2014年1月18日土曜日

改ざん告発、厚労省放置 2カ月前メール アルツハイマー病研究

改ざん告発、厚労省放置 2カ月前メール アルツハイマー病研究

アルツハイマー病の治療法確立を目指す国家プロジェクトJ―ADNI(アドニ)」の臨床研究データが書き換えられていた問題で、厚生労働省が研究関係者から「改ざんがある」と内部告発を昨年秋に受けながら、調査しないで放置していたことがわかった。今月初めに朝日新聞の取材を受けてから調べ始めた。
 朝日新聞が入手した資料と厚労省認知症・虐待防止対策推進室によると、「改ざんが数十例ある」とする研究メンバーのメールが、同室で担当の専門官へ昨年11月18日に送られてきた。

 メールには、プロジェクト事務局側が研究データの書き換えを指示する文書と、指示通りに書き換えられた検査記録の写しが添付されていた。

 しかし、メールを受け取った専門官は「改ざんを疑う証拠ではない」と判断し、調査しなかった。

 同室が関係者に聞き取りを始めたのは、今月6日から。4日に朝日新聞が取材したのがきっかけだった。厚労省はプロジェクトに約2億2千万円の補助金を出しているが、同室の勝又浜子室長は「補助しているだけなので、調査しなかった。当時の対応に問題はない」と説明する。今後の詳しい調査は、東大に要請した。勝又室長は「研究代表者のいる東大が責任を持つ」として、厚労省が主体的に調査する考えはないという。

 一方、調査を依頼された東大関係者は朝日新聞の取材に対し「代表者が所属している機関というだけで依頼されても(困る)」と話した。(渡辺周、月舘彩子)

朝日新聞
2014.1.17
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国の対応はだいたい同じです。

厚労省、疑惑解明二の足 改ざん告発、教授に対応一任/「人間関係の問題」

厚労省、疑惑解明二の足 改ざん告発、教授に対応一任/「人間関係の問題」
 

アルツハイマー病の治療法確立を目指す「J―ADNI(アドニ)」は、巨額予算が動く国家プロジェクトだ。厚生労働省は研究データが改ざんされたという内部告発メールを研究チームの責任者に転送していた。「疑惑をもみ消そうとした」との疑念を招いている。▼1面参照
 
 「国家プロジェクト改ざん問題があったら、大変なことです」。厚労省認知症・虐待防止対策推進室の勝又浜子室長は、朝日新聞から疑惑を指摘された今月4日、身を硬くした。勝又室長はこの時、部下の担当専門官が1カ月半前に改ざんを告発するメールを受け、研究チーム代表の岩坪威東大教授に転送したことをまだ知らなかった。
 専門官は「研究班で対応していただきたい」と書き添え、調査対象者であるはずの岩坪教授に対応を一任していた。岩坪教授はアルツハイマー病研究の第一人者として著名な医師だ。専門官も医師で、「岩坪先生は雲の上の存在。技官になる前は口をきく機会もなかった」と言う。補助金の支出先を監視するのが行政の役割なのに、同じ医師の世界で遠慮やなれ合いがあったとの指摘もある。
 勝又室長は朝日新聞の取材を受けた後、岩坪教授にただちに報告した。一方で取材には「岩坪教授と告発者の関係がうまくいっていなかった」と説明。研究チーム内の人間関係の問題にすり替え、疑惑解明に後ろ向きな姿勢を見せている。
 勝又室長から4日に連絡を受けた後、岩坪教授の動きは速かった。内部告発でデータ書き換えを指摘された京都府立医大に自ら連絡。2日後の6日に「誤記を後で直しただけで問題はなかった」と結論づけ、厚労省に報告した。
 京都府立医大の件は2009年8月の検査記録について、2カ月半後にJ―ADNI事務局側から「(国際的な検査手順に合うように)検査時間を修正して下さい」と指示されて直したものだ。同医大の医師は取材に「担当者に確たる記憶はない。『私が間違えたのだと思って直した覚えがある。あれがこのケースかな』という程度で当時の記録はない」と答え、あやふやな記憶で岩坪教授に回答したと認めた。
 岩坪教授は今月8日に取材に応じ、京都府立医大の件について「自主調査し、問題はなかった」と明言した。ところが、告発メールでは指摘されていなかった症状を実際より軽く記録する別の改ざん疑惑を指摘すると、「知らなかった。指摘通りなら間違った行為だ」と答えた。
 朝日新聞が改ざん疑惑を報じた10日、岩坪教授は報道機関に厚労省から聞いた告発者名を明かし、「妄想チックになる激しい人」などと伝えた。研究者からの問い合わせにも改ざんを否定した上、告発者名を挙げて「人間関係をもっと作り上げておけばよかった」などと釈明した。

 ■外部の検証求める声
 朝日新聞は10日に改ざん疑惑を報じた後、内部告発情報漏洩(ろうえい)の経緯について厚労省に取材を重ねるとともに、昨年11月に内部告発を受けながら調査してこなかった厚労省が実態解明できるのかという疑問も示してきた。田村憲久厚労相は17日の記者会見で「第三者的な立場から公平な調査をするべきだ」と述べ、岩坪教授が所属する東大に当面の調査を依頼したと明らかにした。
 厚労省が疑惑解明に消極的な背景には、J―ADNIには新年度も5億円の国費が入ることがある。研究チームのメンバーは「研究チームの外部に検証委員会を立ち上げなければ真相解明は無理」と指摘する。一方、調査を任された東大関係者は「厚労省が調べると思っていた。他大学の研究者を調査する権限がどこまであるのかわからない」と困惑しており、調査は難航しそうだ。(青木美希、渡辺周)

 ◆キーワード
 <内部告発者保護> 内部告発者への報復を禁じる公益通報者保護法は06年に施行された。不正を告発しやすくし、公益を守るのが理念。厚労省は08年に内部告発をした自治労共済職員の名を自治労側に伝える問題を起こし、職員4人を処分した。告発者は国家賠償を求め提訴し、係争中だ。

 ■J―ADNI内部告発を巡る情報漏洩の経緯
<2013年>
11月18日 内部告発者から厚労省の専門官に告発メールが届く
   19日 厚労省の専門官から告発者名が入った告発メールの文面が岩坪教授に渡る
<2014年>
1月4日 朝日新聞が厚労省に改ざん疑惑を指摘
  6日 厚労省が岩坪教授から聞き取り
  8日 岩坪教授がプロジェクト研究者に「万事収束に向かいます」とメールで報告
 10日 データの改ざん疑惑を朝日新聞が報道
  〃  研究者らからの問い合わせに岩坪教授が告発者名を伝える
 12日 岩坪教授がプロジェクト外の研究者にも「グループ内の一人の不満や極端な話」と釈明メールを送信

朝日新聞 2014.1.18

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告発しても人権が守られないと非常にまずいです。

臨床改ざん疑惑、厚労省が告発者名を漏洩 研究責任者に

写真・図版
内部告発をめぐる情報漏洩の構図

 アルツハイマー病の治療法確立を目指す国家プロジェクトJ―ADNI(アドニ)」を巡り、厚生労働省が臨床研究データの改ざんを指摘する実名入りの内部告発メールを無断で告発対象の研究チームの責任者に転送していたことが分かった。内部告発者の人権を著しく損なう行為で、国家公務員法守秘義務)や内規に触れる可能性もある。


 厚労省が国家プロジェクトを守るため疑惑をもみ消そうとしたとの疑念も招いており、厚労省の調査への信頼が揺らぐのは必至だ。
 厚労省認知症・虐待防止対策推進室によると、担当専門官に「改ざんが数十例ある」というメールが届いたのは昨年11月18日。J―ADNI事務局側がデータの書き換えを指示した文書と、その通りに書き換えられた検査記録が添付されていた。専門官は翌日、「研究チーム内で対処すること」と判断し、代表研究者の岩坪威東大教授にそのままの文面と添付資料をメールで送ったという。
 朝日新聞が改ざん疑惑を報じた今月10日、岩坪教授は研究者らからの問い合わせに告発者名を伝えて性格を批判し、告発内容に根拠はないとの認識を示した。
 厚労省の漏洩(ろうえい)によって告発者の名が業界内で知られる事態となり、告発者は取材に「私が悪者で研究の信頼性を損なわせたという評価が研究者の間に広まった。名誉毀損(きそん)だ」と主張。「厚労省が疑惑をもみ消そうとしているのではないか」と話している。
 国家公務員法は職務上知り得た秘密を漏らすことを禁止。国の公益通報者保護法のガイドラインは、内部告発者を守るための基本的な事項として「通報者が特定されないよう十分に配慮する」と明記している。
 朝日新聞の取材を踏まえ田村憲久厚労相は17日の記者会見で漏洩の詳細に触れなかったものの、告発メールへの対応について「(本人の)同意を得ないで確認作業に入った。適切ではなかった」と語った。内部告発者保護に詳しい中村雅人弁護士は「実名を伝えないのは最低限のルール。誰も通報しなくなり不正をただす機会が失われれば、国民に不利益になる」と指摘する。(渡辺周、月舘彩子)
    ◇
 〈内部告発者保護〉 内部告発者への報復を禁じる公益通報者保護法は06年に施行された。不正を告発しやすくし、公益を守るのが理念。厚労省は08年に内部告発をした自治労共済職員の名を自治労側に伝える問題を起こし、職員4人を処分した。告発者は国家賠償を求め提訴し、係争中だ。

渡辺周、月舘彩子
2014年1月18日11時12分
朝日新聞

写し.

2014年1月10日金曜日

国主導のアルツハイマー病研究で改ざんか 厚労省調査

国主導のアルツハイマー病研究で改ざんか 厚労省調査

朝日新聞デジタル 2014年1月10日(金)7時2分配信 

国主導のアルツハイマー病研究で改ざんか 厚労省調査
データの書き換えの例

 国と製薬会社が33億円を投じ、認知症の7割を占めるアルツハイマー病の早期発見を目指す国家プロジェクト「J―ADNI(アドニ)」で、臨床試験の データが改ざんされた可能性が浮上し、厚生労働省は調査を始めた。一定の時間を経た後に記憶を確かめる検査で時間を書き換えたり、不都合な症状を削除した りしていた疑いがある。先端医療を巡る国際競争が過熱する中で、日本の研究への信用が失われかねない事態だ。

 J―ADNIはアルツハイマー病の兆候を調べ、早期治療や新薬開発に役立てるのが目的。物忘れなどの症状と脳画像や血液との関連を研究する。これまで経 済産業省、厚労省、文部科学省が計24億円、製薬会社11社が計9億円を支出し、認知症研究の第一人者である東大の岩坪威教授(神経病理学)を代表に全国 38の医療施設が参加。製薬会社などがつくる「バイオテクノロジー開発技術研究組合」が事務局を担う。

 改ざんの疑いがあるのは、2008年から高齢者545人に行っている面談検査のデータ。研究成果の共有を目指す国際的な動きを踏まえ、先行する米国と同じ手順で検査し、解析結果を広く活用する計画だ。


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今度はJ―ADNIで改ざん疑惑。ディオバン、CASE-J、小林製薬の薬の治験データ改ざん、子宮頸がんワクチン論文の改ざんなど不正事件が続きます。