っても白斑は完全に消えなかった」と記しているにもかかわらず、カネボウは、申請書では「時間が経つと治癒した」としたのです。(出展同上) 』

いけませんね。

2013年9月12日木曜日

改めて捏造データを含む論文を考える

改めて捏造データを含む論文を考える


なんべんも捏造データ論文についてこのブログでも触れています。わたくし、この問題について若い頃はゴシップ的な知識は割合豊富でした。そういう知識を基 に捏造データを避けるために、ラボ内では極力「正直がすべて」という方針でいきました。つまり論文での明白な過ちは恥ずかしいがしかし人間である以上過ち はしかたがない、しかし意図的なデータ改竄はこれは学問上の犯罪なので、判明したら、即刻永久レッドカードと、ラボヘッドとして、躊躇なく言っていまし た。しかし、それは近辺にそんな人物など出るはずがないという強い思い込みがあったことも事実です。
運良く今日まで京大の生物物理で若い仲間と研究を始めてから、40年になりますが一度もありませんでした。

いっぽうで、いわゆる2勝1敗のデータをどう扱うかは難しいものです。
つまり繰り返す実験の結果データが2方向に向いた場合です。正直、難しい。どうにもならなければ実験回数を増やすか、データを公表しないというものです。
でもこういう考えはあまり元気が出ない。
それで発展的によく分からない結果を生みだす実験を回避して新しい実験を始めてなんとか答えを生みだそうとするものでした。
正しい答えはそれがそもそも出るものなら、未来で分かるはずですから。
学生としてわたくしと一緒にやった若者たちはこのあたりのわたくしの悩みと克服の努力を理解してくれたはずです。
しかし、意図的でなくてもなんとか思った通りの実験結果がほしいというのは、仮説にドライブされて研究を進めるすべての学徒にはまさに避けられない性であるでしょう。
しかし、こういう問題には正直というかたちでしか対応出来ないということがあるのですね。正直のうえにバカがつくような正直さがベストです。研究室の主宰者と現場ではそこで激しい応酬があって仕方ないのでしょう。
わたくしが科学研究というのはある意味宗教的行為と感じたりするのはこのあたりです。つまり全知全能の神様のまえで学問をやるので、嘘をついたら舌を抜かれるという類の必罰の畏れですね。それと未来の神様が真の解答を知っているという,信仰ですか。
ですから正直以外に簡単な救われるすべがない。
それで、話を元に戻すと、もう50才台に入ってから、捏造をする研究者を親しかった人物にみてしまったものです。
この体験ある意味わたくしの捏造観を根底から変えるものでした。それ以来わたくしは捏造をする人間に興味を持ち始めたのです。なぜ彼らは捏造をするのかそれで教授になったり名声をかちうるということが本人にどういう意味があるのか、そういう強い関心を持ったのでした。
つ まりレミゼラブルとか罪と罰の主人公たちではないですが、悪事ではあるが本人の内面ではかならずしも悪事を犯すという意識がないのはなぜか、そのようなこ とについて黒と白だけでなく、なぜ学問の世界では一定の頻度でこのような人物がでてくるのかその生成の仕組みのようなものにも興味を持ちました。
これがわたくしが持っていた過去形での関心でした。古典的な悪漢つまり捏造研究者の人間像はわたくしのような旧式な研究者観を持つ人間にはそれなりに関心を持てたのでした。

ところが最近はだいぶどころか全然人間像が違ってきたのではないか。
共通点は、教授になるもしくは高額研究費をえる研究者の仲間になれる道として捏造をする、タイプの人間であることには変わりはないように見えます。
しかし悪漢的要素よりも紳士的な要素のほうが高い、つまりエリート教育、恵まれた家庭、温厚な人柄、こういう人たちが捏造に手を染めているようだ、ということです。
貧 困から這い上がりたい、這い上がるためには自分を愛する女性も殺してしまうような三国連太郎が演じた飢餓海峡での逃亡者、つまりそういう古典的な捏造研究 者はもういないのだ、というか元々いなかったという、ことがわかって来たような気がします。学問は所詮ある程度恵まれた人がやって来たものなのだ。わたく しは大きな勘違いしていたのかもしれない。
今後、エリート教育、恵まれた家庭、温厚な人柄、こういう人たちが研究社会で増えるのなら、捏造論文も 捏造行為者もそれに比例してどんどん増える様な気がするのです。成功へのプレッシャが生みだす人々の行為なのだろう、と。捏造はその気になればあまりにも 容易にできるからです。

かなり物騒な予想ですが、でもまあ案外多くの人たちがうなずくのではないか。
平和で質素で正気に生きる多くの人が作り上げている日本社会の危険な一面がこのあたりから露出しているように思えるのです。
穏和そうにみえる大きな社会層での上澄み部分にある病的な様相です。成功へのストレスがどんどん増えてそれに容易に負けてしまう人々が静かに増えているのかも知れません。

わたくしにはもちろんこの問題の解決策など持ち合わせておりません。
むしろそういう推測があたってないことを祈りたい気分です。

生きるすべ IKIRU-SUBE 柳田充弘ブログ
2013.8.29

写し


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「悪漢的要素よりも紳士的な要素のほうが高い、つまりエリート教育、恵まれた家庭、温厚な人柄、こういう人たちが捏造に手を染めている」というのは誰かに当てはまることです。温厚な人柄ということを除いては。

2013年9月11日水曜日

未解決研究不正事件 - 2013年8月18日時点

私の知る限り未解決の研究不正事件は以下のとおり。未解決の研究不正はたくさんある。まだ告発されていないもの、大学が組織的に隠蔽してきたもの、 被疑者が沈黙しているものなどいろいろある。きちんと解決しないとまずい。現在研究不正を防ぐために文科省や日本学術会議などで新しい不正防止策が検討さ れているが、現在進行中の事件も含めて過去の事例を分析し、不正調査制度の問題点を考慮して不正防止策を作ってほしい

(1)群馬大、筑波大、国立環境研究所などの事件 - 加藤茂明(元東大)の関連事件
先月加藤茂明元東大教授らのグループの論文43編で捏造・改ざんの不正があったとの予備調査結果が公表された。加藤は直接捏造などは実行しておらず、他の研究者が実行したと東大の調査委員会は考えている様子。
この事件をめぐってはH.K.(群馬大)、A.M.(筑波大)、J.Y.(筑波大)、Y.T.(国立環境研究所、2012年3月時点)、M.K.(東京医科歯科大学、2009年度時点)などの研究者にも疑惑がある。筆頭著者のリストはこちらを参照。端的にいって、H.K.A.M.らは捏造の実行者として疑われている。
彼らは現在沈黙したままで、東大も最終的な調査結果を公表していないし、処分もしていない。私は加藤だけが犠牲になって他が逃げ延びることがなければよいと思っている。加藤事件に関する告発は2012年1月に行われ、現在も調査が続いている。
(2)井上明久前東北大総長事件
もともと匿名(2007年)、顕名(2008~)で何度も告発されていたが、規定を無視し続けた東北大今年の3月頃にようやく告発の一部に対して第三者調査委員会を作って調査している。今月29日に名誉毀損裁判の判決が出る。裁判で井上の不正がどれだけ認定されるのか注目されている。
(3)M.E.群馬大学教授の不正疑惑
このサイトでM.E.の不正に関して告発したことやその内容を公表している。告発が2012年2月27日の消印で送付されているので、調査が行われているとすれば約1年半経過している。しかし、未だに調査結果は公表されていない。そもそも調査をやっているのか不明。
(4)九州大学の事件
このサイトで九州大学の研究者に対して不正疑惑の告発とその内容が公表されている。告発は2011年3月に行われ受理された。しかし、約2年5ヶ月以上経過した現在でも告発者に何の連絡もないという(関連)。
(5)大分大学医学部元学部長らの論文捏造疑惑
T.N.大分大学医学部元学部長やS.O.同大講師らの論文約20編で捏造疑惑が浮上し告発された。昨年3月30日付けで文科省が同大に調査を依頼、5月15日に調査委員会の設置が決定された。しかし、告発から約1年5ヶ月以上経過した現在でも何の公表もない。
(6)高井教行元大分大学医学部講師らの論文捏造疑惑
高井らの論文7編に画像の重複使用及び画像操作の疑惑が浮上し、大分大が調査委員会を設置したことが昨年12月の報道で発覚。高井らの論文は撤回され、高井は辞職した。現在調査結果の公表はない。
(7)R.M.大阪大医学系教授の盗用疑惑とその他
写し1写し2で R.M.大阪大医学系教授の盗用疑惑が指摘されている。ただ、これはまだ告発されておらず、指摘者に尋ねたところ他にもネタが見つかるかもしれないから今 はまだ告発しないとのこと。これは2011年1月頃に論文撤回ウォッチ(2012年1月閉鎖)が最初に指摘したので、発覚から2年7ヶ月以上経過してい る。
その他R.M.は肝細胞増殖因子(HGF)遺伝子治療薬の主要特許を持ち、アンジェスMG関連)を設立。2004年にこの薬の臨床試験を実施した阪大病院の教授2名と医師3名が臨床試験の前に同社から未公開株を取得。「製薬会社の株式保有者が臨床試験をすることは違法ではないが、上場時、保有株の半数を売った教授もおり、大阪大は、倫理上の問題があるとして、ガイドライン作りを検討する委員会を設置することにした[1]」という。
2006年4月4日付けの朝日新聞によるとHGF遺伝子治療薬を組み込んだ薬を阪大病院の臨床研究で閉塞性動脈硬化症(ASO)の患者に使用[2]。22例中、約6割の患者で血管が新生され、病状が軽減されたという[2]。
しかし、2006年4月27日の朝日新聞で「血管再生の働きがある肝細胞増殖因子(HGF)を使い、足の動脈が詰まる患者を治療する臨床研究について、大阪大学病院の遺伝子治療臨床研究審査委員会(委員長・堀正二教授)は26日、効果の確証が得られなかったとする最終報告書案をまとめた。5月に文部科学、厚生労働両省に提出する。[3]」と報じられた。この臨床研究ではなぜかプラセボ効果を考慮していなかった。
この臨床研究はいったい何だったのだろう?まさか・・・。私見だが、臨床試験をやるプロがプラセボ効果を考慮し忘れることは通常ないと思う。違いますか?報告書p54によると臨床研究の統括責任者は(8)のT.O.で、R.M.も臨床研究に関与していた。
R.M.は他にバイオ・サイト・キャピタル株式会社創業
(8)T.O.大阪大医学系教授の論文多重投稿疑惑
写し3写し4写し5写し6写し7でT.O.大阪大医学系教授らの論文多重投稿が指摘されている。これは2011年2月頃に論文撤回ウォッチが最初に指摘した。なぜ告発されないかは不明。
(9)VART、SMART、Nagoya Heart Study - バルサルタン事件
バルサルタン臨床試験である上の3つはまだ調査結果が出ていない。KyotoやJikeiでは改ざんがあったと判明したが、誰が改ざんしたのかはま だわかっていない。上の3つは今年5月から調査を開始。噂ではもうすぐ調査結果が出るらしい。研究機関はやろうと思えばはやく調査結果を出せるのでは?
(10)小室一成東大医学系教授らの基礎研究の捏造疑惑
小室一成東大医学系教授らの画像捏造に関する疑惑が告発され、小室の旧所属機関の千葉大学で調査されている。告発サイトはこちらフォーブスでも報じられた。告発は2013年5月頃行われた。小室はVARTの代表者だが、この事件はそれとは別件。この件は日本の新聞・テレビはまだ報じていない。
(11)S.M.熊本大学教授らの基礎研究の捏造疑惑
Kyoto Heart Studyでエンドポイント委員を務めたS.M.にも捏造疑惑が指摘され告発された。告発サイトはこちら。昨年ノーベル賞を受賞した山中伸弥も疑惑論文の共著者になっている。私の記憶では2013年5月頃に告発された。この件はマスメディアはまだ報じていない。S.M.は2013年8月4日に高血圧学会学術誌Hypertension Researchの編集長を辞任し、(7)のR.M.阪大医学系教授が新編集長が決まるまで暫定的に編集長を務めることが公表された。S.M.がなぜ辞任したかは不明。
(12)H.T.東大医学系教授の捏造疑惑
H.T.東大医学系教授の論文に捏造疑惑が指摘されている。まだ告発されていないし、マスメディアも報じていない。2013年2月頃に2chへの書き込みで発覚。H.T.の妻はバイオリニストのI.K.。
(13)H.M.東北大加齢医学研究所教授の捏造疑惑
写し1写し2写し3H.M.の捏造疑惑が指摘されている。M.Y.東北大東北メディカル・メガバンク機構長も共著者。H.M.は准教授だったが2013年4月1日付けで教授に昇進。ネットの世界では容姿からアラレちゃんと呼ばれている。
・Molecular and Cellular Biology Vol.31 (1): 151. の訂正公告
・Molecular and Cellular Biology Vol.25 (21): 9360. の訂正公告
上の2つの訂正公告から不正疑惑が発覚した。告発されているかは不明。マスメディアの報道はない。
(14)国立循環器病センター、大阪大学、新潟大学の論文に関する指摘
写し1写し2写し3写し4で国立循環器病センター、大阪大学、新潟大学の論文にある事が指摘されている。写しの運営者が2012年12月から2013年1月にかけて指摘。告発されているのかは不明。日本のメディアでの報道はない。
(15)富山県立大学工学部のある研究者の論文への指摘
写しであることが指摘されています。これは昨年7月の指摘です。被疑者はでRetraction Watchでも報じられました同サイトが指摘したのは論文の訂正に関してです。指摘は2013年1月です。告発されているのかは不明。日本のメディアでの報道はない。
(16)山中伸弥への指摘
写しでノーベル賞受賞者山中伸弥が筆頭・責任著者を務める論文で不適切さが指摘されている。2013年3月頃に2chの指摘で発覚。告発されているのかは不明。メディアでの報道はない。

(17)慶應義塾大学血液内科への指摘
写しである事が指摘されています。特に写し1の青枠のものはなぜ8つ細胞が増えたのでしょうか?2011年9月に論文撤回ウォッチの指摘で発覚。告発されているかは不明。メディアの報道はありません。
(18)筑波大Y研究室への指摘
筑波大Y研究室の論文についてある事写し)が指摘されている。加藤茂明が著者になっていないものもあり、先月発表された予備調査結果に含まれていない可能性がある。加藤事件の告発者はこの件を告発していない。しかし2012年2月に情報提供写し)が筑波大にあったらしい。本調査が行われているのか不明。

著者の質問と加藤茂明事件告発者の回答(2013.8.26) 
(注) 日付は著者が都合により削除
(19)その他の研究機関
他にも告発されながら未解決の研究不正事件があるが、ネット上でのソースがないので紹介は控える。

参考
[1]読売新聞 2004.6.12
[2]朝日新聞  2006.4.4
[2]朝日新聞  2006.4.27

世界変動展望 2013.8.18

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これだけあるんですね。

2013年9月10日火曜日

慶應義塾大学血液内科学への指摘

ここで慶應義塾大学血液内科学への指摘が公開されています。前から思っていますが、細胞が8つ増えた画像などは過失とするとどうやったらできるのでしょうか?

2013年9月9日月曜日

東京医科大学整形外科の二重投稿、業績水増し

東京医科大学の整形外科の教授(52)が複数の英語論文について、二重投稿したり、同僚の論文に自分を筆頭筆者として加えて投稿したりしていたことが朝日 新聞の調べでわかった。一部は2004年の教授選の選考で業績に挙げていた。大学側は論文2本を二重投稿と認定し、厳重注意した。日本整形外科学会も調査 している。

 朝日新聞の調べでは、大学側が二重投稿と認定した2本は、04年と09年に海外の専門誌などに載った論文。このほか、 03~06年に、7本の日本語論文の主要なデータを英訳して、海外誌に載せていた。こうした投稿も、二重投稿とみなす学会や科学誌も少なくない。当時、明 確な基準がない雑誌でも、日本語のオリジナル論文があることを示すことを原則としていたが、7本ともその旨を明記していなかった。教授は今後、大学の助言 を受けて、教室の全論文を点検、論文の修正や取り下げが必要か検討するという。

 この7本の中には、15年前のデータを再使用して、海外 誌に投稿した論文もあった。90年の日本整形外科学会誌と05年のアジア太平洋整形外科学会(APOA)の雑誌に載った論文で、特殊なマウスの関節を写し た同じ電子顕微鏡写真10枚が使われていた。日本語の論文は90年以前に研究されているが、APOA誌には「00~03年に行った研究」と書いていた。こ の教授は「『あらためて検討した』と書くつもりが、『研究を行った』との誤訳になってしまった」と説明している。

 日本の雑誌に掲載さ れ た同僚の論文に、自分の名前を中心的な役割を意味する筆頭筆者として加えて、海外誌に投稿していた例も複数あった。その理由について、同僚の論文でも研究 には参加していたため、と説明している。一方で、共同筆者の1人は「教授の論文投稿自体、記憶にない」と話した。共同筆者から筆頭筆者に変わっていた論文 もあった。

 教授に就いたのは04年4月。東京医大の教授になるには「英文論文が10本以上、5本は筆頭筆者」という条件が02年に加わった。二重投稿など問題のある論文9本のうち、3本は教授選考の評価対象だった。

 教員の処分を決める大学の裁定委員会は昨年6月、論文2本を二重投稿と認定。ただし、1本について、教授が事前に雑誌に取り消しを申し出ていたことを考慮して、教授への処分は厳重注意にとどめ、非公表としていた。

 教授は「英語論文はほかにも出しており、教授選のために水増ししたつもりはない。論文投稿について認識が甘かった。今後このようなことがないよう徹底したい」と話している。(杉本崇、林敦彦)

asahi.com 2011.1.7 

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東京医科大学の整形外科の教授が二重投稿、業績水増しを行いました。不当な方法で教授選を行ったということになります。こういうことは不正としてきちんと処罰しなければなりません。

2013年9月8日日曜日

生命科学分野:研究者の1割 不正の現場を目撃 学会調査

生命科学分野:研究者の1割 不正の現場を目撃 学会調査

毎日新聞 2013年08月29日 15時00分(最終更新 08月29日 15時22分)

 研究者の約1割が、所属する研究室内で研究不正の現場を目撃した経験があることが、日本分子生物学会の会員対象アンケート調査で分かった。また、過半数が生命科学分野の研究不正を「まれだと思わない」と答えており、データ改ざんなどの不正が常態化している実情が浮かんだ。

 同学会は会員約1万5000人と生命科学分野では規模が大きい。アンケートは全会員に依頼し、1022人が回答した。回答者の専門分野は生物系(51.3%)▽医歯薬系(34.3%)▽農学系(8.6%)▽理工系(3.6%)など。
 「研究不正を目撃したことがあるか」との問いに対し、10.1%が「所属する研究室内で目撃、経験した ことがある」と答えた。「所属する研究室でうわさがあった」(6.1%)、「近傍の研究室からうわさを聞いた」(32.3%)を合わせて半数近くが見聞き していた。また「生命科学において研究不正は極めてまれなケースと思うか」との問いには「そう思わない」「あまりそう思わない」は計58・8%だった。

 日本では不正疑惑が浮上すると、所属する大学や関連学会が調査にあたる。こうした現行のシステムについて、71.2%が「対応できない」「あまり対応できない」とした。また、7割近くが研究不正を取り締まる外部の中立機関の設置が望ましいとした。
 研究不正に詳しい山崎茂明・愛知淑徳大教授は「欧米では研究不正を実際に見聞きした研究者の割合は半数 程度という報告があり、その傾向と合致する。日本の生命科学研究の最前線を担う学会で、不正が日常化している実態を明らかにしたもので、今後の対策に生か してほしい」と話す。【八田浩輔】

写し

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改ざんなどの不正の常態化、71.2%が現行のシステムで対応できない等と回答、7割近くが研究不正を取り締まる外部中立機関の設置が望ましいと回答。

こういう状況や指摘を真摯に受け止めて文科省等では不正防止策を作ってほしいと思います。

2013年9月7日土曜日

論文撤回紹介サイト

Retraction Watchは論文撤回を紹介するサイトで、非常に人気があります。米国の生命科学系の研究者によって運営され、主に生命科学系の論文撤回が紹介されていますが、他の分野も紹介されています。

2013年9月5日木曜日

井上明久の発表論文数は2800編以上

井上明久東北大前総長の発表論文数は東北大公式ページによると2013年9月3日確認時点で2855編。いったいどのようにしてこれほどの論文を発表できるのか?

井上はこれまで論文を重複発表し、公式に不適切と認定されている[1]。JSTの報告書によると60編以上の論文で重複があったという[2]。業績水増しを不正としてきちんと取り締まらないといけない。

Reference
[1]東北大有馬委員会報告書 2012.1
[2]JST報告書 2012.1

2013年9月4日水曜日

Y.S.のギフトオーサーの処分

藤井善隆の世界記録捏造で共著者のY.S.は藤井とFと「お互いに業績を増やすために論文に名前をいれあうとする約束を結んでいた」と述べギフトオーサーを自白しました。

http://www.anesth.or.jp/news2012/pdf/20120629_2.pdf
http://megalodon.jp/2013-0904-0033-13/www.anesth.or.jp/news2012/pdf/20120629_2.pdf

しかし、全然Y.S.の処分は確認できません。ギフトオーサーは不正行為です。きちんと処分しなければなりません。

2013年9月3日火曜日

加藤茂明事件13名の共著者公開されず!

フライデーの報道だと加藤茂明元東大分生研の研究不正事件は13名に不正の疑いありと報じられています。この13名はまだ判明していません。予備調査結果が報じられたのは7月。なぜまだ最終的な調査結果が公表されないのでしょう。

2013年9月2日月曜日

業績誇称や経歴詐称も研究公正局で取り締るべき!

学術「公正局」について(追記)

前回に書いた学術「公正局」についての追記です。
日本学術会議では2005年8月31日に、当時の黒川清会長のコメントで、 「日本学術会議においては、科学者コミュニティを代表する立場から、科学者コミュニティの自立性を高めるために、関係諸機関と連携して、倫理活動を展開す るとともに、ミスコンダクト審理裁定のための独立した機関を早い時期に設置することを検討すべきこと」と提言しています。このもとになった委員会報告「科学におけるミスコンダクトの現状と対策ー科学者コミュニティの自律に向けてー」は
http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-19-t1031-8.pdf
にあります。
その後、学術会議で具体的にこの「審理裁定機関」設置の検討が行われたことはないと思います。この間、会員を務めていながら、8年間の不明を恥じる次第です。
この報告では、「日本学術会議内に(あるいはそれに近接して)早い時期 に設置すること」を念頭に、審理裁定機関における調査のための人的資源には(専門性の観点からも)限界があるので、「科学者コミュニティの全面的協力によって充足されよう」としています。
日本学術会議は、事務局では内閣府職員があたりますが、科学者を代表する会員210名は非常勤特別公務員という立場ですので、その中に調査機能をもつ常設 機関を置くのは難しく、学術界の協力が必要ということにもなります。しかし、このような第三者機関をどこに置くにしても、対象が特定の個別分野に限られる わけではないので、学術界が積極的に協力できるような体制が必要であることは同じだと思います。
この「公正局」あるいは「審理裁定機関」の業務内容は、以下のようなものでしょう。
○ 研究者およびその研究者の所属する研究機関における公正な研究活動の監視・指導
○ 国の助成によるものに限らず、一般の科学研究における不正(の疑義)の申立てを受理する窓口
○ 研究機関、学協会に対する調査の指示・調整、および審理手続きの監視
○ 調査結果に基づく裁定

研究不正だけでなく、経歴詐称や業績誇称など学術上の不正を防ぐための実効性のある組織として設置することが期待されます。



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研究公正局の設置が議論されています。武市正人(大学評価・学位授与機構教授、前日本学術会議副会長、同会議会員)は業績誇称や経歴詐称も防ぐための組織として設置することが期待されると言及されています。こうしたことも取り締まられることが必要です。

2013年8月18日日曜日

薬のデータ捏造、論文捏造など大学医療の問題を東大教授告発


薬のデータ捏造、論文捏造など大学医療の問題を東大教授告発

NEWS ポストセブン 8月17日(土)7時6分配信
 1960年代に発表された山崎豊子の『白い巨塔』は、閉鎖的かつ権威主義的な大学病院の腐敗を描いた作品だった時を経ていま、相次ぐ薬のデータ捏造や研究費の不正流用が発覚し、その体質はより腐っていたことが明らかになった。

 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門で医療ガバナンスを研究している上(かみ)昌広・特任教授(内科医)が、この現状を憂い、膿を出し切るために爆弾告発を決意した。

 * * *
 いま問題となっている「バルサルタン事件」は、残念ながら氷山の一角に過ぎません。日本の大学病院と製薬会社は、不正や癒着が起きやすい構造になってい ます。同様の不正はまだまだあるはずです。今後、糖尿病、がん、精神病などの分野でも問題が発覚するでしょう。これらの疾患に関わる医療では巨額のお金が 動くからです。

 製薬会社に「御用学者」が引っぱり出され、この薬は効くぞというようなことをふれまわる。厚労省は見て見ないふりをする。この構造は、原発事故における “原子力ムラ”と同じです。電力会社が製薬会社、経産省が厚労省に置き換わっただけ。そして、御用学者たちがまんまとそれに使われている。「原発は安全 だ」といっていた学者と、いま製薬会社と癒着している医師たちは全く同根です。

〈大手製薬会社ノバルティスファーマの降圧剤ディオバン(一般名・バルサルタン)に関して、脳卒中予防などの効果を調べた複数の大学の臨床データに不正が あった問題は、大学側が次々と謝罪する事態となった。医療の信用を大きく損なった「前代未聞の不祥事」として連日のようにマスコミに報じられているが、こ の深淵には、福島第一原発事故同様、官・民・学の「利権」と「癒着」がある、とバッサリと斬り捨てる医学者がいる。

 東京大学医科学研究所先端医療社会コミュニケーションシステム社会連携研究部門で、医療ガバナンスを研究している上昌広・特任教授(内科医)である。〉

 バルサルタンは血圧を下げる薬ですが、他の薬と比べて、それほど下がり方は強くない代わりに、心筋梗塞や脳卒中のリスクが半分くらいに減りますよ、と製 薬会社は謳っていた。その根拠とされていたのが、京都府立医大や慈恵医大など5つの大学で行なわれた臨床試験論文でした。

 ところがその論文に関し、京都大学のドクターがどうも血圧値がおかしいと指摘して調査したところ、血圧値や脳卒中、心筋梗塞の発症数を改竄していたことが判明し、さらに製造元であるノバルティスの社員(5月に退職)がデータ解析に関与していたことが分かったのです。

 今回の不正はテストの点数でいえば0点を80点に改竄していたようなもの。「心筋梗塞などのリスクが下がる」という論文の“ストーリー”そのものをい じっていたわけです。なぜ不正がこれまで発覚しなかったのかというと、患者を研究対象にしているためです。薬効には個人差があり、環境が異なれば、研究結 果は同じになりません。つまり、大学側から見れば、個人差があるなど言い逃れできるのです。臨床研究の“死角”をついた不正です。

〈さらに、ノバルティス社は、大学側の“弱み”も巧みについている。臨床研究に詳しいナビタスクリニック立川の谷本哲也医師によると、「日本の大学病院に は臨床試験に欠かせない統計解析のプロがいない。人材面でも製薬会社に依存する臨床検査になっていた」という。今回、データ操作した疑いがもたれているノ バルティス元社員は、統計解析の専門家として大阪市立大学の講師も務めていた。

 一方、慈恵医大の調査報告書によると、臨床検査責任者以下、すべての医師たちが、「自分たちには、データ解析の知識も能力もなく、自分たちがデータ解析を行なったことはない」と証言している。〉

 つまり、統計解析という臨床試験のキモの部分を、初めから製薬会社に握られていたわけです。大学が論文を発表するので、製薬会社は“第三者”として、バ レない限り不正ができる。実態として、自社の社員がコミットしていても、会社としては関係ないと突っぱねることができる。ノバルティスがこの論文について “医師主導臨床研究”と繰り返し言い続けているのは、確信犯です。

 論文不正の最大の問題は、数値を操作したことで多くの患者を危機にさらしたことです。脳卒中リスクを減らす薬だという触れ込みですから、それを脳卒中リ スクの高い患者に処方しなかったら医師は訴えられかねない。論文を読んだ勉強熱心な医師ほど、バルサルタンを処方した可能性があります。それが嘘なら、バ ルサルタンで治療を受けていたために、脳卒中や心筋梗塞になったという人がごまんといるはずです。

 医療は日進月歩。医師がすべて最先端研究についていくことは不可能です。そこで医師は、論文をわかりやすく解説した医療雑誌に頼ります。ところが、そこには製薬会社の記事広告が満載。有名大学教授を招いた座談会で「バルサルタンは効く」と連呼している。

 今回問題になった先生たちも毎週のように講演会や座談会に呼ばれていました。1回15万円ほどの講演料を貰っていたでしょう。小遣い欲しさから、製薬会 社にすり寄る教授も生まれます。バルサルタンを宣伝していたある国公立大学教授は、子供を私立の医大に通わせていました。大学の給料だけでは苦しい。こう なると、企業の広告塔を止められなくなります。このような「御用学者」を用いた製薬関係の広告費が、年間1兆円程度といいます。

※週刊ポスト2013年8月30日号

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バルサルタン以外の薬でも同様の不正があったらたいへんなことになります。

2013年8月17日土曜日

筑波大、群馬大などの処分 - 加藤茂明事件

加藤茂明元東大分子細胞生物学研究所教授らの事件は捏造の実行者が加藤以外の人物だと東大の調査委員会は考えています。そろそろ犯人も含めて正式な調査結果が出てもいいと思います。群馬大学、筑波大学など犯人と目される研究者たちの処分はどうなるのでしょうか?

2013年8月16日金曜日

バルサルタン:臨床試験疑惑 5大学寄付、11億円 ノバルティス、初めて公表

バルサルタン:臨床試験疑惑 5大学寄付、11億円 ノバルティス、初めて公表

毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊

 降圧剤バルサルタン(商 品名ディオバン)に血圧を下げる以外の効果もあるとした臨床試験疑惑で、厚生労働相直轄の有識者による検討委員会が9日、初会合を開いた。販売元の製薬会 社ノバルティスファーマ(東京)は、臨床試験を実施した5大学の主任研究者の研究室に提供した奨学寄付金が、総額11億3290万円に上ることを初めて明 らかにした。ノ社と大学側に資金関係を積極的に公表するよう求める声が高まっていた。
 内訳は、東京慈恵会医大1億8770万円(2002〜07年)▽京都府立医大3億8170万円(03〜12年)▽千葉大2億4600万円(02〜09年)▽滋賀医大6550万円(02〜08年)▽名古屋大2億5200万円(02〜12年)。
 企業から資金提供を受けた研究では、論文でそのことを明示することが必要だ。だが、論文でノ社から資金提供されたことを明示していたのは慈恵医大と名古屋大だけだった。疑惑が表面化してからは、国などが大学とノ社に対し、金額も公表して説明責任を果たすよう求めていた。
 ノ社はこの日、広告や講演会の資料などの宣伝資材に5大学の論文を使った実績も報告。バルサルタン関連の全1384種類のうち計495種類で使っていた。委員会は、9月末をめどに再発防止策などについて、中間報告をまとめる。【河内敏康、八田浩輔】

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再発防止のために奨学寄附金のあり方も検討する必要があります。

2013年8月15日木曜日

バルサルタン臨床試験疑惑 責任追及に課題多く 有識者検討委、調査に強制力なし

クローズアップ2013:バルサルタン臨床試験疑惑 責任追及に課題多く 有識者検討委、調査に強制力なし

毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊

降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、厚生労働相直轄で設置された有識者の検討委員会がスタートした。広がりを見せるデータ不 正操作の真相に迫ることが求められるが、厚労省内部からは強制力のない調査の難しさを懸念する声も漏れる。社員が深く関わり、信頼性が否定された試験論文 を宣伝の目玉にしてきた製薬会社ノバルティスファーマ(東京)の責任を問えるのかも焦点だ。【桐野耕一、八田浩輔、河内敏康】
 「誰が、どのような意図で、何のためにこのようなことが起きたのか、調べていただきたい」。東京・霞が関の厚労省で始まった検討委員会。田村憲久厚労相は、語気を強めてあいさつした。
 続いて、臨床試験にノ社の社員(5月に退職)が関与した5大学が、調査の経過を報告。滋賀医大の服部隆 則・副学長は「元社員の部下も関与していた」と明らかにした上で、「データには初歩的なミスが多く、論文内容と一致しない部分も出ている」と述べ、論文の 信頼性に疑問を呈した。千葉大も、カルテと論文の作成に使われたデータとの間で血圧値などの不一致が見られたことを報告した。
 大臣直轄の委員会は、年金問題で信用を失った社会保険庁の組織改革など、厚労行政にかかわる極めて重大な問題を議論する際に設置されてきた。「臨床試験のデータ操作は想像を絶する事態だ。日本の医療界の信用に関わる」。厚労省の幹部は危機感を隠さない。
 新薬の製造・販売を承認するための「治験」には、データの保存義務など薬事法に基づく厳格な規制があ り、違反すれば罰則が科されることもある。だが、今回のような治験以外の臨床研究については、強制力のない倫理指針があるだけで、「野放し」だったのが実 態だ。規制強化は研究者の自由を奪うと懸念する声もあるが、同省幹部は「カルテやデータのチェックなど不正ができない仕組みを取り入れる必要がある」と指 摘する。
 だが、規制以前の課題もある。万全の再発防止策を講じるには、真相解明が不可欠だが、委員会には法律に基づく強制的な調査権限はない。別の幹部は「関係者に正直に証言してくださいとお願いするしかない。真相に肉薄したいが、限界もある」と明かす。
 委員会でもこの点が議論の対象となった。森嶌昭夫委員長が「嫌だという人を強制的に聞き取りできない」 と言及すると、別の委員から「どう考えても元社員や論文の著者の聞き取りが必要だ」「大学とノ社の報告に矛盾もある。同じ場で聞き取りをしたい」との意見 が出た。こうした声を受け、委員会は聞き取りに応じるよう元社員らに求める方向だ。

ノ社はデータ操作された論文を宣伝に使い、昨年度は約1083億円を売り上げた。省内には「社会的に決して許されない」との声がある。ただし、幹部 は「仮に刑事告発するとしても、現状ではどの法律に違反しているのか、はっきりしない。違法行為が濃厚にならないと簡単には動けない」と苦渋の表情で語っ た。

 ◇元社員の関与に濃淡

臨床試験は、東京慈恵会医大、京都府立医大、滋賀医大、千葉大、名古屋大で行われ、ノ社の同じ社員(5月に退職)が参加した。
 慈恵医大と府立医大の試験は、バルサルタンには他の降圧剤よりも脳卒中や狭心症などの発症を抑える効果があると結論付けた。だが、各大学の調査で血圧に関するデータの操作が発覚。さらに府立医大では、虚偽の脳卒中の記述をデータに加えるなどの別の不正操作も見つかった。
 元社員は両試験で統計解析や図表類の作製などをしていたほか、研究チームの会議の事務作業も引き受けていた。慈恵医大は元社員が不正操作したと疑い、府立医大は「データ操作できる可能性があったのは、元社員と数人の研究者に限られる」との見解だ。
 ノ社側の調査では、元社員の5大学への関わり方には濃淡がみられる。
 滋賀医大の試験は、バルサルタンには、他の降圧剤より腎臓を保護する効果が高いと結論付けた。元社員と共に部下も関わり、部下が患者データ管理や統計解析をした。部下は2007年に論文が発表される直前にノ社を辞め、滋賀医大の大学院生になったという。
 名古屋大の試験では、バルサルタンに心不全の予防効果を認めた。社内調査は「統計の手法の相談に応じたが、実際の解析は(大学の)医局員がした」とするが、ノ社が委託した第三者機関の調査は、元社員が統計解析した可能性を示唆しており、食い違っている。
 千葉大の試験では、心臓と腎臓を守る効果は認めたが、脳卒中などの予防効果はみられなかった。ノ社は、元社員について「研究者の一人と確執が生じたため、他の研究者らとほとんど接触がなかったと考えられる」と指摘。統計解析も「助言」にとどまっていたとしている。

 ◇ノ社宣伝関係の出版社編集委員が検討委員に 人選に疑問の声

降圧剤バルサルタンの臨床試験疑惑を巡る厚生労働省の検討委員会(12人)で、日経BP社の宮田満・特 命編集委員が委員に就任した。同社発行の医療専門誌「日経メディカル」は、製薬会社ノバルティスファーマが10年間以上、バルサルタンの宣伝記事や広告を 集中的に出した媒体で、厚労省の人選に他の委員から疑問の声が上がっている。


関係者によると、日経BP社は2000年11月にバルサルタンが発売される前から、ノ社によるプロモーション戦略に参画。ノ社の社内資料によると、 バルサルタンの広告は「日経メディカル」ともう一つの別の業界紙に集中し、東京慈恵会医大や京都府立医大の臨床試験の経過や成果を、大きく紹介してきた。 疑惑の表面化後、日経メディカルなどでの一連の宣伝の過剰さを批判する声があり、ノ社は7月29日の記者会見で「真摯(しんし)に反省している」と謝罪し た。
 ある委員は「委員会の信頼性が疑われかねない」と懸念するが、日経BP社は「専門知識を買われ就任した。当社としても今回の問題については検証報道を続けており、就任に問題はないと認識している」とコメントしている。【八田浩輔】
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 ◇臨床試験疑惑に関する厚生労働省の検討委員

稲垣治 ・日本製薬工業協会医薬品評価委員長
 桑島巌 ・NPO法人臨床研究適正評価教育機構理事長
 曽根三郎・日本医学会利益相反委員長
 竹内正弘・北里大教授
 田島優子・弁護士
 田代志門・昭和大講師
 花井十伍・全国薬害被害者団体連絡協議会代表世話人
 藤原康弘・国立がん研究センター企画戦略局長
 宮田満 ・日経BP社特命編集委員
 森下典子・国立病院機構大阪医療センター臨床研究推進室長
◎森嶌昭夫・名古屋大名誉教授
 山本正幸・公益財団法人かずさDNA研究所長
 ◎は委員長
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■ことば

 ◇バルサルタン臨床試験疑惑

ノバルティスファーマの降圧剤バルサルタンに血圧を下げるだけでなく、脳卒中予防などの効果もあるかを 調べた5大学の臨床試験に、ノ社の社員が参加していたことが3月末に発覚した。論文上の社員の所属は、非常勤講師を務めていた「大阪市立大」などとされ、 社員の関与は外部から分からなくなっていた。ノ社が薬の宣伝に利用した東京慈恵会医大、京都府立医大の論文でデータ操作が見つかった。



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きちんと調査してほしいです。


2013年8月14日水曜日

バルサルタン事件の刑事告発

クローズアップ2013:バルサルタン臨床試験疑惑 元検事の郷原信郎弁護士の話

毎日新聞 2013年08月10日 東京朝刊

 ◇「刑事告発も視野に」−−企業コンプライアンスの専門家で、独占禁止法に関する著書のある元検事の郷原信郎弁護士の話

ノバルティスファーマが、内容が事実と異なることをあらかじめ認識した上で、臨床試験の論文をバルサル タンの売り上げ拡大のために使っていたのなら、誇大広告を禁止する薬事法66条に抵触する可能性がある。まずは医薬品を所管する厚生労働省が徹底調査し、 行政処分などを検討すべきだ。同条には罰則(2年以下の懲役もしくは200万円以下の罰金)もあり、刑事告発も視野に入れる必要がある。
 一方、こうした行為は医薬品市場の公正な競争を妨げるととらえることもできる。つまり、ノ社が他社の製 品よりも著しく優良であると医療関係者に誤認させ、販売を拡大しようとしたとすれば、不公正な取引方法を禁じた独占禁止法19条(欺まん的顧客誘引)に違 反する可能性も出てくる。不正な論文が撤回され、心疾患などへの効果の根拠が失われたならば、その宣伝を排除する必要がある。
 医薬品の問題なので、第一次的には所管の厚労省が薬事法の適用で対処すべき問題だ。しかし、それが十分に機能しない場合は、市場における競争全般を領域とする公正取引委員会が医薬品事業者に対する調査に乗り出し、排除措置の行政処分を行うこともあり得るだろう。


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刑事告発は必要です。

2013年8月13日火曜日

科学者不正行為 国民と科学への背信だ

科学者不正行為 国民と科学への背信だ 

2013年7月29日 


科学者による不正行為が後を絶たない。科学研究への国民の信頼を裏切るだけでなく、科学に真摯(しんし)に向き合うべき研究者の自殺行為だと深い失望を禁じ得ない。
  東京大学では、分子細胞生物学研究所の加藤茂明元教授らが発表した論文に多数の捏造(ねつぞう)があったことが25日に発覚したほか、同じ日に政策ビジョ ン研究センターの秋山昌範教授が東大と岡山大から研究費名目で計2180万円をだまし取った詐欺の疑いで逮捕された。26日には北里大を運営する北里研究 所が、文部科学省の研究費補助金の不正受給が新たに判明したとして、約8790万円を返納すると発表した。
 国内では近年、論文の不正が相次いで判明しているほか、研究費の不正使用も後を絶たない。文科省がことし4月に発表した公的研究費の調査では、全国の大 学など46の研究機関で不正使用が計3億6100万円に上り、計139人が関与していた。架空取引で業者に研究費を管理させる「預け金」や、カラ出張など の方法で不正請求した「プール金」などだ。
 科学者のモラルを厳しく問いたい。文科省は大学や研究機関と連携し、不正を事前チェックする態勢を早急に構築する必要がある。
 加藤元教授は分子生物学研究の第一人者で公的資金を使った研究も多かった。東大は外部からの指摘を受け、1996~2011年に元教授が関わった165本の論文を調査。うち43本は「撤回が妥当」とする報告書をまとめた。
 加藤元教授は「改ざん、捏造があったのは事実」と認める一方、「悪質な不正を繰り返していた者は少ない。不正箇所の多くは図表を良く見せるためのお化粧 と理解している」とも述べた。社会的な信用を失墜させる重大な事態を真摯に受け止めているとはにわかに信じがたい発言だ。多くの誠実な科学者にも影響を及 ぼす自らの責任を深く反省すべきだ。
 一方、秋山容疑者は医療ITが専門で、こちらも電子カルテ研究の第一人者として知られていた。東京地検特捜部によると、詐取した金を私的に使い、一部を共謀した業者に手数料として支払ったとされる。事実ならば言語道断だ。
 科学の真理を探究することは、人類の発展に貢献する崇高な行為だ。科学者一人一人は、国民の大きな夢と希望を担っていることを忘れないでほしい。

琉球新報 写し

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不正の原因を分析して改善に役立てる必要があります。

2013年8月12日月曜日

降圧剤:臨床試験 ノバルティスファーマ社ぐるみで支援

降圧剤:臨床試験 ノバルティスファーマ社ぐるみで支援

毎日新聞 2013年08月07日 02時30分


降圧剤バ ルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験疑惑で、製薬会社ノバルティスファーマの多くの人間が臨床試験を支援していた実態が浮かび上がっている。厚生労 働省は9日に大臣直轄の検討委員会をスタートさせてデータ解析に関わったノ社の社員(5月に退職)から事情を聴く意向だが、真相に切り込むには他の社員た ちからの聴取も欠かせない。【八田浩輔、河内敏康】
 ・社名伏せ データ解析の社員紹介
 ・大学寄付金「上層部の了承が必要」

 ◆「統計の専門家」
 「大阪市立大の非常勤講師という名刺を渡された。社員と名乗らなかった」。2002年に試験を始めた東京慈恵会医大の望月正武元教授(72)は、元社員との出会いを大学側にこう証言した。
 元社員を「統計の専門家」として望月氏に引き合わせたのは、ノ社のマーケティング担当者だ。大阪市大に よれば、元社員は02〜12年度に非常勤講師だったが、勤務実態は事実上なかった。慈恵医大によると、4種類の名刺を使い分け、社名が一切書かれていない ものもあったという。

 ◇販売戦略の一環

ノ社の社内資料によれば、00年11月に発売した直後のバルサルタンの年間の売り上げ目標は最大で500億円だったが、他社も含めた同種の降圧剤市場が急拡大するのに伴って上方修正。02年に1000億円を目指す社内プロジェクトがスタートした。関係者は「PRのための予算も増えた」と言う。「降圧を超える効果」が臨床試験で証明されることを期待し、各地の大学に試験が提案されていった。
 結局5大学の試験に参加した元社員は、09年に社長賞を受賞している。当時社長だった三谷宏幸最高顧問は「疑義のある論文という認識が無かった。今となっては反省する」と釈明している。
 元社員は循環器マーケティング部門に所属していて、当時の上司の多くは既に退社している。ノ社は「調査 したが、元社員によるデータ操作や上司が操作を指示したことを示す事実は認められない」と不正への関与を否定するが、退社した当時の上司らからは「強制力 がなく難しい」と聞き取りしていない。

◆宣伝記事で援護 慈恵医大の論文は07年に一流医学誌ランセットに掲載された。発表直後から試験の信頼 性などを疑問視する意見が国内外の専門家から上がったが、ある関係者は「疑念を打ち消すために、国内外の高血圧分野の権威を招いた座談会形式の宣伝記事を 専門誌に掲載した」と明かす。

慈恵医大、京都府立医大のように患者数が3000人を超す大規模臨床試験の経費は数億〜十数億円といわれる。ノ社は使途を限定しない奨学寄付金を府 立医大に計1億440万円(09〜12年度)、慈恵医大に計8400万円(05〜07年)提供している。ノ社は「研究の支援に用いられることを意図、期待 した」としている。
 「数千万円の寄付には役員クラスへの説明と了承が必要だ。上層部が何も知らなかったでは済まされない」(ノ社に在籍した男性)

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このようなバルサルタン事件の背景や不正の構図についてはフライデーも過去に報じていました。この事件をスクープした毎日新聞も当然把握していたのでしょうが、確実な裏付を必要とする分週刊誌より遅い報道になってしまったのは新聞の辛いところでしょうか。

ただ、週刊誌を悪くいうわけではないですが、全国紙がこのように報じたことは週刊誌の報道よりも信頼度が高いと世間は認識するでしょう。今後はノ社の指示で元社員が不正を実行したのかどうかが一つの重要事項です。記事ではノ社マーケティング担当者が望月正武(Jikei Heart Studyの責任者)に元社員を統計の専門家として紹介したと言及されています。マーケティングの担当者の件等についてはこちらのブログが詳しいです。

2013年8月11日日曜日

「隠蔽」は日本の組織体質か

「隠蔽」は日本の組織体質か --- 岡本 裕明

アゴラ 8月4日(日)17時32分配信 

京都府立医大、東大、東電の最近の共通点といえば「隠蔽と改ざん」でしょうか? 京都府立医大では製薬会社ノバルティスファーマの高血圧治療薬「ディオバ ン」の効果に関する臨床研究を巡る論文データの改ざんが問題になりました。東大のシステム販売会社と共謀し委託契約料を騙し取った事件もデータの改ざんが ベースです。更に東大の分子細胞生物学研究所でも論文捏造疑惑が発生しており、現在調査中であります。

企業に目を向ければ東電が汚染水を海に流していた事に関して5月の時点でわかっていたのにその事実を確認するのに手間取り、公表が遅れていました。とくに公表に向けた直近の動きは以下の日経の記事が参考になるかと思います。

「広瀬社長によると、7月18日に海への汚染水流出を裏付ける潮位と地下水位のデータを本店が把握。19日夕刻に広瀬社長、原子力部門、広報部などが協議 して速やかに公表する意向を確認した。だが、広瀬社長は「公表前に漁業関係者に知らせた方がいい」と指示。22日に関係部門が漁業関係者に説明し、その日 の夕刻に発表した。20~21日は公表資料を作成していたという。」

本社が18日に事実を把握した後、公表までに4日かかっていること自体がもはや常識の範疇を超えてしまいました。大体、公表資料を作るのに2日間も要する のは企業体質がよほどの権力体質であるといえましょう。欧米企業ならば半日で公表にこぎつけるはずです。また、漁業関係者に先に知らせるという判断もよく わかりません。私なら同時に発表し、その上で漁業関係者により具体的な説明を個別に行う方法をとります。

これらの事件はごく最近起きたものだけであり、時間軸を延ばせばいくらでも出てくる「日本版パンドラの箱の祭典」であります。それもたまたま見つかったのが氷山の一角で話題にもならない隠蔽や改ざんは無数であると思います。

なぜ、人は隠すのか、といえば、追い込まれた際の弱さなのだろうと思います。「これで失敗したら人生終わり」というギリギリのところにいることが隠蔽だろうが、改ざんだろうが、犯罪だろうが何でもして「ばれなければ」という気にさせるのだろうと思います。

勿論、このような隠蔽体質は世界中で起こっていますので日本独特のものとはいいませんが、日本は多いほうだろうと思います。理由は先日も指摘しましたが、 やり直しのきかない日本ということが影響しているのではないでしょうか? アメリカは失敗してもやり直す気持ちがあればいくらでもスタート台に戻れます。 また、そこから復活した人は高く賞賛されます。ところが日本は「だめな奴」というレッテルを貼られ、権限や職を失い、人生路頭に迷うことが多いのです。

更に激しい競争社会に生きている人ほどその傾向は高いのではないでしょうか? 大学の教授はよい論文を書き、学内での地位を高めることが非常に重要になり ます。山崎豊子の「白い巨塔」はもっとも日本的な大学病院の醜い姿が描かれています。また東電もエリート社員の集り。著名な大学を優秀な成績で出て国家官 僚へのチャンスを蹴って入社するような人が多いところにおいて社内競争は社員の正しいマインドを歪めることになるのでしょうか?

隠蔽しなくてはいけないということは人間の弱さそのものだと思います。組織の強さと個人の弱さのアンバランスともいえましょう。精神衛生的にゆがみが生じている日本社会はいつ、幸せになれるのでしょうか?

今日はこのぐらいにしておきましょう。

編集部より:この記事は岡本裕明氏のブログ「外から見る日本、見られる日本人」2013年7月27日の記事より転載させていただきました。快く転載を許可してくださった岡本氏に感謝いたします。オリジナル原稿を読みたい方は外から見る日本、見られる日本人をご覧ください。

2013.7.31


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みなさんはどう思うでしょうか?

2013年8月10日土曜日

透明で質の高い臨床研究に体制を改めよ

透明で質の高い臨床研究に体制を改めよ

スイス製薬大手の日本法人、ノバルティスファーマの高血圧治療薬をめぐる疑惑が拡大している。薬の効果を調べるため国内の5大学で実施された臨床研究に社員(当時)が関与しデータが不正に操作された疑いがある。
 日本の臨床研究の信頼を揺るがす事態だ。政府や学会は徹底した真相解明に取り組むべきだ。政府は健全な臨床研究ができる体制を整え、問題の再発防止と医薬研究の推進を両立させる必要がある。
 問題の本質は2つ。まずデータ操作の疑惑だ。東京慈恵医大などの内部調査では、製薬会社の元社員が薬の効果が大きくみえるよう操作をした疑いが濃い。だれがやったにせよ、操作が事実なら日本の臨床研究のお粗末さを示す。
 誤った論文が国際的な医学誌に載り世界の医療関係者が読んだ。日本の臨床研究への国際的な信頼が深く傷ついたのは間違いない。大学側も知らなかったではすまない。日本の医療関係者は疑惑を解明し説明する責任を負う。
 第二に利益相反の問題だ。製薬会社の社員が自社製品を評価する臨床研究に関与するなど、もとより許されることではない。ノバルティス社の社内管理体制に問題があったのは明らかだ。経営陣の責任が厳しく問われている。
 京都府立医大と慈恵医大では、臨床研究を担当した教授が多額の奨学寄付金をノバルティス社から得ていた。教授の裁量で使えるつかみ金だ。企業への資金依存が問題の温床になった疑いがある。
 企業と大学の連携は日本の創薬能力を高めるため大切だ。健全な産学連携は推進する必要がある。問題は不透明な関係を育む使途があいまいな資金だ。研究契約に基づく透明性の高い資金にするよう改めるべきだ。
 日本製薬工業協会は寄付金などの提供先を公開する「透明性ガイドライン」をつくったが、医療界からの申し入れで部分的な実施にとどまる。完全実施に移す時だ。
 大規模な臨床研究には統計学やデータ管理の専門家などが不可欠だが、国内の大学医学部には少なく能力が不足する。それが製薬会社とのもたれ合いを生む構造的要因にもなっている。
 政府は医療を成長戦略の柱の1つに数えるが、足元は危うさをはらむ。製薬会社と研究者や医師のもたれ合いを排し、透明で質が高い臨床研究に向けて体制を改める必要がある。

日本経済新聞 社説 2013.8.3 写し

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きちんと改善しなければなりません。