2013年6月30日日曜日

肥満薬の治験でデータ改ざん疑惑

『肥満薬の治験でデータ改ざんか 身長偽り肥満度上げる

朝日新聞デジタル 6月30日(日)5時18分配信

メタボリック 症候群など肥満症に効く市販薬の開発をめぐり、大阪市の病院が実施した臨床試験(治験)のデータの一部が改ざんされた疑いがあることが朝日新聞の調べでわ かった。被験者72人の中に治験を実施した病院の職員6人が含まれ、4人の身長が実際より低く記録されていた。治験の条件を満たすため被験者が肥満体とな るよう偽装された可能性がある。

 治験は、製薬大手「小林製薬」(本社・大阪市)の依頼を受け、医療法人大鵬(たいほう)会「千本(せん ぼん)病院」(同市西成区、196床)が2010年4月から実施。小林製薬は11年11月、治験結果をふまえ、市販薬としての製造販売の承認を国に求めた が、朝日新聞の取材後の今年2月、申請を取り下げた。同社は今後、事実確認を進め、病院側に法的手段を検討するとしている。

 朝日新聞が 入手した内部資料によると、治験の責任医師は当時の内科部長(43)で、当時の院長(45)も業務の一部を分担した。被験者72人の中に当時の職員6人の 名前があり、うち4人に直接取材して身長を確かめると、いずれも治験のカルテや症例報告書に記載された身長が実際より約4~10センチ低かった。千本病院 も取材に対し、これらの事実を認めた。


バルサルタンに続き臨床でまた疑惑が。

2013年6月29日土曜日

バルサルタン臨床試験を慈恵医大、千葉大も調査を開始したことをフライデーが報道

クスリの闇第3弾! 慈恵医大、千葉大も調査へ 「疑惑の降圧剤」を日経専門誌でPRする教授たちの厚顔

フライデー 2013.6.2

文章へのリンク

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調査はまだ続行中です。いつ終了するのでしょうか?

2013年6月28日金曜日

バルサルタン事件でノ社への行政指導があったことに関するフライデーの報道

追及第4弾クスリの闇 ついに製薬会社に行政指導!「疑惑の降圧剤(バルサルタン)」&「保険診療費」に群がった学者を直撃

2013.6.9 フライデー

 文章へのリンク

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製薬会社、研究者、医療専門誌の三位一体の詐欺的販促が問題だったのでしょうか?

2013年6月27日木曜日

科学技術白書の研究不正に対する言及

『<科学技術白書>「放射能管理に不備」もんじゅ点検漏れ
毎日新聞 2013.6.25

政府は25日、2013年版の科学技術白書を閣議決定した。高速増殖原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)の点検漏れや、加速器実験施設「J-PARC」 (茨城県東海村)の放射能漏れ事故に触れ、「放射性物質を取り扱う施設の安全管理を行う者の意識の低さや安全管理体制の不備の表れ」と指摘した。一方、も んじゅなどの核燃サイクル技術については、「国のエネルギー政策や原子力政策の方向性を見据えつつ、研究開発の実施を判断する」と記述し、今後の姿勢を示 すことは避けた。

 また、論文データ捏造(ねつぞう)や改ざん、盗用問題が相次いでいることを受け、告発窓口の設置や罰則強化などを進めていることを挙げ、研究の質の向上と、研究開発の活性化の取り組みを促した。

 研究論文数の世界シェアが下がるなど基礎科学での日本の存在感が低下する中、科学技術による経済成長を進めるため、研究の社会的な効果などを含めた論文内容の評価システムの検討も必要と記した。【斎藤有香】




研究不正防止のためには告発窓口の設置や罰則強化などを進めるだけでは不十分です。ORI設置、実効的な規定策定、公正な業績評価の実施とその監視機関の設置、強制力のある調査制度などもっと強力な対策が必要です。

2013年6月26日水曜日

降圧剤試験疑惑:主任研究者、データに介入余地

『降圧剤試験疑惑:主任研究者、データに介入余地

毎日新聞 2013年06月26日 02時31分

 降圧剤バルサルタンの臨床試験を巡る疑惑で、京都府立医大と東京慈恵会医大の各試験は、患者データを最 終的に分析する主任研究者が、試験途中でデータを見られる状態だったことが分かった。主任研究者が、バルサルタンの効果が高いとの試験結果となるよう、 データを集めている現場の医師らに投薬量の調節などを働きかけることが可能だった。一連の臨床試験には販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」の社員が 統計解析の専門家として参加していたことなどから、データの改ざんの有無が焦点になっているが、試験の手法自体に欠陥があった。【八田浩輔、河内敏康】
 ノ社の社内調査結果から判明した。臨床試験は、バルサルタンの発売後、血圧を下げる効果に加え、脳卒中 などの発症を抑える効果もあるかを探ることが目的だった。両大学では、関連病院の医師らが各3000人以上の患者を登録。バルサルタンと別の降圧剤を服用 する二つのグループに分け、約3年間経過を追跡した。
 今回の試験では、医師と患者には、バルサルタンとそれ以外の薬のうちの、どちらを服用するかが事前に知 らされていた。この場合、主任研究者には途中段階のデータを知らせないことが必要になる。主任研究者が途中段階のデータを知ってしまうと、現場の医師に指 示することで、患者の診断や投薬量に関する判断に影響を与えることが可能となるためだ。
 患者データは、委託業者が管理する「データセンター」に集積され、表向きは大学側から切り離されてい た。しかし、主任研究者には毎月、業者からCD−ROMなどに記録されて途中経過のデータが送られていた。研究室のパソコンからインターネットで接続し、 閲覧することもできる状態だった。
 臨床試験の統計解析の第一人者、大橋靖雄・東京大教授は「データセンターが主任研究者から独立していな かったのは非常に大きな問題。今回のような薬の効果を比較する臨床試験では通常考えられない。こうした品質保証がなされていない試験結果を信頼することは できない」と指摘する。
 バルサルタンの臨床試験は、府立医大、慈恵医大、千葉大、滋賀医大、名古屋大で実施され、バルサルタン の有効性を示した。ノ社はこれらの論文を薬の宣伝に活用し、売り上げを伸ばしてきた。昨年、「論文のデータが不自然だ」と専門家が医学誌上で指摘。今年、 ノ社の社員が試験に参加していたことが判明した。

 ノ社が府立医大に1億円余の奨学寄付金を贈っていたことも明らかになっている。


やはりデータ処理に恣意性があったのでしょうか。

2013年6月23日日曜日

疑惑の薬・バルサルタン:/下 日本医学に深まる不信 成長戦略、阻む恐れ

『疑惑の薬・バルサルタン:/下 日本医学に深まる不信 成長戦略、阻む恐れ
毎日新聞 2013年06月23日 東京朝刊

「医療は2兆円の輸入超過だが、日本のイノベーション(技術革新)で反転させられると信じている」。安倍晋三首相は今月14日、国民向けの動画で、「成長戦略」における医療分野への期待を熱く語った。
 カギを握るのは産学連携の成否だ。政府は、世界の健康医療産業が2030年には約530兆円と、今の約 3倍に増えると試算する。iPS細胞(人工多能性幹細胞)を作製してノーベル賞を受賞した山中伸弥京都大教授のような研究者の力も結集して、再生医療や創 薬などを成長へのエンジンに育て上げようと意気込んでいる。
 だが、そんな戦略に水を差す形となっているのが、3月末に表面化した降圧剤「バルサルタン」の臨床試験疑惑だ。
 販売元のノバルティスファーマ(東京)は、京都府立医大など5大学に臨床試験を提案。「他の降圧剤に比 べ、バルサルタンの方が脳卒中の危険性を下げるなどの優れた効果がある」と結論付けた論文を宣伝に活用してきた。だがノ社は、社員が統計解析に関与してい たにもかかわらず、情報開示をしていなかったことや、府立医大側に1億円超の寄付をしていたことで、疑惑を招いている。データの不自然な一致など論文の内 容自体に疑問が呈されていることも問題を大きくさせている。
 産学連携には、「企業から資金援助を受けた研究者の仕事を信用してよいのか」という疑念がついて回り、 ぬぐい去るには金銭に関する情報公開が不可欠となる。「8月に東京で、アジアや太平洋地域の主要医学誌の編集部が一堂に会する国際会議がある。主要なテー マは、研究者と製薬会社の金銭関係と情報公開のあり方だ。バルサルタンの問題が話題の中心になるのは間違いない」。国際医療に詳しい渋谷健司・東京大教授 はこう話す。
 米国の有力経済誌「フォーブス」も、府立医大の論文が撤回(取り消し)されたことや、ノ社が社員の臨床 試験への関与を謝罪したことなど、一連の問題の記事を5本報じている。「日本の産学連携のあり方に海外から疑念を持たれたことは、日本発の医薬品の国際的 な信用にとって大きなマイナスとなった」。日本医師会の今村聡副会長はこう語り、この問題が成長戦略に影響することを懸念する。
        ◇
産学連携の一方の当事者である日本の研究者への信頼も大きく揺らいでいる。米科学誌に昨年発表された報告によると、「捏造(ねつぞう)かその疑い」 で撤回された生物医学や生命科学分野の論文数は、米国、ドイツに続いて日本が3位。昨年は、元東邦大の麻酔科医による「世界最多」172本の捏造が判明。 今年は既に、バルサルタンの臨床試験を行った府立医大の松原弘明元教授が関係した14本で不正が発覚している。バルサルタンとは別の研究テーマだった。
 研究不正を許す日本の土壌に厳しい目が集まる中で、今回の問題は起きた。府立医大の臨床試験論文を撤回 した欧州心臓病学会誌の編集長、トーマス・ルッシャー医師は4月、誌上で世界の科学不正の歴史をまとめた。最近の問題として紹介した二つのうちの一つが、 日本のバルサルタンの臨床試験だった。「日本で臨床試験に懸念が発生した。まだ詐欺かは明らかでないが、論文の正当性に影響を与える懸念だ」
 バルサルタン問題への日本社会の対応を世界が見ている。(この連載は河内敏康と八田浩輔が担当しました)




日本の研究は大学等や省庁、資金配分機関の無責任さのために世界から信用されなくなっています。日本社会にとって大きなマイナスです。

2013年6月22日土曜日

疑惑の薬・バルサルタン:/中 臨床試験に懸けた製薬企業 不透明な産学連携

『疑惑の薬・バルサルタン:/中 臨床試験に懸けた製薬企業 不透明な産学連携
毎日新聞 2013年06月22日 東京朝刊

 「パワーが違う」

 2007年以降、こんなコピーと共に降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の広告が、大手医療雑誌に続けて掲載された。薬を車のエンジンに模し「JIKEI HEART」のエンブレムが輝く。同年4月に東京慈恵会医大が発表した臨床試験を前面に出し、他の薬と比べたバルサルタンの「強さ」をアピールしている。

 降圧剤は、体にどう作用して血圧を下げるかによって複数の種類がある。バルサルタンを含む「ARB」と呼ばれる種類は、6300億円(12年、薬価ベース)の大型市場。降圧剤の治療では一度使い始めた薬をずっと使い続ける傾向があるため、ARBを扱う多くの製薬各社がしのぎを削ってきた。

 発売は00年。ノ社はバルサルタンの商品イメージを赤色に統一した。赤は劇薬を連想させるため業界でタブー視されていたが、あえて赤を使った差別化戦略は成功し、5年後に年間売り上げ1000億円を達成する。ピーク時の09年には1400億円を売った。

 競争に勝ち抜くため、血圧を下げる効果に加え、脳卒中などの発症の危険性を下げる効果が証明されることを期待し、ノ社は大学側に臨床試験を提案していった。結局、臨床試験をしたのは5大学。このうち京都府立医大には、ノ社から1億円超の寄付金の提供があったことが3月末、情報公開請求した毎日新聞の報道で表面化した。

      ◇

 「業界全体で透明性を確保したいと取り組んでいる時期に非常に不愉快だ」。国内の製薬会社幹部は「バルサルタンの臨床試験は、企業と研究者との不透明な関係によって、公正さが失われたのではないか」という今回の疑惑に憤りを隠さない。欧米ではこの20年間で利益相反に対する取り組みが進み、日本でも本格化しているからだ。

 日本製薬工業協会(製薬協)は会員企業に対し、個々の医師に支払ったさまざまな金銭を来年度から公開するよう求めている。医学系118学会が加盟する日本医学会も、論文や学会発表の際には研究費の提供元を明示することを求める利益相反ガイドラインを11年に作成したばかりだ。

バルサルタンの座談会形式の記事広告には、日本高血圧学会を中心に有力研究者が繰り返し登場してきた。一方で、臨床試験の結果は複数の学会の診療ガイドラインにも反映され、現場の医師の治療を左右した。しかし、今年2月に京都府立医大の論文が掲載誌から撤回(取り消し)されたため、ガイドラインを見直す動きが出ている。

 疑惑の全体像を明らかにするには、研究者側へのあらゆる資金の流れの開示が不可欠なのに、利益相反に関するルール作りを各大学に指導してきた文部科学省は「製薬企業や大学が自主的に情報を公開すべきだ」(産業連携・地域支援課)と、あくまで大学などの調査待ちの姿勢を崩さない。

 宮坂信之・東京医科歯科大名誉教授は、医学系研究費の半分を民間資金に頼る日本の現状を踏まえて指摘する。「医学の発展のためには製薬企業の支援は今後も欠かせない。国策で産学連携を進めた結果として今回のような問題が起きたのだから、国は大学や企業任せではなく、積極的な対応をとる必要がある」

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 ■ことば
 ◇利益相反

 研究者が外部から資金提供を受けたことにより、研究の公正さを疑われる状態を指す。疑いを持たれずに産学連携を推進するには、研究者と資金提供者には資金に関する情報公開が必要とされている。


国は問題を指摘しても何も対応しません。これが不正改善の支障です。国の無責任な態度を必ず改善する必要があります。

2013年6月21日金曜日

疑惑の薬・バルサルタン:/上 血圧データ、不自然な一致 4大学、別々の臨床試験

『疑惑の薬・バルサルタン:/上 血圧データ、不自然な一致 4大学、別々の臨床試験
 毎日新聞 2013年06月21日 東京朝刊

昨年度の国内医療用医薬品の売り上げランキングが14日、発表された。1位はノバルティスファーマの降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)の 1083億円。大ヒット薬は業界で「ブロックバスター」と呼ばれ、この薬もその一つ。ところが今、厳しい視線にさらされている。

 「バルサルタンには多くの効果があり、血圧を下げるだけではない」と、発売後に実施された臨床試験を基 に宣伝されてきた。「だが科学的な根拠がなかったなら、国民は貴重な保険料や税金を収奪されたことにもなる」。国の薬の承認審査に携わってきた谷本哲也医 師は疑惑の構図をこう解説する。

 宣伝に活用された臨床試験は、東京慈恵会医大と京都府立医大で実施された。バルサルタンと別の降圧剤を 服用した二つの患者グループを対象に、血圧が影響する脳卒中などの発症状況の違いを比べた。患者グループの最高血圧(収縮期血圧)の平均値やばらつきは同 じだったのに、バルサルタンの方が脳卒中などを発症した患者が少なかった。「この薬には降圧に関係なく、脳卒中などのリスクを低下させる力がある」とする 論文が07、09年に発表されていた。

 ところが昨年4月、世界有数の医学誌ランセットに、これらの臨床試験への「懸念」を示す論文が掲載され た。執筆した京都大病院の由井芳樹医師は、降圧剤の効果で血圧はいずれも下がるものの、下がり方には当然差が出るはずだと指摘した。臨床試験の対象となる 患者を、年齢や性別、元々の血圧など属性が偏らないように二分したとはいえ、血圧が一致することは考えにくいことだった。

 さらに調べると、千葉大と滋賀医大でも、種類が異なる降圧剤を服用した二つの患者グループで、試験終了時の最高血圧の平均値が一致していた。

 由井医師は「前提として血圧が一致していないと、他の薬を飲んだグループと比較して、『バルサルタンには降圧効果以外にも優れた効果がある』と説明しにくい。血圧の値がこれだけそろうとは奇妙だ」と指摘する。

 由井医師は、バルサルタンなどの降圧剤に関する国内外の36の臨床試験結果も調べてみた。比較する2グループで、最高血圧と、最低血圧の平均値がそれぞれ一致していたのは、慈恵医、京都府立医、千葉、滋賀医だけだった。由井医師はこの結果も昨秋に発表している。



新薬の承認を目指す「治験」には、薬事法で試験中の厳格なモニタリングや監査が製薬会社に義務付けられている。しかし、今回のように市販後に行われ る大学の臨床試験をチェックする公的な仕組みはない。疑惑を受け、薬の試験制度に詳しい景山茂・慈恵医大教授は「臨床試験の不正を防ぐには、各大学にサン プル調査する独立した部署を置く必要がある」と訴える。
 同様の臨床試験を実施した名古屋大を含む5大学は、疑問に答えるため、データの検証を始めている。だが学会に促されて始めた京都府立医を除けば、いずれもノ社による試験への不透明な関与が毎日新聞の報道で表面化した今年3月以降と、動きは鈍かった。
      

 「日本最大の薬と研究者に関わるスキャンダル」とも言われるバルサルタン問題。影響の大きさと真相究明への課題を報告する。



不正の原因とその改善策の提言、真相究明を期待します。

2013年6月19日水曜日

Natureが森口尚史を報道!

Nature News Blogが"Self-confessed liar publishes more dubious stem-cell work"(2013.6.14)というタイトルで昨年iPS細胞臨床捏造で世間を騒がせた森口尚史を報道しました。最近また論文3編を発表したが、森口の所属や共著者及びその所属の存在をNatureが調査しても確認できなかったそうです。日本の信頼が下がりますが、森口の発表をやめさせることはできないので仕方ないです。ジャーナルが森口の論文の真偽をきちんと確認して信頼性がないなら掲載しないという当たり前の行動をしてくれることに期待するしかありません。

Reference
[1]Nature News Blog "Self-confessed liar publishes more dubious stem-cell work" 2013.6.14

2013年6月18日火曜日

温暖化で大洪水、被害最大で1億人…東大チーム

『温暖化で大洪水、被害最大で1億人…東大チーム

 地球温暖化が今世紀末まで進むと、豪雨や長雨によって大洪水が起きる危険性がアジアやアフリカ、南米で高まり、最大で1億人の被害者が出るという試算を、平林由希子・東京大准教授(河川工学)らのチームがまとめた。

 科学誌ネイチャー・クライメート・チェンジ電子版に発表した。

 全世界の平均気温が2100年に最大で約3・5度上がるという国連組織の推計を基に、コンピューターで計算した。それによると、約1700人が死亡した2010年のパキスタン大洪水のような「100年に1回」規模の洪水が起きる可能性が、メコン川やナイル川の源流などで倍以上に増えるという結果が出た。

 これらの地域は人口の大幅な増加が見込まれ、最大で1億人が河川の氾濫に見舞われるという予測になった。

(2013年6月18日16時47分  読売新聞)』

本当ならすごいですね。

2013年6月16日日曜日

患者「別の薬、不安も」 府立医大病院、ノバルティス使用停止

『患者「別の薬、不安も」 府立医大病院、ノバルティス使用停止

 血圧降下剤バルサルタン(商品名ディオバン)の臨床試験をめぐる問題で、京都府立医科大付属病院(京都市上京区)が販売元のノバルティスファーマの医薬品を原則使用停止にしたことに対し、患者からは薬の切り替えに不安の声が上がっている。同大学は「悪質性が高ければ停止を継続する」としているが、臨床試験を実施した大学側への患者の不信感も強い。

 府立医大の臨床試験は2004~09年に松原弘明元教授を中心に進められ、今年になって「データ解析に誤りがある」などとして論文が撤回された。ノ社の社員がデータ解析を担当したが、大阪市立大所属と記されていた。「不適切な関与」とノ社も認め、府立医大病院は5月24日からノ社の医薬品を原則使用停止とした。

 停止対象はバルサルタンを含め47種類で昨年度の取引額は約3億円。外来受け付けなど約20カ所に説明文を掲示、担当医からも患者に個別説明しており、「大きな混乱はない」(同病院)という。

 バルサルタン問題は大学の調査委員会が検証している。約3千人の臨床試験でデータが多く、最終の結論はまだ先になる見込み。停止措置をどうするかは「調査委員会の結論を見て決める」(同病院)といい、解除の見通しはない。

 患者からは「薬の切り替えを不安に思う人もいるが、患者は弱者なので医師には言いづらい」(63歳女性)、「一方的な決定。別の薬で同じ効能が得られるのか心配な人もいる」(40歳男性)など不安の声が出ている。

 「臨床試験で製薬会社への利益誘導があったのなら、日本の医療の信頼性は地に落ちる。製薬会社と大学の癒着を断ち切るべきだ」(53歳男性)と、ノ社や臨床試験を行った大学への批判も強い。

 同病院の対応についてノバルティスファーマは「病院の判断は大変残念だ」とコメントしている。

【 2013年06月14日 08時49分 】

(京都新聞)』

患者にとっては薬を変えると不安だという人もいますね。

2013年6月15日土曜日

架空業績 不正に助成金 富大、准教授を懲戒解雇

『架空業績 不正に助成金 富大、准教授を懲戒解雇
 富山大は十三日、教授昇任の応募書類や研究助成の申請書類に架空の研究業績を記載する不正を繰り返したとして、人文学部の男性准教授を懲戒解雇処分にしたと発表した。二〇〇〇年度からの十二年間に三十七回の虚偽記載をしていた。
 富山大によると、准教授は昇任選考で大学側に提出する応募書類などに、架空の業績や雑誌に掲載が決まっていない論文を研究成果として記載。助成金申請書類も複数あり、少なくとも学内の助成金千四百九十万円を不正な申請で受け取っていたという。
 六日の役員会で懲戒解雇を決めた。内部規定として准教授の名前や年齢は明らかにしていない。大学の聞き取りに、男性准教授は「間違って記載しただけだ」と不正を認めていないという。
 〇七、一一年度の教授昇任選考で、業績リストとともに提出すべき論文や出版物が出されなかったため、不審に思った大学側が一二年一月に懲戒委員会を設置して調べていた。准教授として採用された時の書類には不正がなかった。
 遠藤俊郎学長は「教育、研究に従事する者として決して許されないもので誠に遺憾。教職員の社会規範の順守に取り組みたい」とコメントした。 (広田和也)

』 (中日新聞)

このような詐欺は懲戒解雇で当然です。助成金の詐取は詐欺罪になり得ます。刑事責任をきちんと追及する必要があります。

2013年6月12日水曜日

バルサルタン:臨床試験問題 ノ社社員が同僚紹介 販売促進に期待

『バルサルタン:臨床試験問題 ノ社社員が同僚紹介 販売促進に期待
毎日新聞 2013年06月11日 東京朝刊
 
降圧剤「バルサルタン」の臨床試験問題で、販売元の製薬会社「ノバルティスファーマ」(東京)の社員 (既に退職)が大学の研究チームに加わることができたのは、ノ社で医師向けの宣伝などを企画するマーケティング担当者による紹介が端緒だったことが分かっ た。当時、ノ社は販売競争に有利となる臨床試験の結果が出ることを期待しつつ、大学側と試験実施に向け計画を進めていた。ノ社は、この経緯を厚生労働省と 関係学会に社内調査結果として報告したが、これ以外には公表していない。【河内敏康、八田浩輔】
 バルサルタンの2000年の発売以来の売り上げ(12年まで)は計約1兆2000億円に上る。医師の処方薬であり、保険料の形で国民が負担している。
 取材で判明した社内調査結果などによると、海外で「バルサルタンには、血圧を下げるだけにとどまらない種々の効果がある」と報告されていたため、ノ社は、日本人対象の臨床試験が行われて同様の効果が確認されることを望んでいた。
 一方、大学側には、実績づくりのために大規模な臨床試験に取り組みたいとの希望があり、思惑が合致した形で試験が計画されていった。
 その過程で、ノ社のマーケティング担当者が、「統計の専門家」として、循環器マーケティング部門に所属していた社員を教授らに紹介していた。社内の上司は、臨床試験が計画通りに行われるよう、社員に対し、研究チームへの支援を指示していた。
 結局、臨床試験は京都府立医大など計5大学で実現。統計解析などにノ社の社員が関わったことは、いずれ の論文からも伏せられ、所属は「大阪市立大」などとなっていた。このうち東京慈恵会医大と府立医大を含む4大学の結果には、専門家から統計学的な疑問が投 げ掛けられており、府立医大の論文は掲載誌から撤回(取り消し)されている。
 ノ社は3月、取材に「臨床試験は医師主導で、企業は関与できない」「社員は有名な統計解析の専門家だったために加わった」と説明していた。問題が拡大した後の5月22日にホームページで社内調査の結果を公表したが、社員が研究チームに加わった経緯は明らかにしなかった。

 ◇年間売り上げ1000億円計画

 ノバルティスファーマの社内資料などによると、同社は2002年ごろ、降圧剤バルサルタン(商品名ディオバン)の年間売り上げ1000億円を目指す「100Bプロジェクト」をスタートさせた。Bは英語で10億を示す「ビリオン」の頭文字だ。スイス本社との共同事業だった。
 降圧剤は、血圧を下げる作用の仕組みによって複数の種類があり、バルサルタンはそのうち「ARB」と総称される種類に属する。ARBは00年前後に数社が発売し、競合品との差別化が社内の最重要課題だった。
 「100B達成には国内の臨床的データの創出が不可欠」として、ノ社が一連の臨床試験を企画・提案したのはまさにその時期だった。
 最初の試験となった東京慈恵会医大のチームは、バルサルタンが脳卒中などのリスクを大きく下げると結論付け、論文は07年4月に一流医学誌「ランセット」に掲載された。
 この成果は、医師向けの宣伝に大々的に活用された。多くの医師は「患者に処方する薬の選択を変えさせるほどのインパクトがあった」と口をそろえる。
 発売翌年(01年)の売り上げは薬価ベースで160億円だったが、4月に慈恵医大の論文が発表された07年は1276億円、8月に京都府立医大の論文が発表された09年は1400億円を記録した。



不適切な販促がディオバンの売り上げに貢献していたのでしょうか?

最近の日本の研究不正に関する分析

わが国における研究不正 公開情報に基づくマクロ分析(1)
松澤 孝明
情報管理 Vol. 56 (2013) No. 3 P 156-16

https://www.jstage.jst.go.jp/article/johokanri/56/3/56_156/_article/-char/ja/

最近の日本の研究不正に関する分析です。

2013年6月11日火曜日

捏造大国日本、ORIを創設すべきことなど

『起こるべくして起きた高血圧治療薬バルサルタン事件

徒然薬(第3回)~地に堕ちた日本発臨床研究への信頼

2013.06.10(月) 谷本 哲也

近年、日本の臨床研究に関する不祥事が相次いで明るみに出ている。2012年10月、東京大学の研究者によるiPS細胞の世界初の臨床応用詐称を、読売新聞が朝刊1面で大誤報した事件は記憶に新しいだろう(朝日新聞日本経済新聞)。

相次ぐ日本の臨床研究に関する不祥事

この事件は、英国のネイチャー(Nature)誌や米国のサイエンス(Science)誌といった海外の一流科学誌でも写真入りで度々大きく取り上げられ(ネイチャー誌1ネイチャー誌2)(サイエンス誌)、ネイチャー誌の巻頭論説で「Bad Press」と題して、日本メディアの報道姿勢そのものまで、名指しで批判されるという不名誉な事態を引き起こした。
 この事件の直前の2012年6月には、もう1つ日本発の研究不正の金字塔が打ち立てられている。元東邦大学の麻酔科医が、吐き気止めに関する臨床 研究の捏造を長年にわたり繰り返していたことが発覚し、少なく見積もっても172本という膨大な医学論文が撤回されたというもので、その数の多さにおいて は世界的な新記録と考えられている(234)。
 これ以外にも、日本の医学研究者による著名医学誌での論文撤回事件は数々あり、2009年には世界最高峰の医学誌の1つ、ランセット(the Lancet)で昭和大学の研究者が(567)、2010年にもがん臨床研究分野での一流誌JCO(米国の臨床腫瘍学雑誌)で埼玉医科大学の研究者が(8910)、不正行為で論文撤回事件を起こしている。
 これだけ連続して発覚していたとしても氷山の一角に過ぎないのだろう。2013年の上半期でメディアを最も賑わしている大型事件は、産学連携での臨床研究データ捏造が疑われている高血圧治療薬バルサルタンの問題だ。

捏造大国日本

アベノミクスでは医療分野も成長戦略の柱の1つとして位置づけられ、研究開発やイノベーション創出促進が掲げられているが、その足元はかなり危ういと見るべきだろう。2013年3月に発表された文部科学省科学技術政策研究所の集計によれば、日本の臨床医学論文シェアは「低下の一途を辿っている」と報告されている。
 逆に躍進著しいのが中国と韓国だ。日本の臨床医学論文数国際ランキングでは、全論文数こそ米国(27.9%)、英国(6.8%)、ドイツ (6.0%)に次ぎ第4位(5.6%)に付けているものの、論文の質の高さを示すTop10%補正論文数では第8位、Top1%補正論文数では第10位に 順位を下げている。こうした状況の中、日本の臨床研究レベルにさらに疑問を生じさせているのが、上述した一流科学誌の誌面を度々飾っている日本発の不祥事 だ。
 2012年10月、PNAS(米国科学アカデミー紀要)に、科学論文の撤回動向を解析した興味深い論文が発表された(1112)。
 臨床医学も含め科学研究は基本的に性善説で成り立っており、従来は撤回論文といっても意図的ではない単純ミスによるものがほとんどだと考えられて いた。そもそも研究者が虚偽の論文を提出してくることは想定外で、研究者同士のお互いの公平な評価(ピアレビュー)という信頼関係で科学研究の世界は構築 されている。
 ところが、過去の撤回論文2047件を精査したところ、単純ミスを原因とするものは21.4%に過ぎず、43.4%が捏造またはその疑い、14.2%が重複投稿、9.8%が盗作によることが判明し、また、その数や割合も年々増加していることが報告されたのだ。

さらに国別のランキングでは、捏造またはその疑いに関しては米国、ドイツに続き、日本は第3位とされた。上述の昭和大学の論文は、最も引用された撤 回論文ランキングの世界第4位(臨床医学分野では第1位)で、日本は臨床研究の捏造大国として立派に一角を占めていると海外から評されても不思議ではない 状況となっている。

バルサルタン事件

さて、2013年6月現在、既に毎日新聞やフライデーをはじめ様々な国内メディアで取り上げられ、海外メディアのフォーブスまで報じ、さらに厚生労働大臣まで巻き込んで話題となっているためご存知の方が多いだろうが、高血圧治療薬のバルサルタン事件を振り返ってみる(131415161718)。
 この問題に関しては大手メディアのみならず、ツイッター、ブログなどを駆使した個人ボランティアにより、詳細な追及が積極的に行われていることは、2005年の耐震偽装事件を彷彿させる(1920212223)。
 バルサルタンは1996年にドイツ、米国で承認された高血圧治療薬の1つで、日本では海外に遅れて2000年に承認され、ノバルティスファーマ株式会社(以下、ノバルティス)が販売している。
 実は承認当時の国内臨床試験(治験)もかなり杜撰なもので、当時の医薬品医療機器審査センターによる審査報告書を見ると、「臨床試験の質に問題があった可能性がある」ことが指摘されている。
 余談だが、高度な厳密さが要求され、医薬品の承認取得など薬事法上の規制に沿って行われる臨床試験(治験)ですらも、日本では杜撰な国内臨床試験成績が提出されることは決して珍しくない。
 海外に比べ新薬販売が大幅に遅れるドラッグラグ問題が薬事行政のくびきになっているため、治験の質に問題があったとしても規制当局から文句を言われる程度で許され、最終的には承認取得が認められてしまう場合が多々ある。
 このことは、製薬企業や臨床試験を実施する医療関係者にとって、「いいかげんなデータを出しても日本では見逃してもらえる」というメッセージになっている可能性がある。
 いったん販売権利を取得してしまえば、今度はいかに日本の臨床現場に売り込むかという熾烈な販売合戦が始まる。循環器関連の薬剤は2011年で1兆3630億円という巨大市場で、なかでも高血圧治療薬はその60%を占める主力商品だ。
 承認時には新たなメカニズムを持つとされたバルサルタンをもってしても、既に様々な種類の薬剤が多数乱立する高血圧治療薬の領域は激戦区だ。類似の薬剤を持つ多くの競合他社と差別化を図るために、苛烈なマーケティング合戦がなされたであろうことは想像に難くない。
新薬の研究開発に多額の資金が必要であることは盛んに喧伝されるが、実はそれにも増してマーケティングに多くの資本が注ぎ込まれていることは常識として知っておくべきであろう。
 なお、この問題に関する参考図書として、「ビッグ・ファーマ」、 「デタラメ健康科学」、 「パワフル・メディシン」を一読されることもお勧めする。

不正疑惑を招いた臨床研究

バルサルタンの2012年の売上高は約1083億円とされている。同じカテゴリーの薬剤の市場規模は約4000億円で、ノバルティスが勝ち組の1 つとして競合他社を制していたと見ていいだろう。このマーケティングの成功に大きく貢献したのが、今回一連の不祥事の舞台となった5つの臨床研究だ。
 2009年8月に発表された「Kyoto Heart Study」では、約3000人もの患者が参加した大規模試験であるにもかかわらず、主論文に加え関連した4論文が、データに重要な問題が存在したことを理由に2013年2月に撤回され、研究を主導した京都府立医科大学の教授が辞職する事態に至った。
 この撤回論文と同様に、バルサルタンには血圧を下げる以外に心血管の保護効果が存在すると主張をしているのが、東京慈恵会医科大学の研究者らによりランセット誌に2007年4月に発表された「Jikei Heart Study」だ。
 ランセット誌は世界の臨床医学に大きな影響力を持つ専門誌で、教科書やガイドラインを書き換えるような重要な研究成果が発表されることが多い。日本高血圧学会が作成した最新版の高血圧治療ガイドライン2009でも、この論文を引用し「単なる降圧以上に、直接臓器障害ひいては疾患発症を抑制する可能性がある」と記載されている。
 ところが、この試験結果にもデータに不可解な点があることが、京都大学の研究者により2012年4月に指摘された
 ランセット誌では論文に関して重要な疑問が生じた場合、研究者同士で紙上での議論が展開されるのが普通だ。しかし、この「Jikei Heart Study」に生じた疑義に関して研究者らは沈黙を守ったままで、いまだに真相が不明な状態が続いており、ついに大学側も内部調査に着手したという。
 そのほかにも、名古屋大学の「Nagoya Heart Study」、千葉大学の「VART」や滋賀医科大学の「SMART」といった類似の臨床研究にも次々と疑惑の目が向けられ、臨床研究の世界では史上稀に見るほど事態は悪化の一途を辿っている。



最も必要なのは試験結果の信頼性担保

さらに疑惑に拍車をかけているのが、ノバルティスの元社員が身分を明かさないまま臨床研究の統計解析に関与していたことだ。明らかに利益相反の問題に抵触する行為で、同社の謝罪とともに社長らの報酬減額などの対応が取られることが2013年6月3日に発表されている(2425)。
 ノバルティスの調査では、「元社員は、研究によってはデータの解析などに関わっていたことが判明し」たが、「データの意図的な操作や改竄を示す事 実は」なかったという。しかし、どのような調査が行われたのかは未発表で、スイスのノバルティス本社や各大学の調査結果についても、今後の発表を待たなけ ればならない。
 製薬企業、特に外資系企業は社員の異動が激しいため、今回の事件に関しても当時の担当者にまで調査協力を依頼することも重要だろう。
 なお、医薬品の承認審査の過程において、米国FDA(食品医薬品局)では、製薬企業は治験の生データそのものを規制当局に提出し、FDA自らがそ の解析を行っているが、日本では性善説に基づいて製薬企業の統計担当者による解析済みの治験データを受け取って、規制当局がその評価を行う仕組みになって いる。
 今回、製薬企業の統計担当者によるデータ不正疑惑が生じたことは、日本の医薬品の承認審査体制に禍根を残す可能性もある。
 今最も必要とされるのは一連の臨床試験結果が信頼に足るものか、詳細な真実がさらに明らかにされることだ。利益相反という手続き上の問題はさておき、一般の臨床医や患者が本当に知りたいのは、バルサルタンの素晴らしい効果が本物かどうかだ。
 もしバルサルタンが血圧を下げるだけでなく臓器保護効果まで併せ持つことが真実ならば、一連の不祥事にもかかわらず、今後もブロックバスターの地位に値する重要な立ち位置を保ち続けるだろう。
 筆者も臨床現場の末端で働く一医師として、一連の臨床研究の結果が間違いないものだったのか、公正な検証結果が一日も早く詳らかにされるのを待ち望んでいる。
 また、カルテ記録が残っていないなどの理由で迷宮入りすることも危惧されているが、ノバルティスや高血圧学会などでバルサルタンの大規模臨床試験を再度実施し、結果の再現性が得られるのか再検証まで行えば、日本の臨床研究の信頼性回復のためにはむしろ早道かもしれない。

日本版ORI(研究公正局)の創設はあり得るか

ここで筆者が思い出すのが、20世紀末に南アフリカの研究者ベズオダ(Bezwoda)氏によって行われた、乳がんに対する大量化学療法に関する臨床研究不正事件だ。
 不自然なほど素晴らしい臨床研究結果に疑義が持たれ、米国の研究者らが現地に直接乗り込んでカルテを隅から隅までひっくり返し、徹底的な真相究明がなされた。
 その結果、多数の不正が白日の元にさらされ、さらにその検証結果の詳細がランセット誌JCO誌で医学論文として発表された。
 今回のバルサルタン事件でも、撤回された「Kyoto Heart Study」の検証結果も含め、本当のところ何が起こったのかを徹底的に明らかにし、最終的には全世界に向けて英文での医学論文として発表し、後世に残す ところまで遂行することが関係者の役目ではないだろうか。
 また、日本の医療界では、うまく運用されているように見える米国の政府系機関を、部分的に真似て日本版を作れば問題が解決するはずだ、という牽強付会な議論がしばしば行われている。
 代表的なのは安倍政権が掲げる日本版NIH(国立衛生研究所)構想だが、そのほかにも日本版FDA(食品医薬品局)、日本版CDC(疾病予防管理センター)や日本版ACIP(予防接種諮問委員会)など様々な提案がある。
 皮相浅薄かもしれないが、その言説に便乗して提案させてもらいたいのが、日本版ORI(Office of Research Integrity:研究公正局)の創設だ(米国研究公正局)。
 米国では研究不正が社会的問題となったため、1980年代からの立法や前身組織を経て1992年にORIが設立され、このお役所が研究不正に関する調査などの業務を担当している。バルサルタン事件では、お手盛りの身内による調査で公正さが保たれていないことが既に指摘されている
 日本ではNPOとして臨床研究適正評価教育機構が2009年に設立されているが、度重なる不正事件を受けこの団体がどういった役割を果たすのかが注目される。

Qui Tam(キイタム)訴訟とマネーゲーム

仮に一連の臨床研究で意図的な不正行為があり、その結果を利用して販売プロモーション活動が行われていたとすれば、どのような対応が取られるべきだろうか。
 もしバルサルタン事件で臨床研究の不正行為があったとすれば、臨床現場や世界の医学界、さらには一般の患者や日本国民に対する重大な背信行為だと 言わざるを得ないだろう。米国では製薬企業による不正行為に対する訴訟が常態化しており、適応外での販売や医師へのリベートなど不適切なマーケティング行 為への罰則として、巨額の賠償金が政府に支払われる事例が多発している。
 医療業界は専門性が高いため、不正行為が露見するのは内部告発による場合が多い。この不正に関する公益通報を促進しているのが、キイタム(Qui Tam)訴訟制度だ。キイタムはラテン語の “qui tam pro domino rege quam pro se ipso in hac parte sequitur (統治者のために、また自分自身のためにも、この事件について訴える者)”というフレーズに由来する。
 キイタム訴訟制度では、政府と契約している企業等の不正が見つかった場合、その告発者自身が民事訴訟を起こすことが可能で、さらに勝訴した場合、 和解・賠償額の最大30%まで米国司法省から報償として受け取ることができるという、いかにも米国らしいダイナミックな仕組みが取られている。
 この仕組みは金銭的インセンティブを強力に裏づけていると想像されるが、2001年から2012年9月まで米国政府は23件もの不正事件に対して和解金を受け取っている(2627)。驚異的なのは製薬企業の支払額で、1000万ドルから30億ドル(中央値で4億3000万ドル)と報告されている。
 史上最高額の30億ドルは、2012年7月のグラクソスミスクライン(GlaxoSmithKline=GSK)による支払いだ。また、訴訟の対象となった製薬企業は、GSKのみならずメガファーマの有名どころがずらりと並んでいる。
 医薬品業界では少々際どい売り方をしたとしても、売り抜けてしまえば巨額の利潤を得ることができるため、この程度の和解・賠償額の支払いはリスクとして既に織り込み済みなのかもしれない。
 つくづく医薬品業界は製薬企業のマネーゲームの場と化していると思う。
 翻ってバルサルタン事件では年間1000億円以上の売り上げに対し、ノバルティスの対応は関係役員の月額報酬2カ月10%の減額にとどまっている。果たしてこれで釣り合いが取れるものなのか、今後の展開からまだまだ目が離せない。

(JB Press)



ORIは必要です。

2013年6月9日日曜日

薬事日報:ディオバン問題、臨床研究の本質議論を

2013年6月7日 薬事日報: ディオバン問題、臨床研究の本質議論を
ノバルティスファーマが販売する降圧剤「ディオバン」の医師主導臨床研究の不正問題は、業界に激震をもたらした。ディオバンをめぐる複数論文のデータ解析 に問題があるとされ、責任著者が論文を取り下げたばかりか、ノバルティス社員が身分を偽りデータ解析に関与していたことが発覚。日本の臨床研究の信頼性を 根底から揺さぶった。
 日本医学会はディオバンの臨床研究にかかわった複数の大学に対し、第三者的立場から調査委員会を設置し、データの再検証を行って説明責任を果たすよう要 求。高久史麿同会会長は「メーカー社員の身分を偽ったことは許し難い行為。問題のある論文を使って大いに製品を宣伝したことには、道義的、社会的に責任が ある」と厳しく批判した。日本医師会もノバルティスに対し、不正問題の事実関係について早急に説明責任を果たすよう求めた。
 今回の事態を生んだ背景について、日本医学会利益相反委員会は「透明性のない産学連携活動に起因している」と指摘し、疑惑を招かない医師主導臨床試験の 実施に向けたルール作りが求められるとしている。まさにメーカー社員が身分を偽り、不透明な中で自社製品のエビデンスを作る臨床研究の解析を行い、有利な データを得ようとしたことは厳しく批判されるべきだ。しかも、その不正データを活用して大々的に宣伝し、1000億円以上を売り上げていたという事実は、 エビデンスに基づく医療を根底から覆す行為であり、到底許されない。
 ただ、今回の重大な不正について、製薬企業と医師の利益相反関係だけを指弾して終わらせてはいけない。ディオバン不正問題で、引き続きノバルティスや臨 床研究の実施にかかわった大学は、データの再検証などの説明責任を果たす努力を続けるべきなのは当然として、一方で利益相反によって臨床研究の質や公正性 が歪められないためには何をすればいいのか。日本医学会は医学研究のCOIマネージメントガイドラインの改訂を表明したが、もっと医学研究の本質的なあり 方を議論すべき時ではないか。
 日本の臨床研究の脆弱さはかねてより指摘されており、未だに被験者をないがしろにした研究の不正も相次ぐ。ノバルティスは不正問題を謝罪し、プロモー ションの自粛や関係役員の月額報酬の2カ月間10%減額などの対応策を表明したが、製薬企業と研究者の関係が大きくクローズアップされたディオバン不正問 題が何らかの形で決着を見たとしても、それで日本の臨床研究の信頼性が回復するわけではない。
 折しも現在、臨床研究に関する倫理指針の改訂作業が進められている。製薬企業との関係も含め、日本で質の高い公正な臨床研究を行う体制を作り、適切に研 究が実施されていることを医学会全体で示して信頼回復に努めなければ、国民の医療向上に甚大な影響が出かねない。それだけの問題だという認識を全てのス テークホルダーが共有すべきだ。まずそこが信頼回復へのスタートになる。

今後どうなるのでしょうか?

2013年6月8日土曜日

バルサルタン事件に警察は大いに関心あり?



京都府立医大論文撤回に見るノバルティスの「威光」

 まずは大まかな構図を示す。製薬企業が大学に金銭を供与し、論文を書かせる。論文のデータは捏造。仲介者として特定の社員の名前がささやかれている。企業はその論文を販促ツールとして活用。年間1000億円を売り上げる――。
警察当局の関心事
 製薬と大学が組んだ一大詐欺事件。
 「警察当局は非常に興味を持っているようです」(国立大学教員) 
  今のところ、名前が挙がっているのは次の5大学。京都府立医科大学、東京慈恵会医科大学、滋賀大学、千葉大学、名古屋大学だ。名古屋大を除く4校に論文捏 造の嫌疑が掛けられている。共通しているのは製薬企業の名前だ。ノバルティスファーマ。売上高で世界2位に入るスイス企業の日本法人が関与していた。
  ノバルティスはかつてACE阻害薬の市場で一世を風靡した。さんざん稼いだ後、やがて特許切れを迎える。ノバが次に売り出した薬がARBだった。ARB市 場は4000億円。日本市場の特徴はACE素材ではなく、ARBをやたらと使っていることだ。海外ではACEをよく使う傾向がある。ARBはその分使われ る機会が少ない。欧米の市場構成とはまさに対象的だ。
 降圧剤を扱っている製薬企業の言い分に耳を傾けてみよう。
 「理由は簡単です。ACEを作った会社がARBも作っています。ええ、ノバです。マーケティングを活用した販促の成果でしょう。ACEの特許が切れている以上、ARBで稼ぐしかない」
 ACEを飲むと、空咳が出やすくなるといわれている。だが、これも怪しい。日本人だけに突出して空咳が出るようなことが起きるのか。
 「日本の循環器内科の先生方はよくそうおっしゃる。ノバのMRは自ら『あれもマーケティングしたからこそです』と断言している」(前出)
 外資系製薬企業の日本法人は事実上、営業部隊のみの編成。アングロサクソンの原理そのものの「肉食獣」たちは国産企業とはまったく別の価値観で行動している。
 それにしても4000億円市場だ。そもそもACEは特許切れの医薬品。これを売ったところで、売り上げは伸びない。「ARBがいかに効くか」をPRすることは製薬企業にとって死活的な問題である。
 この分野でノバは1000億円の売り上げをはじき出している。武田薬品工業も同じく1000億円。その後を第一三共が追っている。事件はそんな環境の中で起きたといえる。
  2007年に第71回日本循環器学会総会・学術集会で発表されている「慈恵ハートスタディ」。ノバも関わっており、日本人の高血圧患者を対象にした初の大 規模臨床研究といわれていた。論文では「血圧は下がらないが、心筋梗塞や脳卒中は減る」と説いている。このときのデータに捏造の疑いが持ち上がった。これ は販促ツールにしたとみられる。
 「臨床研究をやっている最中からあまり評判はよくありませんでした。血圧が下がっていないのに、なぜこの試験でだけそんなことが起こるのか。研究の途中で評価項目をねじ曲げたこともある。うさんくさいと評判でした」(国立研究機関職員)
 12年春には京都大学の教授が「データが不自然にそろっている」と指摘した手紙をオランダの医学雑誌『ランセット』に送付した。同社はこれを公表する。だが、慈恵医大の関係者は反応しなかった。
  「『ランセット』は捏造に対し、かなりナーバスになっています。MMRワクチンと自閉症の関連を示す論文を掲載したところ、後で捏造が発覚。社会問題化し たことがあったからです。読者が離反する。『ランセット』は非常に怒っている。まあ、彼らの目が節穴ともいえるわけですが」(前出の国立大教員)
 『ランセット』は反対意見を掲載する。12年春以降、京都府立医大も同じような事態に陥ったが、こちらも何ら対応はしていない。
 今年2月、論文撤回を毎日新聞がスクープ。それ以降、問題が表面化する。『フライデー』をはじめ、ほかのメディアも追随した。
 5月には小室一成・東京大学医学部循環器内科教授が米国の雑誌『フォーブス』に顔写真入りの記事で登場した。記事の前半は小室氏がかつて書いた論文におけるデータへの疑念、後半はノバルティスの医薬品の臨床研究をめぐる疑惑で占められている。何が起こっているのか。
出処進退が最後の決め手
 米国の大学に籍を置くある研究者はこう慨嘆している。
  「日本の臨床研究の信頼性は地に落ちています。『アベノミクス』でiPS細胞を使い、再生医療だとはしゃいでいますが、何を出してもまともに受け取っても らえないかもしれない。製薬企業が大学に金を出し、データをいじり、その研究論文が世界的なジャーナルに載る。こんなことをしたら、どうなるか。構造的な 問題に各大学は陥っているんじゃないでしょうか」
 これほどの事象にもかかわらず、当事者は「調査中」を建前に何年にもわたって逃 げ隠れを続ける。こちらは逃亡ではなく、昨年春、辞職の道を選んだ東京大教授の論文捏造、不正に関してもいまだに調査が続いている。中にはすぐに結果が出 る事例もあるが、残念ながら影響力に乏しい研究者の場合であることが多い。なぜ、ここまで論文捏造の発覚が続いているのか。前号でお伝えしたからくりが存 在する。きっかけはインターネット上のブログだった。
 「ブロガーがアプリケーションソフトを活用し、論文の中で同じデータを使い 回していないかを確認している。かつては不正の発覚といえば、『研究の再現性がないこと』と相場が決まっていました。ところが、最近ではデータの形式上の 問題から足がついている。大きな変化です」(前出とは別の国立大学教員)
 これでは言い訳はできない。だが、大きな研究室をマネジメントする教授にも言い分はある。画像ソフトでいじられたものまで見分けるのは容易なことではないだろう。
 「信頼回復の最終的な決め手はやはり出処進退。小室氏は学界のプリンスともいえる本流中の本流。彼の身の処し方一つに日本の臨床研究の明日がかかっているといっても過言ではありません」(前出の教員)
 ネット社会の成熟で明るみに出た不正の連鎖。大学と企業がずぶすぶの関係を続けてきたのは間違いない。だが、果たしてうみはこれで出し切ったといえるのだろうか。
 「ブロガーのチェックにこれからどれくらい引っ掛かるのか。その結果、不正の裾野がどこまで広がるのか。恐らく誰にも正確な予想は困難でしょう」(前出の職員)
集中 2013年6月 4日 04:08


詐欺で刑事事件化されるのでしょうか?

2013年6月7日金曜日

小室一成東大医学系循環器内科学教授らのデータ流用事件をFobes誌が報道

5月10日に小室一成東大医学系循環器内科学教授らのデータ流用事件をFobes誌が報道しました。今後どうなるのでしょうか。

2013年6月3日月曜日

京都府立医大、当初の予備調査で不公正な調査か? - バルサルタン事件



降圧剤論文:元研究仲間が予備調査 「捏造ない」結論

毎日新聞 2013年06月02日 13時05分(最終更新 06月02日 13時38分)
 降圧剤「バルサルタン」の臨床試験問題で、京都府立医大が、調査対象の松原弘明・元教授(56)と共同 研究をした経験がある教授らに予備調査をさせ、「臨床試験の論文に捏造(ねつぞう)はない」と1月末に結論付けていたことが分かった。大学側は「人選に問 題はなかった」とするが、公正性を保つには利害関係がない人間による調査が不可欠だ。一連の問題は、日本の臨床試験の信頼性に関わる事態となっており、大 学側の当初の甘い認識が問われそうだ。
 予備調査は昨年12月に始まった。日本循環器学会誌が同大チームの2論文を「データ解析に極めて多くの問題点がある」などの理由で撤回(取り消し)し、同学会が大学に調査を求めたためだ。
 大学は学内3教授に調査を指示。3教授は「単純ミス」と主張する松原元教授らへの聞き取りなどを基に、 今年1月末に「捏造とは認められない」と報告した。しかし、学会から「公正で詳細な調査」を求められると、3月になって学外の有識者が参加した調査委員会 を組織した。調査は今も続いている。
 大学は予備調査を実施した3教授の名前を明らかにしないが、毎日新聞は関係者への取材で3人を特定。このうち2教授に元教授との共著論文があった。
 この2教授のうち1人は、元教授の不正論文を検証する学内の別の調査委の委員に加わることになった際、 初回の会合(昨年2月)で、元教授と共同研究した経験を理由に委員を外れていた。この調査委は今年4月、降圧剤とは別に元教授が関わった14論文の不正を 認定し、公表している。
 予備調査の人選について、大学側は「一般論」とした上で「調査対象の論文に関与していなければよい。全ての共同研究をさかのぼって調べるのは困難だ」としている。【八田浩輔、河内敏康】
 【ことば】降圧剤臨床試験問題
 降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)が、脳卒中などを防ぐ効果が高いとする京都府立医大の臨床 試験論文に、販売元のノバルティスファーマ社員が社名を伏せて関与していたことが発覚。ノ社から多額の寄付金も提供されていた。東京慈恵会医、滋賀医、千 葉、名古屋の各大学の同種の試験にも同じ社員が関わっており、各大学が論文データが不正操作されていないかについて検証を始めている。


京都府立医大は不公正な調査をしたのでしょうか。

2013年6月2日日曜日

他の臨床研究にも不正はあるのか?


ノバルティス“論文問題”が
飛び火で戦々恐々の製薬業界

2013年05月28日
 
火の収まる気配がない——―。ある製薬会社の幹部は嘆く。スイスの大手製薬会社、ノバルティス ファーマの降圧剤「ディオバン」の論文問題のことだ。

 2001年〜04年に行われた京都府立医科大学、東京慈恵医科大学、滋賀医科大学、千葉大学、名古屋大学の5大学でのディオバンに関わる医師主導の臨床 研究について、ノバルティスの元社員が当時、同社社員の身分を開示せず、非常勤講師として勤務する大阪市立大学の肩書で論文作成に関与していたことが発覚 した。

 大阪市立大学とノバルティスの“名刺”を使い分けたという行為が「第三者の目から見て疑惑を生む」と問題視されたほか、元社員がデータ解析を担当していたために「データの改ざんがあったのではないか」と疑われたのだ。

 ノバルティスは5月22日、第三者による報告書をまとめた。現時点では、肝心のデータの改ざんについては判明しなかったが、元社員の関与は「不適切だっ た」とした。24日には、医学系118学会が加盟する日本医学会が元社員の関与した5大学に対し、調査委員会によるデータの再検証を求めた。

 焦点は、実際にデータの操作や改ざんの痕跡が見つかるか否かだが、ある製薬業界に詳しい医師は「過去に行われた他の有名な臨床研究にも疑惑が“飛び火”する可能性がある」と指摘する。

 複数の業界関係者によると「日本の臨床研究では、過去、疑惑が指摘されたものがある」という。今回の問題をきっかけに、再度、多方面からの検証が行われる可能性が高く、結果次第では日本の臨床研究の信頼性が地に落ちることになる。
 
そもそも医師主導の臨床研究といえども、実際は製薬会社からの提案によるものが少なくない。製薬会社は医師に対し、研究費の提供はもとより、あらゆ る形で協力を行ってきた。過度な両者の“依存関係”は薄らいでいるが、かつては製薬会社の社員が医師の臨床研究に患者として参加したり、論文や資料作成に 関わることは、日常的に行われていた。眠れぬ夜を過ごす関係者は多いだろう。

 今回、問題となった医師主導の臨床研究とは、新薬としての承認を得るために行う臨床試験、いわゆる治験とは異なる。新薬の発売後に、その有効性を証明する科学的根拠を集め、主に医師への宣伝活動を目的に行われるものだ。

 ディオバンは、世界でピーク時には6000億円以上を販売し、日本国内でも12年に1083億円を売り上げた大型新薬だ。武田薬品工業や第一三共などからの競合品が存在する。

 このように競争が激しい降圧剤や高脂血症薬、糖尿病薬などでは、国内でも大手製薬会社による大規模な臨床研究が複数行われている。

 もっとも、製薬業界による医師への研究費の提供や協力をすべて禁じる策は現実的ではないだろう。

 特に、国は医療分野を将来の成長産業として位置づけており、強力な産学連携は不可欠。「李下に冠を正さず」で、透明性を確保するしかない。 
本誌・山本猛嗣

週刊ダイヤモンド』

他の臨床研究にも同様の不正はあるのでしょうか?

2013年6月1日土曜日

京都府立医大に医学界から批判



降圧剤論文:京都府立医大に不信 医学界「批判かわし」

毎日新聞 2013年06月01日 02時30分
記者会見する京都府立医大付属病院の北脇城・副院長(左)ら=京都市上京区で2013年5月23日午後7時39分、森園道子撮影
記者会見する京都府立医大付属病院の北脇城・副院長(左)ら=京都市上京区で2013年5月23日午後7時39分、森園道子撮影
降圧剤バルサルタンの臨床試験問題で、京都府立医大病院が「抗議するため」と製薬会社ノバルティス ファーマとの取引を停止したところ、「当事者意識が足りない」「批判をかわすためでは」と、逆に大学側への批判を招いている。同大の臨床試験の論文は、ノ 社の社員を関与させていたことが発覚して公平性が疑われ、まだ疑惑の渦中にあるためだ。
 「京都府立医大の無責任さに怒りを感じる。被害者のように振る舞い、製薬企業だけに問題があったような対応は当事者意識がなさすぎる」。5月28日の参 院厚生労働委員会。この問題を取り上げた薬害エイズ被害者の川田龍平氏(みんなの党)は、語気を強めた。
 府立医大病院は同23日、「癒着を疑われかねず、抗議の意を示した」として、ノ社の医薬品を期限を定めず取引停止にすると発表。同病院の薬剤購入費は年間約40億円、そのうちノ社分は約3億円を占める。
 だが医学・医療界の視線は冷ややかだ。日本医学会の高久史麿(たかく・ふみまろ)会長は会見で「大学は 社員の関与を知っていたのではないか。論文が撤回されたからと縁を切るのはおかしい。両方責任がある」と突き放した。日本医師会の今村聡・副会長も「自分 たちには悪いところがないと思われるのは、いかがなものか」と苦言を呈した。
 「身内」の目も厳しい。ある府立医大職員は「最終的な顧客は患者であることに思いが至らないのだろうか」と首をかしげる。同大OBの医師は「責任転嫁し て、大学から目をそらしてもらうための執行部のパフォーマンスだ」と嘆息する。【八田浩輔、河内敏康】
 【ことば】降圧剤臨床試験問題
 降圧剤「バルサルタン」(商品名ディオバン)が、脳卒中などを防ぐ効果が高いとする京都府立医大の臨床 試験論文に、販売元のノバルティスファーマ社員が社名を伏せて関与していたことが発覚。ノ社から多額の寄付金も提供されていた。東京慈恵会医、滋賀医、千 葉、名古屋の各大学の同種の試験にも同じ社員が関わっており、各大学が論文データが不正操作されていないかについて検証を始めている。


やはり京都府立医大にも責任がありますね。